52 / 65
ドミナント
6
しおりを挟む
「服は、そのままでも脱がしてもどちらでも。下は汚れる可能性が高いから脱がした方がいいけど……わたしはとことん焦らされた。服がある、ってすごく焦ったいのよ。素肌で触れ合うことを渇望するくらい」
「はい……じゃあ、このままにします」
「そうね、どっちにしろワンピースだから、手枷嵌めたらもう脱がせられないし」
「あ……」
恥入るように下を向く彼。至らなさに身を縮める様子は、ドミナントではなくてサブミッシブだ。
「大丈夫、これ、隠しボタンになってて前をはだけることはできるから」
「あ、はい。良かったです」
「じゃあ、上から三番目までボタン、外して」
「はい」
風間くんの震える指が、ニットに付いた小さなボタンを摘む。摘むだけで、なかなかボタンホールを通せない。わたしは手伝いたくとも両手の自由が効かないから、それを見ていることしかできない。
「すみませっ……、なんか、焦っちゃって、手汗……」
「だい、じょうぶ」
焦る一真くんを落ち着かせようと掛けた声は、吐息混じりで熱かった。
「焦らされるのが好きなの。あの男がしたように……焦らして」
「は、はい」
記憶が蘇る。まるで映画のフィルムのように、わたしの脳内にすべてが映し出されていく。あの男は、わたしの服を脱がさず、自由を奪って、そして、服の上からそっと、優しく撫で回した……。
「触って……そうっと」
「はい」
「指の腹だけ使って。圧がかかるかかからないかくらいの強さで。わたしが、触って欲しくて身を捩ったら避けて」
「は、はい」
「見て……目で、愛すの」
「はい」
「指も使いながら、目線で愛撫して、目線でキスして……感じやすいところは凝視して」
「はい……」
一真くんに伝わるだろうか、分かってもらえるだろうか。分からなくてもいい……わたしの記憶は、あの男に与えられた快楽をなぞり始めている。
「見て……目で、犯して」
一真くんがごくり、と唾を飲む。彼の股間は、窮屈そうに張り始めていた。
「はい……じゃあ、このままにします」
「そうね、どっちにしろワンピースだから、手枷嵌めたらもう脱がせられないし」
「あ……」
恥入るように下を向く彼。至らなさに身を縮める様子は、ドミナントではなくてサブミッシブだ。
「大丈夫、これ、隠しボタンになってて前をはだけることはできるから」
「あ、はい。良かったです」
「じゃあ、上から三番目までボタン、外して」
「はい」
風間くんの震える指が、ニットに付いた小さなボタンを摘む。摘むだけで、なかなかボタンホールを通せない。わたしは手伝いたくとも両手の自由が効かないから、それを見ていることしかできない。
「すみませっ……、なんか、焦っちゃって、手汗……」
「だい、じょうぶ」
焦る一真くんを落ち着かせようと掛けた声は、吐息混じりで熱かった。
「焦らされるのが好きなの。あの男がしたように……焦らして」
「は、はい」
記憶が蘇る。まるで映画のフィルムのように、わたしの脳内にすべてが映し出されていく。あの男は、わたしの服を脱がさず、自由を奪って、そして、服の上からそっと、優しく撫で回した……。
「触って……そうっと」
「はい」
「指の腹だけ使って。圧がかかるかかからないかくらいの強さで。わたしが、触って欲しくて身を捩ったら避けて」
「は、はい」
「見て……目で、愛すの」
「はい」
「指も使いながら、目線で愛撫して、目線でキスして……感じやすいところは凝視して」
「はい……」
一真くんに伝わるだろうか、分かってもらえるだろうか。分からなくてもいい……わたしの記憶は、あの男に与えられた快楽をなぞり始めている。
「見て……目で、犯して」
一真くんがごくり、と唾を飲む。彼の股間は、窮屈そうに張り始めていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる