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♠︎過去のトラウマ♠︎弘田宇丈
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「どうしてお祖母さんはお母さんを虐めたのでしょう?」
アオの声が続きを促す。
「祖母は…母を嫌っていましたから」
「何故嫌っていたか、知っていますか?」
「…」
答えはなかった。アオは返事を待ったが、答えない、と踏んだのか別の質問をした。
「お祖母さんのことを教えてください。どんな性格で、どんな印象の方でしたか?」
「祖母は…厳しい人でした。特に同居するようになってから厳しくなりました…」
「どんな風に?」
「日常の所作は全て文句を付けられました。母も厳しかったんですが、母以上に…」
「例えば?」
「言葉遣い、お作法、服装もうるさく言われましたし、テレビや漫画は見せてもらえませんでした…」
「それは厳しいですね」
「祖母は私が嫌いだったんです」
ぴくり、とアオが眉を動かした。
「…どうしてそう思いますか?」
「…」
また、答えはない。みひろさんの呼吸は安定している…。
「違う質問にしますね?」
アオはそう言うと、暫く考えて…思いがけないことを聞いた。
「自慰をしたことがありますか?」
「…はい」
躊躇いがちにみひろさんが答える。
「初めてしたのは何歳の時か覚えてますか?」
「…13歳か、14歳だったと思います」
「どんな感じだったか…その時に感じたことを全部教えてください」
「…怖くて、気持ちよくて、ドキドキしました」
「どうして怖かったんですか?」
「…いけないことをしてる、と思いました」
「…どうして?」
ふぅ、とみひろさんが小さく息を吐く。
「こんなにドキドキして…でも気持ちよくて…今までに感じたことないことだったから…」
「どうやって知りました?雑誌とか、友達から聞いたとか?」
「…同じ学校の子が…」
「同じ学校の子?」
「はい…隣のクラスの、転校生です。すごく目立つ子…その子が学校で…しているのをたまたま見てしまって。黙って帰ろうとしたら音を立ててしまって、気付かれて…」
「その人に何か言われたりしましたか?」
「触ると気持ちいいよ、って…好きな人に触られるともっと気持ちいいよって…触られました」
「それで?」
「走って家に帰りました…」
「家族にそのことを話しましたか?」
「いいえ」
「誰にも言わなかった?」
「…はい」
繰り返される質問。少しずつ…心の塀を崩していくその方法、そしてアオの忍耐強さにオレは平伏した。
外堀を埋めるように核心に迫っていく。一見関連がなさそうな質問に思えるが、それの答えから関連を見出し、心を開ける鍵を…探す。
やっぱアオ、プロだ…オレじゃ焦れったくてこんな風にできない…。
アオの声が続きを促す。
「祖母は…母を嫌っていましたから」
「何故嫌っていたか、知っていますか?」
「…」
答えはなかった。アオは返事を待ったが、答えない、と踏んだのか別の質問をした。
「お祖母さんのことを教えてください。どんな性格で、どんな印象の方でしたか?」
「祖母は…厳しい人でした。特に同居するようになってから厳しくなりました…」
「どんな風に?」
「日常の所作は全て文句を付けられました。母も厳しかったんですが、母以上に…」
「例えば?」
「言葉遣い、お作法、服装もうるさく言われましたし、テレビや漫画は見せてもらえませんでした…」
「それは厳しいですね」
「祖母は私が嫌いだったんです」
ぴくり、とアオが眉を動かした。
「…どうしてそう思いますか?」
「…」
また、答えはない。みひろさんの呼吸は安定している…。
「違う質問にしますね?」
アオはそう言うと、暫く考えて…思いがけないことを聞いた。
「自慰をしたことがありますか?」
「…はい」
躊躇いがちにみひろさんが答える。
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「…13歳か、14歳だったと思います」
「どんな感じだったか…その時に感じたことを全部教えてください」
「…怖くて、気持ちよくて、ドキドキしました」
「どうして怖かったんですか?」
「…いけないことをしてる、と思いました」
「…どうして?」
ふぅ、とみひろさんが小さく息を吐く。
「こんなにドキドキして…でも気持ちよくて…今までに感じたことないことだったから…」
「どうやって知りました?雑誌とか、友達から聞いたとか?」
「…同じ学校の子が…」
「同じ学校の子?」
「はい…隣のクラスの、転校生です。すごく目立つ子…その子が学校で…しているのをたまたま見てしまって。黙って帰ろうとしたら音を立ててしまって、気付かれて…」
「その人に何か言われたりしましたか?」
「触ると気持ちいいよ、って…好きな人に触られるともっと気持ちいいよって…触られました」
「それで?」
「走って家に帰りました…」
「家族にそのことを話しましたか?」
「いいえ」
「誰にも言わなかった?」
「…はい」
繰り返される質問。少しずつ…心の塀を崩していくその方法、そしてアオの忍耐強さにオレは平伏した。
外堀を埋めるように核心に迫っていく。一見関連がなさそうな質問に思えるが、それの答えから関連を見出し、心を開ける鍵を…探す。
やっぱアオ、プロだ…オレじゃ焦れったくてこんな風にできない…。
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