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ペット志願
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十二月は今まで以上の残業をこなし、ボーナスを楽しみに毎日を過ごす。クリスマスが待ち遠しい、という若さではないし、どちらかというと淡々と日々をやり過ごす方だ。
一真くんとはあれ以来会っていない。クラブの方には一応柔らかめにクレームを入れておいた。新人でもかまわないと了承したのはわたしだけれども、やはり……アレは人選ミスだったと思う。
一真くんはあの仕事を続けているのだろうか。次にクラブを使うのは多分年が明けてからになるだろうから、それまでに多少は擦れてしまうかもしれないとほんの少し、危惧する。
あの子の慣れてない様子や、ミステリアスな雰囲気を好むマダムはきっと多いだろう。指名も沢山つくかもしれない。そうしたら、もう「素人臭さ」は売りにならなくなる。
回数を重ねると、人は知らずとも演技をするようになる、媚る。「慣れない」ことが売りになるのは最初だけなのだ。
街はクリスマスの飾り付けやセール、ケーキやプレゼントの広告で溢れている。ショウウィンドウには艶やかな色彩とキラキラとした装飾が溢れ、街全体が華やかで浮かれている。
わたしは最寄駅から二つ目にあるターミナル駅のモールに入り、化粧品を買い、本屋をひやかし、夜のお供にワインを吟味して選ぶ。
三十五歳、独り身の十二月なんてこんなものだ。
人混みに疲れ、隅の方にあるコーヒーショップに入った。ここは入り口こそ狭いけれども中は案外広く、いつも人が少ないのでよく利用している気に入りの場所だ。
外が見えるカウンター席を取り、荷物を置いて注文に行く。レジは二人体制の割には長い列ができていて、片方のレジがまだ仕事に慣れていないことを思わせた。
「メニューをどうぞ」
列に並ぶ人に、スタッフが順番にメニューを渡していく。
「どうぞ」
渡されたときに目があった。
「美彩さん?」
「一真くん」
この前会ったときとは違う髪色……バンドか何かやっているのか、というようなシルバーに髪を染めた一真くんが、深い緑色のコーヒーショップのエプロンをして、わたしのことを戸惑うような目で見ていた。
一真くんとはあれ以来会っていない。クラブの方には一応柔らかめにクレームを入れておいた。新人でもかまわないと了承したのはわたしだけれども、やはり……アレは人選ミスだったと思う。
一真くんはあの仕事を続けているのだろうか。次にクラブを使うのは多分年が明けてからになるだろうから、それまでに多少は擦れてしまうかもしれないとほんの少し、危惧する。
あの子の慣れてない様子や、ミステリアスな雰囲気を好むマダムはきっと多いだろう。指名も沢山つくかもしれない。そうしたら、もう「素人臭さ」は売りにならなくなる。
回数を重ねると、人は知らずとも演技をするようになる、媚る。「慣れない」ことが売りになるのは最初だけなのだ。
街はクリスマスの飾り付けやセール、ケーキやプレゼントの広告で溢れている。ショウウィンドウには艶やかな色彩とキラキラとした装飾が溢れ、街全体が華やかで浮かれている。
わたしは最寄駅から二つ目にあるターミナル駅のモールに入り、化粧品を買い、本屋をひやかし、夜のお供にワインを吟味して選ぶ。
三十五歳、独り身の十二月なんてこんなものだ。
人混みに疲れ、隅の方にあるコーヒーショップに入った。ここは入り口こそ狭いけれども中は案外広く、いつも人が少ないのでよく利用している気に入りの場所だ。
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「メニューをどうぞ」
列に並ぶ人に、スタッフが順番にメニューを渡していく。
「どうぞ」
渡されたときに目があった。
「美彩さん?」
「一真くん」
この前会ったときとは違う髪色……バンドか何かやっているのか、というようなシルバーに髪を染めた一真くんが、深い緑色のコーヒーショップのエプロンをして、わたしのことを戸惑うような目で見ていた。
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