65 / 94
サンタの存在証明
第9話
しおりを挟む
こういう手合いの会話が、現代に於いてはツンデレの一言でステレオタイプ化されてしまうのは、ちょっと勿体ないな、なんて思ってしまった。いやまあ、ツンデレか。
アンコールが2回あって、会場をあとにしたのは22時頃だった。クリスマスイブの夜だけれど、こういったコンサートに来るような人種には、あまりカップルは多くなかったりする。と言いながら、傍から見たら、僕と有香はカップルか。
「あ~、お腹空いたな」
伸びをしながら、ミコが言った。タルパもお腹が空くのね。
「何か食べていく?」
僕が、有香に向かって言った。有香はまた、ゆっくりとかぶりを振った。そう言えば、有香とは何度か会っているけれど、物を飲んだり食べたりしている所をあまり見た記憶がない。昔、付き合っていた時も、そうだったかな。確かに、夏の暑い日でもあまり汗をかかず、水分をとらない性質ではあったように思うけれど…。
それで、僕達は、どこかの店に入るでもなく、浅草寺…ではなく、隣の浅草神社の鳥居横の欄干に並んで腰かけた。ミコも、よっ、と言いながら、僕の隣に腰かけた。ライトアップされた五重塔が綺麗に見える。僕は結構寒さを感じたけれど、有香はそうでもない様子だった。
僕等は暫くの間、特に何も話さずに、なんとなく景色を眺めていた。この時間帯だと、人が殆どいない。
「先刻さ…」僕が言った。「コンサートには、1人で来た訳じゃない、って言ってたけれど…」
僕が途中まで言った所で、有香が、ふっ、と薄く笑んだ。
「一緒に来た人は、どこにいるのか…って?」有香の言葉に、僕は頷いた。有香は、また、唇に指を当てて、考える仕草をした。淡いピンクのマニキュアだろうか、薄闇の中で鈍く艶めいている。「う~んとね…」
有香は、また言葉を切った。僕は、次の言葉を待った。
「結婚してたけど、離婚した?」
ミコが口を挟んできたけれど、無視した。ん? でも、そういう相談だったりして?
「先輩は…」有香が口を開いた。「サンタさんって、いつまで信じてた?」
あれ? またこの質問だ。今日、コスプレの先輩とその話をしたばかりだ。そう言えば先輩は、きちんと楽しんで、帰路についただろうか? 皆とコスプレのまま、飲みに行っているのかな。
「今も信じてるって言ったら…」僕は、敢えてコスプレの先輩の言葉を辿った。「変かな?」
僕の回答に、一瞬、有香の瞳が輝いた様に見えた。
「じゃあ…」有香が言った。「目に見えない友達がいる、って言ったら、信じて貰えるかな?」
アンコールが2回あって、会場をあとにしたのは22時頃だった。クリスマスイブの夜だけれど、こういったコンサートに来るような人種には、あまりカップルは多くなかったりする。と言いながら、傍から見たら、僕と有香はカップルか。
「あ~、お腹空いたな」
伸びをしながら、ミコが言った。タルパもお腹が空くのね。
「何か食べていく?」
僕が、有香に向かって言った。有香はまた、ゆっくりとかぶりを振った。そう言えば、有香とは何度か会っているけれど、物を飲んだり食べたりしている所をあまり見た記憶がない。昔、付き合っていた時も、そうだったかな。確かに、夏の暑い日でもあまり汗をかかず、水分をとらない性質ではあったように思うけれど…。
それで、僕達は、どこかの店に入るでもなく、浅草寺…ではなく、隣の浅草神社の鳥居横の欄干に並んで腰かけた。ミコも、よっ、と言いながら、僕の隣に腰かけた。ライトアップされた五重塔が綺麗に見える。僕は結構寒さを感じたけれど、有香はそうでもない様子だった。
僕等は暫くの間、特に何も話さずに、なんとなく景色を眺めていた。この時間帯だと、人が殆どいない。
「先刻さ…」僕が言った。「コンサートには、1人で来た訳じゃない、って言ってたけれど…」
僕が途中まで言った所で、有香が、ふっ、と薄く笑んだ。
「一緒に来た人は、どこにいるのか…って?」有香の言葉に、僕は頷いた。有香は、また、唇に指を当てて、考える仕草をした。淡いピンクのマニキュアだろうか、薄闇の中で鈍く艶めいている。「う~んとね…」
有香は、また言葉を切った。僕は、次の言葉を待った。
「結婚してたけど、離婚した?」
ミコが口を挟んできたけれど、無視した。ん? でも、そういう相談だったりして?
「先輩は…」有香が口を開いた。「サンタさんって、いつまで信じてた?」
あれ? またこの質問だ。今日、コスプレの先輩とその話をしたばかりだ。そう言えば先輩は、きちんと楽しんで、帰路についただろうか? 皆とコスプレのまま、飲みに行っているのかな。
「今も信じてるって言ったら…」僕は、敢えてコスプレの先輩の言葉を辿った。「変かな?」
僕の回答に、一瞬、有香の瞳が輝いた様に見えた。
「じゃあ…」有香が言った。「目に見えない友達がいる、って言ったら、信じて貰えるかな?」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
貧乳姉と巨乳な妹
加山大静
青春
気さくな性格で誰からも好かれるが、貧乳の姉
引っ込み思案で内気だが、巨乳な妹
そして一般的(?)な男子高校生な主人公とその周りの人々とおりなすラブ15%コメディー80%その他5%のラブコメもどき・・・
この作品は小説家になろうにも掲載しています。
エスパーを隠して生きていたパシリなオレはネクラな転校生を彼女にされました
家紋武範
青春
人の心が読める少年、照場椎太。しかし読めるのは突発なその時の思いだけ。奥深くに隠れた秘密までは分からない。そんな特殊能力を隠して生きていたが、大人しく目立たないので、ヤンキー集団のパシリにされる毎日。
だがヤンキーのリーダー久保田は男気溢れる男だった。斜め上の方に。
彼女がいないことを知ると、走り出して連れて来たのが暗そうなダサイ音倉淳。
ほぼ強制的に付き合うことになった二人だが、互いに惹かれ合い愛し合って行く。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる