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事後処理(1)
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次にレナが目を覚ますと隣にアルベールの姿はなかった。
ゆっくり起き上がろうとすると、ズキンと下腹部に痛みが走る。
彼女は一瞬動きを止めたが、それでも何とか身を捩って上半身だけ起こすと、コポリと音を立てて膣から太腿へ白い液体が溢れた。
「あっ……」
それを見て、レナの頭の中に先程までのアルベールとの激しい行為がフラッシュバックする。
いつものような余裕の無い、乱暴なアルベールの攻め立てが、逆に強く求められているような気がして嬉しくなり、もっと強く、もっと痛くと、無我夢中になって身体を揺らして応えた。幾度も身体の奥を貫かれ、何度絶頂したか分からない。
……初めてであんなにはしたなく声をあげ、娼婦のように腰を振ってしまっただなんて。
アルベールは自分のことを、淫らな女だと軽蔑したりしなかっただろうか。
レナが自分の痴態に一人で悶々としていると、コツコツと誰かが扉に近付く足音がした。
ガチャリとドアを開けて、足音の主が顔を出す。
「起きたか」
「! ……カトル様?!」
ドアを開けて顔を覗かせたのはカトルであった。相変わらず、眉間には深いシワが寄っている。
その手には何故か手拭いとたらいがあり、お湯が入っているのか、たらいの中からはもくもくと白い湯気が立っていた。
てっきりアルベールだと思っていたレナは驚き、慌ててシーツで情事の跡の残る身体を隠した。
彼には図らずとも今まで散々アルベールとの食事中の淫らな声を聴かせてしまっていたが、こうして明らかな事後に対面するのは初めてだ。
ただでさえ一糸まとわぬ姿であるというのに、身体に残るキスマークや膣から溢れる精液を見られるのは一層恥ずかしい。
しかしカトルはレナの心中などお構い無く、不機嫌そうな表情を崩さないままつかつかとベッドに近付き、サイドテーブルに手に持っていた手拭いとたらいを置いた。
そしていつの間にかテーブルに用意されていたコップと水差しを手に取り、並々と水を注ぐ。
「自分で飲めるか?」
「えっ?」
カトルがそのコップをレナに差し出すので、彼女はそこで初めてそのコップの水は自分の為に用意されたものだと分かった。
確かに喉はカラカラに乾いている。あれだけ大声でよがっていたのだから、当たり前だ。
しかし疲れきった身体は腕を伸ばしてコップを取る力すら出なかった。
それに、少しでも動くと膣からアルベールの精液が溢れてくる。これ以上シーツを汚すのも憚られた。
「ちっ。飲ませてやる」
「あ、あの……」
そんなレナの状態を察したカトルが、小さく舌打ちをしてベッドに腰掛けた。
「飲め」
片手でレナの頭を支え、口元まで持ってきたコップが傾けられる。レナは拒否する間も無く、半ば強引にコップの水を飲まされた。
「んッ」
乾いた喉に冷たい水が流れ込み、全身が潤ってゆく。待ち望んでいた水は確かに美味しかったが、カトルがコップを傾ける角度が急なせいで、彼女は強制的になみなみとコップに注がれた水を一気飲みする形になった。
「んぐッ……! くぅッ……!」
ごくごくと出来るだけ溢さないように懸命に喉を鳴らすが、それでも飲み込みきれなかった水が口の端から溢れてシーツを濡らす。
ポタポタと鎖骨に落ちた水が胸へと流れ落ち、レナの控えめに膨らんだ胸の形をなぞった。
何となしにカトルの視線が彼女の胸に移って、レナは恥ずかしくて胸を隠すシーツを握る手の力を強めた。
「ぷはっ……! あ、ありがとうございます……」
ようやくコップの中の水を飲み干すと、カトルはコップをサイドテーブルに置いて、言った。
「シーツを退けろ。身体を拭く」
「は、え……??」
レナが思いがけない彼の言葉に固まっていると、カトルは無言でシーツに手をかけ、レナの身体を隠していた布を剥ぎ取ってしまった。
「きゃあ?!」
彼女の華奢な裸体が白日の陽の光に晒される。
白い肌にはアルベールによる吸血痕とキスマークが幾つも散らばっていた。
彼女は咄嗟に脚を閉じ、胸を両腕で隠した。
「かっ、カトル様? だ、大丈夫です! 自分で出来ます!」
「ちっ。黙ってやらせろ。それに、お前が寝てる間に既に一度拭いてある」
「?!」
レナは驚いて自分の身体に目を遣った。
言われてみれば、確かにあれだけ汗と体液まみれだった筈なのに、身体が全くベタベタしていない。
カトルはそんなレナの脚を一瞥し、嘲笑のように鼻を鳴らした。
「初めてのくせに、随分と楽しんだみたいだな?」
「あ、う……」
彼の含みのある言い方に、レナは顔を真っ赤にして俯いた。
下を向けば、既にさっき溢れた精液で脚がベタベタになっている。
これでも一度拭いて貰っていたなんて、初めはどれだけ酷かったのだろうか。
「お、お手を煩わせてしまい申し訳ございません! あの、本当に、後は自分でやりますので……!」
「あ゛?」
「ひっ!」
ギロリとカトルに睨まれて、レナは蛇に睨まれた蛙のように縮こまった。
彼はアルベールに対しては慇懃だが、おそらくこちらの柄の悪い態度の方が素なのであろう。悪気は無いのかもしれないが、臆病なレナは逐一その声と表情に萎縮してしまう。
俯いてビクビクしていると、頭上から彼の溜め息が聞こえた。
「はぁ。……アルベール様との交換条件なんだよ。お前の事後処理を俺がやる代わりに、アルベール様は執務室で仕事をなさるっていう」
「!」
それで彼はさっきから不機嫌ながらも世話を焼いてくれていたのかと、レナは妙に納得してしまった。
カトルはアルベールの命令には忠実だから、やれと言われた事は絶対にやる。そういう事情なら、レナに選択権は無さそうであった。
「分かったらさっさと拭かれろ」
彼女は恐る恐る顔を上げた。
カトルの顔はやはり怖かったが、先ほどより幾分か--本当に僅かに感じられるか感じられないかの差で--声が柔らかくなっていた。
怯えるレナに、彼が気を使ってくれたようだ。
「お、お願いします……」
それに仕事の一貫だと言われてしまえば、彼女も大人しく協力するしかない。
「よし。じゃあ膝を曲げて足を開け」
「えっ?」
「聞こえなかったか? 膝を曲げて足を開けと言ったんだ。顔と上半身はさっき拭いたからもう良さそうだが、そこはまだ綺麗になってないだろ」
「は、はい……!」
レナはカトルの機嫌がまた悪くならないように、大人しくベッドの上でカトルに向けて足をエム字に開いた。
ゆっくり起き上がろうとすると、ズキンと下腹部に痛みが走る。
彼女は一瞬動きを止めたが、それでも何とか身を捩って上半身だけ起こすと、コポリと音を立てて膣から太腿へ白い液体が溢れた。
「あっ……」
それを見て、レナの頭の中に先程までのアルベールとの激しい行為がフラッシュバックする。
いつものような余裕の無い、乱暴なアルベールの攻め立てが、逆に強く求められているような気がして嬉しくなり、もっと強く、もっと痛くと、無我夢中になって身体を揺らして応えた。幾度も身体の奥を貫かれ、何度絶頂したか分からない。
……初めてであんなにはしたなく声をあげ、娼婦のように腰を振ってしまっただなんて。
アルベールは自分のことを、淫らな女だと軽蔑したりしなかっただろうか。
レナが自分の痴態に一人で悶々としていると、コツコツと誰かが扉に近付く足音がした。
ガチャリとドアを開けて、足音の主が顔を出す。
「起きたか」
「! ……カトル様?!」
ドアを開けて顔を覗かせたのはカトルであった。相変わらず、眉間には深いシワが寄っている。
その手には何故か手拭いとたらいがあり、お湯が入っているのか、たらいの中からはもくもくと白い湯気が立っていた。
てっきりアルベールだと思っていたレナは驚き、慌ててシーツで情事の跡の残る身体を隠した。
彼には図らずとも今まで散々アルベールとの食事中の淫らな声を聴かせてしまっていたが、こうして明らかな事後に対面するのは初めてだ。
ただでさえ一糸まとわぬ姿であるというのに、身体に残るキスマークや膣から溢れる精液を見られるのは一層恥ずかしい。
しかしカトルはレナの心中などお構い無く、不機嫌そうな表情を崩さないままつかつかとベッドに近付き、サイドテーブルに手に持っていた手拭いとたらいを置いた。
そしていつの間にかテーブルに用意されていたコップと水差しを手に取り、並々と水を注ぐ。
「自分で飲めるか?」
「えっ?」
カトルがそのコップをレナに差し出すので、彼女はそこで初めてそのコップの水は自分の為に用意されたものだと分かった。
確かに喉はカラカラに乾いている。あれだけ大声でよがっていたのだから、当たり前だ。
しかし疲れきった身体は腕を伸ばしてコップを取る力すら出なかった。
それに、少しでも動くと膣からアルベールの精液が溢れてくる。これ以上シーツを汚すのも憚られた。
「ちっ。飲ませてやる」
「あ、あの……」
そんなレナの状態を察したカトルが、小さく舌打ちをしてベッドに腰掛けた。
「飲め」
片手でレナの頭を支え、口元まで持ってきたコップが傾けられる。レナは拒否する間も無く、半ば強引にコップの水を飲まされた。
「んッ」
乾いた喉に冷たい水が流れ込み、全身が潤ってゆく。待ち望んでいた水は確かに美味しかったが、カトルがコップを傾ける角度が急なせいで、彼女は強制的になみなみとコップに注がれた水を一気飲みする形になった。
「んぐッ……! くぅッ……!」
ごくごくと出来るだけ溢さないように懸命に喉を鳴らすが、それでも飲み込みきれなかった水が口の端から溢れてシーツを濡らす。
ポタポタと鎖骨に落ちた水が胸へと流れ落ち、レナの控えめに膨らんだ胸の形をなぞった。
何となしにカトルの視線が彼女の胸に移って、レナは恥ずかしくて胸を隠すシーツを握る手の力を強めた。
「ぷはっ……! あ、ありがとうございます……」
ようやくコップの中の水を飲み干すと、カトルはコップをサイドテーブルに置いて、言った。
「シーツを退けろ。身体を拭く」
「は、え……??」
レナが思いがけない彼の言葉に固まっていると、カトルは無言でシーツに手をかけ、レナの身体を隠していた布を剥ぎ取ってしまった。
「きゃあ?!」
彼女の華奢な裸体が白日の陽の光に晒される。
白い肌にはアルベールによる吸血痕とキスマークが幾つも散らばっていた。
彼女は咄嗟に脚を閉じ、胸を両腕で隠した。
「かっ、カトル様? だ、大丈夫です! 自分で出来ます!」
「ちっ。黙ってやらせろ。それに、お前が寝てる間に既に一度拭いてある」
「?!」
レナは驚いて自分の身体に目を遣った。
言われてみれば、確かにあれだけ汗と体液まみれだった筈なのに、身体が全くベタベタしていない。
カトルはそんなレナの脚を一瞥し、嘲笑のように鼻を鳴らした。
「初めてのくせに、随分と楽しんだみたいだな?」
「あ、う……」
彼の含みのある言い方に、レナは顔を真っ赤にして俯いた。
下を向けば、既にさっき溢れた精液で脚がベタベタになっている。
これでも一度拭いて貰っていたなんて、初めはどれだけ酷かったのだろうか。
「お、お手を煩わせてしまい申し訳ございません! あの、本当に、後は自分でやりますので……!」
「あ゛?」
「ひっ!」
ギロリとカトルに睨まれて、レナは蛇に睨まれた蛙のように縮こまった。
彼はアルベールに対しては慇懃だが、おそらくこちらの柄の悪い態度の方が素なのであろう。悪気は無いのかもしれないが、臆病なレナは逐一その声と表情に萎縮してしまう。
俯いてビクビクしていると、頭上から彼の溜め息が聞こえた。
「はぁ。……アルベール様との交換条件なんだよ。お前の事後処理を俺がやる代わりに、アルベール様は執務室で仕事をなさるっていう」
「!」
それで彼はさっきから不機嫌ながらも世話を焼いてくれていたのかと、レナは妙に納得してしまった。
カトルはアルベールの命令には忠実だから、やれと言われた事は絶対にやる。そういう事情なら、レナに選択権は無さそうであった。
「分かったらさっさと拭かれろ」
彼女は恐る恐る顔を上げた。
カトルの顔はやはり怖かったが、先ほどより幾分か--本当に僅かに感じられるか感じられないかの差で--声が柔らかくなっていた。
怯えるレナに、彼が気を使ってくれたようだ。
「お、お願いします……」
それに仕事の一貫だと言われてしまえば、彼女も大人しく協力するしかない。
「よし。じゃあ膝を曲げて足を開け」
「えっ?」
「聞こえなかったか? 膝を曲げて足を開けと言ったんだ。顔と上半身はさっき拭いたからもう良さそうだが、そこはまだ綺麗になってないだろ」
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