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♠︎決意♠︎弘田宇丈
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離婚する、と聞いて…みひろが本当に、自分の人生を歩き始めたことを確信した。
今までだったら絶対にありえない。世間体、対面、義母のこと…言い訳をたくさん持ち出して、自ら鳥かごの中にうずくまっていた。
たとえその鳥かごの扉が開いていたとしても、自ら飛び立とうとしない…なぜなら、外の世界に出たら、自分ですべてを決め、行動しなければいけない。すべての責任が自分に降りかかってくるからだ。
カゴのなかにいれば、自由はないが餌は与えられる。限られた空間で、自由に動くことはできる。
それで満足できる人もいるだろう。自分の人生に折り合いをつけられる人もいるだろう。
だが…みひろは、飛び立つことを選ぼうとしている。
「もう…自分の気持ちに嘘をつけませんし、感情に素直になってそれを表せるようになった今…愛のない結婚生活を続けることが無理だとわかりました」
「うん」
「離婚して就職して、経済的にも精神的にも自立して、一人で暮らせるように頑張りたいと思うんです。色々、挑戦したくなりました」
「みひろ…」
腕の中の彼女の背に合わせて、少し屈んだ。暗い公園には、街路灯くらいしか明かりがない。それでもわかった…みひろの目が、強い意志の光を放っている。
「宇丈さんには心から感謝して…」
最後まで言わせずに、唇を重ねた。
「んっ…」
少し苦しそうに身をよじる彼女。人がいない夜の公園、とはいえ、やはりどこに人目があるかはわからない。
それでも…キスしたかった。みひろ、本当に…変わったんだな…。
ひとしきりキスを堪能し、唇を離すとみひろがまた胸に顔を埋めた。
その感触に、心からの幸福と満たされたピースフルな気持ちを感じながら…腕に少し力を込めて、抱きしめた。
「オレ、待ってるから」
「…え?」
「離婚したら…考えてくれる?オレとの未来」
「え…?」
ずっと我慢してきた。言ってはいけないと思っていた。
言うことで彼女を困らせるなら、苦しませるなら、オレが我慢すればいいと思っていた。
ずっと…永遠に、手に入らない人。なぜかそう思い込んで、諦めようとしていた。喉元まで出かかっては飲み込み続けたこの言葉。今、思い切って…言っちまえ。
「結婚しよう。オレと一生、一緒に生きよう」
今までだったら絶対にありえない。世間体、対面、義母のこと…言い訳をたくさん持ち出して、自ら鳥かごの中にうずくまっていた。
たとえその鳥かごの扉が開いていたとしても、自ら飛び立とうとしない…なぜなら、外の世界に出たら、自分ですべてを決め、行動しなければいけない。すべての責任が自分に降りかかってくるからだ。
カゴのなかにいれば、自由はないが餌は与えられる。限られた空間で、自由に動くことはできる。
それで満足できる人もいるだろう。自分の人生に折り合いをつけられる人もいるだろう。
だが…みひろは、飛び立つことを選ぼうとしている。
「もう…自分の気持ちに嘘をつけませんし、感情に素直になってそれを表せるようになった今…愛のない結婚生活を続けることが無理だとわかりました」
「うん」
「離婚して就職して、経済的にも精神的にも自立して、一人で暮らせるように頑張りたいと思うんです。色々、挑戦したくなりました」
「みひろ…」
腕の中の彼女の背に合わせて、少し屈んだ。暗い公園には、街路灯くらいしか明かりがない。それでもわかった…みひろの目が、強い意志の光を放っている。
「宇丈さんには心から感謝して…」
最後まで言わせずに、唇を重ねた。
「んっ…」
少し苦しそうに身をよじる彼女。人がいない夜の公園、とはいえ、やはりどこに人目があるかはわからない。
それでも…キスしたかった。みひろ、本当に…変わったんだな…。
ひとしきりキスを堪能し、唇を離すとみひろがまた胸に顔を埋めた。
その感触に、心からの幸福と満たされたピースフルな気持ちを感じながら…腕に少し力を込めて、抱きしめた。
「オレ、待ってるから」
「…え?」
「離婚したら…考えてくれる?オレとの未来」
「え…?」
ずっと我慢してきた。言ってはいけないと思っていた。
言うことで彼女を困らせるなら、苦しませるなら、オレが我慢すればいいと思っていた。
ずっと…永遠に、手に入らない人。なぜかそう思い込んで、諦めようとしていた。喉元まで出かかっては飲み込み続けたこの言葉。今、思い切って…言っちまえ。
「結婚しよう。オレと一生、一緒に生きよう」
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