籠の鳥

橘 薫

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性癖

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 先端だけを口に含み、手を添えて刺激する。奥まで咥え込むなんてサービスはしない。金を払ってるのはこっちだもの、快楽を与えるんじゃなくて、快楽を我慢してる顔が見たい。どうにもならないほど体の反応に翻弄されてだらしなくねだる姿を見たいだけなんだから。

 手枷、アイマスクで自由と視覚を奪われた一真くんの体が跳ねる、汗がふつふつと沸き上がり、腹筋のラインが浮き上がる。唇を窄め、なんとかゆっくりと呼吸しようとしてるのはすべて、無駄な足掻き。

「いい顔してる」
 先端から口を離して囁くと、顔を背けて見せる。その態度のすべてがわたしを興奮させてるって、知ってた? 
 ステレオタイプな反応でも、何故だか一真くんはわたしを唆る。ミステリアスだから? 美青年だから? 
 性欲なんてありません、って顔しながらも体の反応は素直すぎて、そう言うところは健全なんだなぁと思う。天に向けて固くなっているそれ。滴る透明な液体。もう、限界だろうか。

「美彩、さんっ……、お願い、ですっ」
 返事はせずに手に唾液を垂らして、彼自身を包むとはっと体を震わせる。
「いいよ、イって」
「やっ……、ダメ、ダメですっ」
 掠れる声。案外低い声なんだということに突然気づく。小さな呻き声に色気が溢れすぎてて、わたしはもう彼を翻弄したくてたまらなくなっていた。

 激しく、素早い動きに彼が呻く。腰を引いて私の手から逃げ出そうとするけれども、それを許すわけにはいかない。
「あ、あ、あ」
 諦めたかのような声。そしてびくん、と大きく震える体。手に伝う、生暖かい液体……。

「気持ちよかった?」
 聞けばためらいがちに頷くその様子にまた情欲の火が灯る。空いている方の手を伸ばし、ティッシュを数枚引き抜いて彼の局部と自分の手を拭う。

「美彩、さん」
 アイマスクを取ると、虚ろな目の焦点がゆっくりと定まり、わたしを捉える。
「イカされちゃったね、恥ずかしい?」
 こくこくと頷く姿、ほの赤い頬。まだ弛緩した体は快楽に浸っている……ああ、満足。

「美彩さんも、良かった、ですか……?」
 顎で示され、見てみれば。またがっていた彼の腿は、わたしから滴り落ちた蜜で、しとどに濡れていた。
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