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サバゲーって知ってる

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 困惑気味に、使ったハンカチをどうしようか悩んでいると、突然手を掴まれた。

「ここだと、ちょっとアレネー。移動するネー」

 と言いつつ、彼女は既に歩き出している。

 引きずられるように、音羽はホームルームのあるA校舎から、特別教室などがならぶC校舎へ連れて行かれた。

 移動の間にも、尋は楽しそうに今日の昼に食べたうどんが美味しかっただの、昨日コンビニで買ったジュースがそれほど美味しくなかったなど、終始中途半端な片言言葉で喋っていたが、その音量はとても小さく、どこか声を潜めている印象だった。

 それに彼女の選ぶルートは最短距離ではない。何かから逃げているようだった。

「またせましたネー。ここがウチらの居城《Home base》ネー」

 到着したのは、三階の一番端の教室。使われることのない、空き教室として認知されている場所だった。

 本来なら鍵がかかっているが、尋はスカートのポケットから鍵を取り出して開錠した。

「これはネー、フーに、あ、ウチのFriendの子デスネー、トーっても手先が器用ネー。その子に頼んで作ってもらったデスネー」

 ドアを開けると、なぜかもう一枚ドアがあった。それも障子だ。

「去年までは和装部が使ってたネー。今年茶道部と統合されたヨー。それで、空き部屋を我々第四サバゲー部が使ってるネー」

 そのまま茶室を教室の中に作ったようで、玉砂利を敷いた短い前庭があり、そこから一段上がり、障子がある。正面には小さな下足台があり、尋はそこで上履きを脱いで上がっていった。

「おとチャンも上がってくださいネー」

 ぐいと手を掴まれて、音羽は困惑しつつも上履きを脱いで上がった。

 ――おとちゃん?――

 まさかあだ名だろうか。そんな疑問を抱きながら、部屋に入る。

 部屋の中は、やはり元和装部の部室だけあり、ちゃんとした茶室になっていた。十二畳程度の広さがあり、ちゃんとした茶室として使えるようなっている。水道なども通しているようだ。

 ただし、それは内装だけの話し。

「フー。お客サマネー。一年生の音羽チャンネー。berryかわいいネー」

 尋は言って、自分の正面に音羽を引っ張り出した。

 室内は妙に油臭く、なによりも茶道具や和装なんてどこにもなく、あるのは、

「ヒーロ。チューニングはできたぞ」

 無数の金属部品と、ゴスロリで固めた少女。その少女の手には似つかわしくない、ゴテゴテした、銃器。

 一瞬血の気が引けた。まさか学校の中に、こんな危険なテロリスト集団がいたなんて。そして巻き込まれた自分の生死が不安になる。

「Oh! Thank youネー!」

 ふにゃっと笑みを浮かべた尋は、ゴスロリ少女から銃器を受け取った。

「で、ヒーロ。その娘は、我々の協力者か? それとも……」

 すちゃ、とゴスロリ少女はひらひらのお椀スカートの切れ目から、拳銃を取り出した。

「い、いわない。なにも言いませんから! 殺さないで!」

 音羽の叫びに、二人は一瞬きょとんとして、それから尋は小声で大笑いした。目の前のゴスロリ少女は、心なしかがっかりしているように見えた。

 いったい何がどうなってるのか分からない音羽を、尋は手近な場所に座らせる。手に持った銃器は少し離れた所に置いた。

「オチついてくださいネー」

「で、でも、それ、てっぽ……っ!?」

 混乱する音羽の頭を撫でながら、部屋の隅に置かれ冷蔵庫から飲み物を取り出す。

「これでも飲んでヨー」

 取り出したミルクティーのペットボトルのキャップを外して渡す。

 恐怖と動揺で慌てふためいていた音羽は、それでもミルクティーを受け取り、喉の渇きに負けてくぴと小さく口付けた。
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