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6章:失われた夏への扉を求めて
第3話
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「へっ。2173番か。こうして直接話をするのも久々だ。息災でなによりだ」
「わ、わた、わ、私は…あなたに使われるだけ使われて…う、うら、うら、裏切られた…。う、う、う、恨んでいない訳じゃない…」
「人聞きが悪いぞ。俺たちはお前を独り立ちさせたに過ぎん。孤児だったお前に教育を施し、飯を与え、高い金でお嬢様学校に入れてやったのは誰だと思っている。吃音の上、コミュ障で姉貴以外に友達を1人も作れなかったお前を生き延びさせるために、多くのガキどもの命を犠牲にしてきた事を忘れるな」
「わ、わた、私のスキルを使って、ひ、ひと、ひと、人殺しをしようとしていたのは、あなたたちじゃない…。そ、それ、それに…い、い、いま、今は…わ、私には…と、と、とも、友達がいる…」
「それは興味深いぞ。どこにお前の友達がいる?」
「…本星崎の友達なら、ここにいるわ。私もそうだし、ここにいる全員がそう」
「ほう、残り3ヶ月足らずで死に絶える仲間たちか。それも悪くないだろう」
「…よ、よ、よ、よく、言うわね…。そ、そ、それ、それに、お、おね、お姉ちゃんは、い、いき、生きていたじゃない…」
「ははは。姉妹対決まで演出できれば見ものだったに違いないが、惜しいことをしたぜ」
「ザンギエフよ。気をつけろ。あまり喋りすぎると、舌を噛むことになる」
「へっ。まあいい。ガキどもをからかうのも飽きてきたところだ。ゆっくりとテレビを観る事にしよう」
「ふむ。よかろう。では、このニュースに関する感想をまずは聞かせてもらう」
「…なるほどな。結局、オタクどもは死んじまったか。火消しの花火としては充分だったな。はは、火消しなのに、花火とはな」
「火消しだと? 奴らは無駄死にだ。俺たちも、お前たちも、誰一人としてスキル者は、あの場で爆発しなかった」
「ああそうだ。爆発しなかった。もともと、させるつもりもなかった。お前たちは勘違いしている。ヘリを落としたのはスキル者の爆発を偽装するためじゃない。お前たちを事故死にみせかけるためだ。実際、どうだ。ニュースキャスターどもは疑いもせずに、民間ヘリの墜落事故と報道していやがる。事件性など疑ってすらいない」
「ふん。それは、お前たち防衛省がマスコミに圧力をかけているからではないのか」
「だったらなんだ? 法律とスポンサーが存在する限り、マスコミの情報操作など容易い。この程度なら、SNSでの情報もデマとしてもみ消せるだろう。陰謀論者を総動員させてオカルトに仕立て上げたっていい」
「…言うわね。少なくとも、あんたのせいで、私たちの仲間は何人も死んだ。なぜ死ななければならないかの理由もわからずにね」
「おい、ヘッドフォン娘。誰もが自分が死ぬ理由を理解して死ねると思うなよ。なぜ自分が生きなければならないかと同じくらい度し難い問いだ」
「豊橋、もうテレビはいいんじゃないか? 尋問を進めたほうがいい」
「…そうだな。できるだけ手荒なことはしないで済むとよいがな」
「おい! ガキども、静かにしろ! まだテレビを消すんじゃない!」
「黙れ! 声をあらげるんじゃない! 僕たちをあまりなめるなよ。あんた1人を証拠を残さずにこの世から消すことくらい、造作ないんだからな」
「ゴスロリは黙ってろ。そうじゃない。ニュースが緊急速報に切り替わった。お前たちも黙って聞いてろ!」
「緊急速報だって…? ヘリ墜落事故だって充分緊急じゃないか…」
「鳴海よ。俺は、奇しくもザンギエフと同じ理由でもって、マスコミの言う事を信用していない。だが、これはどういう事だ…」
「生物兵器…ですって? 豊橋くん…鳴海くん…。アタシにはよく意味がわからないんだけれど…生物兵器って…どういうことかしら? 日本が…? 使ったの?」
「堀田さん、このニュースだけを聞くと、そう捉えられると思います…。ロシアと中国が共同で声明を出したみたいだ…。アメリカ大使館やNATOからも抗議されている。米軍基地の撤退の恐れ…だと? これは…戦争になるのか? でも、まさか…」
「ふは…ふはははははははは…」
「どうしたザンギエフよ。何がおかしい」
「はははははははははは! くくくくくく…」
「ダメだ豊橋…。このモヒカン、クサレ脳味噌だ。これが仮にも防衛省の上層部の人間なのか…?」
「おいゴスロリ。歴史は、優秀すぎる人材が常に劣る人間から狂人扱いされる事実を示してきた事を忘れるな。俺は狂っちゃいない。俺が嗤うのは、俺たちが今まで払ってきた犠牲が全て無駄に終わった事が、たった今、判明したからだ。へっ…結局、こっちの件は、火消しに失敗しやがったか…。オタクの命を軽んじた天罰だろうぜ」
「…話が全く見えないわ。あんた、何が言いたいの?」
「俺の防衛省での任務は、これで完全に終わった。いいだろう。お前たちの質問に、全て正しく答えてやろうじゃねえか」
「おい、ザンギエフよ。ふざけるな。今のニュースでお前がどう心変わりしたかは知らん。だが、俺たちがお前たちのために払ってきた犠牲は、お前の気まぐれで安易に敵味方を切り替えられる程、軽いものではない」
「へっ。気まぐれなのは、俺か、それとも周辺国家か」
「豊橋…ここは気持ちを抑えよう。僕たちには情報が必要だ」
「…よかろう。ふん。鳴海に感情面をなだめられようとはな」
「わ、わた、わ、私は…あなたに使われるだけ使われて…う、うら、うら、裏切られた…。う、う、う、恨んでいない訳じゃない…」
「人聞きが悪いぞ。俺たちはお前を独り立ちさせたに過ぎん。孤児だったお前に教育を施し、飯を与え、高い金でお嬢様学校に入れてやったのは誰だと思っている。吃音の上、コミュ障で姉貴以外に友達を1人も作れなかったお前を生き延びさせるために、多くのガキどもの命を犠牲にしてきた事を忘れるな」
「わ、わた、私のスキルを使って、ひ、ひと、ひと、人殺しをしようとしていたのは、あなたたちじゃない…。そ、それ、それに…い、い、いま、今は…わ、私には…と、と、とも、友達がいる…」
「それは興味深いぞ。どこにお前の友達がいる?」
「…本星崎の友達なら、ここにいるわ。私もそうだし、ここにいる全員がそう」
「ほう、残り3ヶ月足らずで死に絶える仲間たちか。それも悪くないだろう」
「…よ、よ、よ、よく、言うわね…。そ、そ、それ、それに、お、おね、お姉ちゃんは、い、いき、生きていたじゃない…」
「ははは。姉妹対決まで演出できれば見ものだったに違いないが、惜しいことをしたぜ」
「ザンギエフよ。気をつけろ。あまり喋りすぎると、舌を噛むことになる」
「へっ。まあいい。ガキどもをからかうのも飽きてきたところだ。ゆっくりとテレビを観る事にしよう」
「ふむ。よかろう。では、このニュースに関する感想をまずは聞かせてもらう」
「…なるほどな。結局、オタクどもは死んじまったか。火消しの花火としては充分だったな。はは、火消しなのに、花火とはな」
「火消しだと? 奴らは無駄死にだ。俺たちも、お前たちも、誰一人としてスキル者は、あの場で爆発しなかった」
「ああそうだ。爆発しなかった。もともと、させるつもりもなかった。お前たちは勘違いしている。ヘリを落としたのはスキル者の爆発を偽装するためじゃない。お前たちを事故死にみせかけるためだ。実際、どうだ。ニュースキャスターどもは疑いもせずに、民間ヘリの墜落事故と報道していやがる。事件性など疑ってすらいない」
「ふん。それは、お前たち防衛省がマスコミに圧力をかけているからではないのか」
「だったらなんだ? 法律とスポンサーが存在する限り、マスコミの情報操作など容易い。この程度なら、SNSでの情報もデマとしてもみ消せるだろう。陰謀論者を総動員させてオカルトに仕立て上げたっていい」
「…言うわね。少なくとも、あんたのせいで、私たちの仲間は何人も死んだ。なぜ死ななければならないかの理由もわからずにね」
「おい、ヘッドフォン娘。誰もが自分が死ぬ理由を理解して死ねると思うなよ。なぜ自分が生きなければならないかと同じくらい度し難い問いだ」
「豊橋、もうテレビはいいんじゃないか? 尋問を進めたほうがいい」
「…そうだな。できるだけ手荒なことはしないで済むとよいがな」
「おい! ガキども、静かにしろ! まだテレビを消すんじゃない!」
「黙れ! 声をあらげるんじゃない! 僕たちをあまりなめるなよ。あんた1人を証拠を残さずにこの世から消すことくらい、造作ないんだからな」
「ゴスロリは黙ってろ。そうじゃない。ニュースが緊急速報に切り替わった。お前たちも黙って聞いてろ!」
「緊急速報だって…? ヘリ墜落事故だって充分緊急じゃないか…」
「鳴海よ。俺は、奇しくもザンギエフと同じ理由でもって、マスコミの言う事を信用していない。だが、これはどういう事だ…」
「生物兵器…ですって? 豊橋くん…鳴海くん…。アタシにはよく意味がわからないんだけれど…生物兵器って…どういうことかしら? 日本が…? 使ったの?」
「堀田さん、このニュースだけを聞くと、そう捉えられると思います…。ロシアと中国が共同で声明を出したみたいだ…。アメリカ大使館やNATOからも抗議されている。米軍基地の撤退の恐れ…だと? これは…戦争になるのか? でも、まさか…」
「ふは…ふはははははははは…」
「どうしたザンギエフよ。何がおかしい」
「はははははははははは! くくくくくく…」
「ダメだ豊橋…。このモヒカン、クサレ脳味噌だ。これが仮にも防衛省の上層部の人間なのか…?」
「おいゴスロリ。歴史は、優秀すぎる人材が常に劣る人間から狂人扱いされる事実を示してきた事を忘れるな。俺は狂っちゃいない。俺が嗤うのは、俺たちが今まで払ってきた犠牲が全て無駄に終わった事が、たった今、判明したからだ。へっ…結局、こっちの件は、火消しに失敗しやがったか…。オタクの命を軽んじた天罰だろうぜ」
「…話が全く見えないわ。あんた、何が言いたいの?」
「俺の防衛省での任務は、これで完全に終わった。いいだろう。お前たちの質問に、全て正しく答えてやろうじゃねえか」
「おい、ザンギエフよ。ふざけるな。今のニュースでお前がどう心変わりしたかは知らん。だが、俺たちがお前たちのために払ってきた犠牲は、お前の気まぐれで安易に敵味方を切り替えられる程、軽いものではない」
「へっ。気まぐれなのは、俺か、それとも周辺国家か」
「豊橋…ここは気持ちを抑えよう。僕たちには情報が必要だ」
「…よかろう。ふん。鳴海に感情面をなだめられようとはな」
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