籠の鳥

橘 薫

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聖夜

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 一真くんはその言葉に体を固くする。でも、きっとこういうシチュエーションは彼の嗜好に嵌るのだろう。シンボルはますます固く反り、お臍につきそうなほどの勢いだった。

「ね……知ってる?」
 耳元で甘く囁く。先っぽ、透明なジュースが出てきたよ。凄く美味しそう……。

 一真くんが身悶える。縛められた手を、外してあげるつもりは毛頭ない。つまり一真くんは、自分の手でピークに達することもできない訳だ。もちろんわたしは手を貸したりはしない。ただ、観察してつぶさに報告するだけだ。

「すごく、綺麗な身体……筋肉もちょうど良い加減だし、お臍の形もいいし。腰のラインがとてもセクシー」
 指先、というよりも爪の先をほんの少し触れさせるだけで、一真くんの体は揺れるし、当然中心も揺れる。少しも萎えないどころかますます怒張していて、触れずとも言葉とイメージだけでピークに達するかもしれない……まぁ、焦らすけど。

 焦らしは最高のスパイスだ、とあの男は言った。外で食事をするとき、ドライブのとき。彼はわたしに下着をつけさせなかった。下着というガードがなくて心許ないわたしの体は、彼の指で早く温められたくて常に疼いていた。

 助手席で、少しずつスカートの裾を捲り上げられる。入ってきそうで入ってこない指は、内腿をゆっくりと指の背で撫でるだけ。低い声が告げる……もっと足を開いて。いいね、キミはとてもセクシーだ。

 結局わたしはあの男が仕込んだやり方でしか相手を焦らせないのだ。彼の教えは完璧で、愛に満ちていて、意地悪で……わたしのプライドを満たすものだった。

「素敵……見惚れちゃう。一真くんのこういう姿、セクシーで堪らない」
 堪らない、の「い」を耳に吐息を吹きかけるように言う。吐息を吹きかけると言っても、耳はとても敏感な器官だし鼓膜は傷つきやすい。そっと、綿毛を飛ばすときのようにうんと優しく、吹きかける。
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