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サバゲー大会初日!
05
しおりを挟む前にはカービン銃をよどみなく構え、てきぱきと影を確認していくフーがいる。驚くほど心音も、呼吸も静かで、いつもと変わらない彼女。その音を聞いていると、自然と音羽の乱れた呼吸や、早鐘を打つ胸も、落ち着いていった。
「はい」
周囲の音を探る。
良く聞けばいい。そうすれば、自ずと敵も狙撃の位置もわかる。幸いにして微弱な向かい風が吹いている。弾は中て辛いが、状況はよく聞こえる。
『アルファより全班。スモールチャーリー3で交戦。敵はフォックストロット3を制圧している。以上』
前方で、尋たちが交戦しているようだ。エアソフトを撃ち合う音が聞こえる。
「スモールチャーリー3か……」
ふんと鼻を小さく鳴らして、フーは周囲を見渡す。
「援護に回るぞ。フォックストロット3も取られているなら、まずい」
「はい!」
音羽は必死になって周囲の音を聞き分けた。
今の音羽たちは中間距離にいる。そこからオフェンスチームが囲い込まれないように、援護するのと、敵が一気にフラッグへ回りこないようにするのが仕事だ。
現状だと少し遅れている。もう少し前に出なければ、援護ができない。
『こちらアルファ。拠点は硬い。少し後ろに下がる』
『チャーリィ了解。良いように撃たされたました。下がります』
『デルタ了解。カバーに周ります』
「ブラボー了解。援護に回る。オフェンスはスモールチャーリー2から後方へ抜けろ」
フーがカービン銃を構え直した。
「アウト、聞いての通りだ。味方のパターンは覚えているだろう? 敵を探せ」
「は、はい!」
耳を澄ませて、聞き慣れない音を探す。
エアソフトの発砲音に混じっていて、聞き取りづらい。
――それでも、探さないと――
足音が六つ。アルファのふたりは、音をほとんど出さない。
――ふたり、知らない――
つまり、このふたつは敵だと思って間違いない。
「一時三十分にふたりです」
「見えた」
カービンを構えたフー。ぴったりと壁に張り付いたその姿勢では、10メートルも離れれば、相手からの目視は難しくなるだろう。
その先、遮蔽物になる建物の隙間。乱雑に並んだ建物の窓や、壁の隙間。絶妙に、フーのポジションからでなければできない、ギリギリの隙間。その先に、敵チームの隊員がふたり。
そしてフーはふた呼吸置き、撃った。
二発点射で撃ったのではないか、そう思える速射。
「ヒットー」
「ひっとぉ」
遠くからのヒットコール。落としたのだ。5センチメートルもない隙間を通して、ふたりを落とした。
「さっすが天才狙撃手《フーファイター》ネー」
影から、アルファのふたりが突然現れた。もう慣れたので驚きはしないが、それでも少し心臓は早くなる。
「あれ、もう倒したんですか?」
「さすがです」
デルタとチャーリーも合流。弾倉を取り替え、一息。
「じゃ、ブラボーとチャーリーは側面から陽動おねがいシマスネー。デルタはウチらと来て、正面から取りにいくヨー」
「了解」
「了解」
頷いて、展開。
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