レナと耽溺の食卓

その他の

文字の大きさ
上 下
19 / 78

事後処理(1)

しおりを挟む
 次にレナが目を覚ますと隣にアルベールの姿はなかった。

 ゆっくり起き上がろうとすると、ズキンと下腹部に痛みが走る。
 彼女は一瞬動きを止めたが、それでも何とか身を捩って上半身だけ起こすと、コポリと音を立てて膣から太腿へ白い液体が溢れた。

「あっ……」

 それを見て、レナの頭の中に先程までのアルベールとの激しい行為がフラッシュバックする。

 いつものような余裕の無い、乱暴なアルベールの攻め立てが、逆に強く求められているような気がして嬉しくなり、もっと強く、もっと痛くと、無我夢中になって身体を揺らして応えた。幾度も身体の奥を貫かれ、何度絶頂したか分からない。

 ……初めてであんなにはしたなく声をあげ、娼婦のように腰を振ってしまっただなんて。

 アルベールは自分のことを、淫らな女だと軽蔑したりしなかっただろうか。
 レナが自分の痴態に一人で悶々としていると、コツコツと誰かが扉に近付く足音がした。

 ガチャリとドアを開けて、足音の主が顔を出す。

「起きたか」
「! ……カトル様?!」

 ドアを開けて顔を覗かせたのはカトルであった。相変わらず、眉間には深いシワが寄っている。

 その手には何故か手拭いとがあり、お湯が入っているのか、の中からはもくもくと白い湯気が立っていた。

 てっきりアルベールだと思っていたレナは驚き、慌ててシーツで情事の跡の残る身体を隠した。

 彼には図らずとも今まで散々アルベールとの食事中の淫らな声を聴かせてしまっていたが、こうして明らかな事後に対面するのは初めてだ。
 ただでさえ一糸まとわぬ姿であるというのに、身体に残るキスマークや膣から溢れる精液を見られるのは一層恥ずかしい。

 しかしカトルはレナの心中などお構い無く、不機嫌そうな表情を崩さないままつかつかとベッドに近付き、サイドテーブルに手に持っていた手拭いとを置いた。

 そしていつの間にかテーブルに用意されていたコップと水差しを手に取り、並々と水を注ぐ。

「自分で飲めるか?」
「えっ?」

 カトルがそのコップをレナに差し出すので、彼女はそこで初めてそのコップの水は自分の為に用意されたものだと分かった。

 確かに喉はカラカラに乾いている。あれだけ大声でよがっていたのだから、当たり前だ。
 しかし疲れきった身体は腕を伸ばしてコップを取る力すら出なかった。

 それに、少しでも動くと膣からアルベールの精液が溢れてくる。これ以上シーツを汚すのも憚られた。

「ちっ。飲ませてやる」
「あ、あの……」

 そんなレナの状態を察したカトルが、小さく舌打ちをしてベッドに腰掛けた。

「飲め」

 片手でレナの頭を支え、口元まで持ってきたコップが傾けられる。レナは拒否する間も無く、半ば強引にコップの水を飲まされた。

「んッ」

 乾いた喉に冷たい水が流れ込み、全身が潤ってゆく。待ち望んでいた水は確かに美味しかったが、カトルがコップを傾ける角度が急なせいで、彼女は強制的になみなみとコップに注がれた水を一気飲みする形になった。

「んぐッ……! くぅッ……!」

 ごくごくと出来るだけ溢さないように懸命に喉を鳴らすが、それでも飲み込みきれなかった水が口の端から溢れてシーツを濡らす。

 ポタポタと鎖骨に落ちた水が胸へと流れ落ち、レナの控えめに膨らんだ胸の形をなぞった。
 何となしにカトルの視線が彼女の胸に移って、レナは恥ずかしくて胸を隠すシーツを握る手の力を強めた。

「ぷはっ……! あ、ありがとうございます……」

 ようやくコップの中の水を飲み干すと、カトルはコップをサイドテーブルに置いて、言った。

「シーツを退けろ。身体を拭く」
「は、え……??」

 レナが思いがけない彼の言葉に固まっていると、カトルは無言でシーツに手をかけ、レナの身体を隠していた布を剥ぎ取ってしまった。

「きゃあ?!」

 彼女の華奢な裸体が白日の陽の光に晒される。

 白い肌にはアルベールによる吸血痕とキスマークが幾つも散らばっていた。
 彼女は咄嗟に脚を閉じ、胸を両腕で隠した。

「かっ、カトル様? だ、大丈夫です! 自分で出来ます!」
「ちっ。黙ってやらせろ。それに、お前が寝てる間に既に一度拭いてある」
「?!」

 レナは驚いて自分の身体に目を遣った。
 言われてみれば、確かにあれだけ汗と体液まみれだった筈なのに、身体が全くベタベタしていない。

 カトルはそんなレナの脚を一瞥し、嘲笑のように鼻を鳴らした。

「初めてのくせに、随分と楽しんだみたいだな?」
「あ、う……」

 彼の含みのある言い方に、レナは顔を真っ赤にして俯いた。
 下を向けば、既にさっき溢れた精液で脚がベタベタになっている。
 これでも一度拭いて貰っていたなんて、初めはどれだけ酷かったのだろうか。

「お、お手を煩わせてしまい申し訳ございません! あの、本当に、後は自分でやりますので……!」
「あ゛?」
「ひっ!」

 ギロリとカトルに睨まれて、レナは蛇に睨まれた蛙のように縮こまった。

 彼はアルベールに対しては慇懃だが、おそらくこちらの柄の悪い態度の方が素なのであろう。悪気は無いのかもしれないが、臆病なレナは逐一その声と表情に萎縮してしまう。

 俯いてビクビクしていると、頭上から彼の溜め息が聞こえた。

「はぁ。……アルベール様との交換条件なんだよ。お前の事後処理を俺がやる代わりに、アルベール様は執務室で仕事をなさるっていう」
「!」

 それで彼はさっきから不機嫌ながらも世話を焼いてくれていたのかと、レナは妙に納得してしまった。
 カトルはアルベールの命令には忠実だから、やれと言われた事は絶対にやる。そういう事情なら、レナに選択権は無さそうであった。

「分かったらさっさと拭かれろ」

 彼女は恐る恐る顔を上げた。
 カトルの顔はやはり怖かったが、先ほどより幾分か--本当に僅かに感じられるか感じられないかの差で--声が柔らかくなっていた。

 怯えるレナに、彼が気を使ってくれたようだ。

「お、お願いします……」

 それに仕事の一貫だと言われてしまえば、彼女も大人しく協力するしかない。

「よし。じゃあ膝を曲げて足を開け」
「えっ?」
「聞こえなかったか? 膝を曲げて足を開けと言ったんだ。顔と上半身はさっき拭いたからもう良さそうだが、そこはまだ綺麗になってないだろ」
「は、はい……!」

 レナはカトルの機嫌がまた悪くならないように、大人しくベッドの上でカトルに向けて足をエム字に開いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる

ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。 幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。 幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。 関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。

義兄の執愛

真木
恋愛
陽花は姉の結婚と引き換えに、義兄に囲われることになる。 教え込むように執拗に抱き、甘く愛をささやく義兄に、陽花の心は砕けていき……。 悪の華のような義兄×中性的な義妹の歪んだ愛。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...