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♠︎三浦の別荘へ♠︎弘田宇丈
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「へぇ…平井隆司ってあの、ピアニストでシンガーの?」
「はい、先日コンサートツアーが終わったばかりの」
再デビューが騒がれていたのを思い出す。出したCDは、このCDが売れない時代に大ヒットし、未だにチャート50位には入っている。
ツアー中にも関わらず次々に披露される新曲。情感豊かに演奏されるインプロヴィゼーションタイムは、彼のアンコールの定番となった。
実際、オレも再デビューアルバムや、今年に入ってからitunes限定で配信された曲をいくつか買ってた。
特にitunes限定配信の曲はどれも深みがあり、切なさ、悲哀、回顧、その中にある一条の希望の光…そういうものを感じて、すげぇ心に訴えかけられた。
「彼も打ち合わせ、くんの?」
「さすがにそれはないです」
「なんだ、来るんならサイン頼もうかと思ったのに」
「そんなミーハーできるわけないじゃないですか」
「はは、ま、そうだよな」
半分ほど食べた丼を、中島さんが取った。
「え?」
「半分こしましょ?」
有無を言わさず、オレの丼は中島さんの前へ、オレの前には中島さんの丼が置かれた。まぁ…いいけど。
「年が近い人と仕事ってあんまりしたことないから…正直不安なんですよね」
「まぁ、仕事だから年齢関係なくやることやってれば大丈夫じゃね?」
「そうですけど…弘田さん、明日…同席してもらえません?」
「はぁ?」
突拍子もないことを言われて、驚いた。
「中島さん一人で打ち合わせじゃないだろ?チームでだよね」
「そうですけど…」
「オレ全然関連ない部署だしさ、無理だろ」
「そうですよねぇ…」
中島さんは、しばらく無言になって、ぱくぱくと飯を平らげた。女の子にしちゃいい食いっぷりだ。
「そうだ、そしたら月曜日!」
突然中島さんが叫んだ。
「月曜日、またランチ付き合ってくださいよ!報告させてください!」
月曜日は…オレ、有休なんだよな…。
「ごめん、オレ月曜日休み」
「え~…」
中島さんはがっかりと肩を落として…また顔をあげて、にこっと微笑んだ。
「じゃあ、LINE教えてください」
「え?」
「とにかく弘田さんに聞いて欲しいんです!」
そう強気で押しまくられて…つい、LINEを交換してしまった。
「はい、先日コンサートツアーが終わったばかりの」
再デビューが騒がれていたのを思い出す。出したCDは、このCDが売れない時代に大ヒットし、未だにチャート50位には入っている。
ツアー中にも関わらず次々に披露される新曲。情感豊かに演奏されるインプロヴィゼーションタイムは、彼のアンコールの定番となった。
実際、オレも再デビューアルバムや、今年に入ってからitunes限定で配信された曲をいくつか買ってた。
特にitunes限定配信の曲はどれも深みがあり、切なさ、悲哀、回顧、その中にある一条の希望の光…そういうものを感じて、すげぇ心に訴えかけられた。
「彼も打ち合わせ、くんの?」
「さすがにそれはないです」
「なんだ、来るんならサイン頼もうかと思ったのに」
「そんなミーハーできるわけないじゃないですか」
「はは、ま、そうだよな」
半分ほど食べた丼を、中島さんが取った。
「え?」
「半分こしましょ?」
有無を言わさず、オレの丼は中島さんの前へ、オレの前には中島さんの丼が置かれた。まぁ…いいけど。
「年が近い人と仕事ってあんまりしたことないから…正直不安なんですよね」
「まぁ、仕事だから年齢関係なくやることやってれば大丈夫じゃね?」
「そうですけど…弘田さん、明日…同席してもらえません?」
「はぁ?」
突拍子もないことを言われて、驚いた。
「中島さん一人で打ち合わせじゃないだろ?チームでだよね」
「そうですけど…」
「オレ全然関連ない部署だしさ、無理だろ」
「そうですよねぇ…」
中島さんは、しばらく無言になって、ぱくぱくと飯を平らげた。女の子にしちゃいい食いっぷりだ。
「そうだ、そしたら月曜日!」
突然中島さんが叫んだ。
「月曜日、またランチ付き合ってくださいよ!報告させてください!」
月曜日は…オレ、有休なんだよな…。
「ごめん、オレ月曜日休み」
「え~…」
中島さんはがっかりと肩を落として…また顔をあげて、にこっと微笑んだ。
「じゃあ、LINE教えてください」
「え?」
「とにかく弘田さんに聞いて欲しいんです!」
そう強気で押しまくられて…つい、LINEを交換してしまった。
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