76 / 141
5章:ある少女に花束を
第17話
しおりを挟む
「鳴海くん、今日は、桜ちゃんも呼んだの? 到着したから、開けてほしいって連絡が来たわ」
「あ…そうだ。堀田さん、ありがとうございます」
「桜か…。どうやら、この話とは別件の様だ。であれば、俺がここにいる理由はあるまい。帰らせてもらおう」
「豊橋クン、帰るんですの? どなたかいらっしたんですの?」
「桜だ。伊奈、お前も神宮前の用事が済んだのなら、帰った方がよかろう。このホテルにあまり出入りが多いのは好ましいとは思えん」
「わ、わかりましたわ…。堀田サン、大丈夫ですかしら?」
「ええ、もう大丈夫よ。次の当番の時に、よろしくお願いするわ」
「豊橋、また近いうちに話がしたいんだ」
「防衛省側の連中と接触する方法についてか…。無論だ。俺にも考えがある」
「そうか、よかった。よろしく頼むよ。ちなみにだけど…豊橋の考えには、伊奈や呼続ちゃんが崩壊を迎える前に、スキルを消滅させたり、もっと別の方法で崩壊フェイズをパスする方法は含まれているかな」
「呼続に対して現時点で防衛省からの接触がないのであれば、それらの方法は含まれていないと考えて差し支えない。呼続は、自分がどこに捕まっていたかを理解していないのだろう?」
「あ…ああ。わからない」
「ふむ。であれば、同人イベント当日を利用するしかあるまい。俺たちが奴らに対して交渉力を持ちうるのは、その日だけだ」
「やっぱり、豊橋もその考えか…。となると、当日に向けた人員配置や役割分担を議論するしかないのか…」
「鳴海くん、おはよう!」
「おはようって時間じゃないだろ…」
「えへへ、なんだか久しぶりに会った気がしない? 神宮ちゃんの事もあって、ドタバタだったもんね。今日は呼び出してくれて、嬉しかったな~」
「それはよかったよ」
「桜ちゃん、鳴海くん、アタシ、お風呂の掃除してるから、2人で気の済むまで話して大丈夫よ」
「あ、堀田さん、別に、そんな話をするために桜を呼んだわけじゃ…」
「え~、そんな話じゃないのに、わざわざあたしを呼び出したの? ショック…」
「お、おい…桜は、あんまりからかうなよ…」
「うふふ。ごゆっくり」
「はーい、堀田さん! で、鳴海くん、何のご用?」
「いや、別に改まって用があるって訳じゃないんだけどさ…。なんか変に切り出しにくくなっちゃったじゃないか」
「そういえば、こんな風に改まって鳴海くんと会った事はなかったかもしれませんな~」
「いやだから、改まって話したい訳じゃないんだよ。調子くるうなぁ」
「ふふふ、ごめんごめん。で、なんだっけ?」
「この前、みんなで花の種を買いにいっただろ?」
「あ~、そんな事か」
「そんな事なんだけれどさ。桜は何の種を買ったのかな、って思って」
「え? 気になるの?」
「気になるさ」
「え~…」
「なんだよ…」
「どうしようかな…」
「別に、ためらうような事じゃないだろ…」
「じゃあ、秘密」
「は?」
「だから、秘密」
「秘密…って…。ふう…。桜はなんでも秘密にしたがるんだなあ…」
「謎が多い女の子の方がいいでしょ?」
「その理屈はよくわからない」
「ふふ。本当はね、あたし、自分のを選ぶよりも、鳴海くんの種を選んであげようと思ったんだよね」
「僕の種を? そうなんだ…。ちなみに何を選んだの?」
「鳴海くん、葛みたいなしぶとい植物がいいって言ってたでしょ? だから、ミントにしようと思ったの。雑草みたいにしぶといって言うから」
「ミント…。僕の発想も桜レベルだったか…」
「でも、やっぱりやめちゃった。なんか、鳴海くんが気に入らなかったら、やだもん」
「やだもん…って。桜が選んでくれたものだったら、なんでもよかったと思うけどな…」
「はいはい、そうですかね~。ところで、鳴海くんは、何の種を買ったの?」
「僕も桜と同じでさ…。自分のために買う花って思い浮かばなかったんだ。それで、じゃあ桜に似合いそうな花を買って、桜にプレゼントしようかな、て思って…」
「え? あたしのために、種を選んでくれたの?」
「僕は桜と違って、ちゃんと種を買ってきた。だから、それを渡そうと思ってさ」
「えへへ…。そうなんだぁ。やだ、ちょっと嬉しい…」
「ほら、これなんだけどさ」
「あ…カモミールだぁ…。カワイイ小さな花が咲くよね…。いいなぁ…カモミール。あたしって、こんな印象なのかな?」
「本当はね、僕も、桜にミントを買おうと思ったんだ。だって、チョコミントアイスが好きだろ? でも、それこそ雑草みたいになっちゃうからって思って…やっぱり、同じハーブでも、花が咲いた方がいいかな、って思って…。まあ、神宮前に助言してもらったんだけれどね」
「やっぱり最後は神宮ちゃんのアイデアでしたか~。えへへ。でも、嬉しいな…ありがとう」
「まあ、なんとか喜んで貰えたみたいでよかったよ。じゃあ、この種、渡しておくね。ティッシュか何かに包んでポケットに入れておけばいいんじゃないかな」
「ありがとね。でも…ごめんね、鳴海くん。あたし、そのカモミールの種、受け取れない」
「受け取れない…? なんで? 今、嬉しいって言ってたのに…」
「ごめんね…でも、無理なの。だから、その種は全部、鳴海くんが自分で使って欲しいな」
「いや、ちょっと…意味がわからないんだけれど…。ちゃんと理由を言ってくれないと、僕は納得ができないよ」
「理由は…秘密なの。でも、そんなに大きな秘密じゃないよ。だから、気にしないで欲しいな」
「気にしないで…って。僕は…。僕は、桜の事をいつも気にしているのに…」
「あたしの事…気にしているって? どういう事?」
「いや…だから、いつも気になっているって事だよ…」
「鳴海くん、あたし、よくわかんない。…はっきり言って欲しいな」
「…えっと」
「うんうん…」
「だから…気になってるって事だよ」
「もう一声!」
「あおるなよ。…桜らしいけどさ。…はは」
「えへへ。それで?」
「えっと…。だから、僕は、桜の事が…好きってことだよ!」
「それって、告白って事でいいの…?」
「いいもなにも…。ここまで言わせておいて…告白じゃない訳ないだろ?」
「やったぁ! えへへ~。ついに鳴海くんに、告白されちった。しかも、ラブホテルで」
「なんだよ…いちいち調子くるうなあ…。それで、桜の答えは?」
「あたしの答え? ききたいの?」
「ききたいききたい」
「どうしよっかな~」
「桜、ここは焦らすところじゃない…」
「じゃあ…言うね! 鳴海くん、告白してくれて、ありがとう。でも…ごめんなさい!」
「は?」
「だから、ごめんなさい」
「ごめんなさい…って。それって、どういう意味?」
「そのままの意味だよ」
「そのままの意味…。桜は、僕の事、なんとも思っていないってこと…なのかな…?」
「ううん。あたしも…鳴海くんの事が好き…。大好きだよ」
「…え?」
「えへへ…言っちゃった…。ぐすっ…ぐす…。でも、ごめんね…」
「さ…桜…。やっぱり、よくわからない。僕、よくわからないよ。…もしかして、桜にはもう、つきあっている人がいる…とか?」
「あたしが…? 鳴海くん以外の人と…? そんなこと…あると思うの…?」
「だ…だって、じゃなかったら…。どうしてなんだよ…」
「ごめんね…ごめんね…ぐすっ…ぐすん…」
「な、なんで桜が泣くんだよ…。僕の方が泣きたいくらいなのに…」
「あたし、鳴海くんの事が好き…。好き…。ずっと好き…。ずっと、そう言いたかったの…。でも、恋人にはなれない…」
「あ…それって、もしかして…病気のこと? 精密検査の事とか…。教えてくれよ。僕、どうしていいかわかんないよ」
「ありがとう。でも、言えないの…。今はまだ、言えない。だから…ね? あたしたち、このままお友達でいましょう…」
「お友達…。あ、ああ…。それは…もちろんだけど…。ええ…と…。これって、僕、振られたって事でいいのかな…?」
「さあ…どうでしょう? でも、あたしが鳴海くんを好きな気持ちは、これからもずっと、変わらないよ」
「僕も、桜を好きだという気持ちは、きっと変わらない…。でもお友達…」
「鳴海くん。今まで通り…って事だよ」
「今まで通り…」
「だから、これからも、よろしくね!」
「あ…ああ…。こちらこそ…よろしく…でいいのかな…。うん…」
「桜ちゃん、鳴海くんは?」
「あ、堀田さん。鳴海くんは、あたしに、神宮ちゃんを頼むって言い残して、先に帰りましたよ」
「そう…。ねえ桜ちゃん…。事情はわからないけれど…よかったの?」
「あ…堀田さん、もしかして、聞こえていましたか? あたしと鳴海くんのやりとり…」
「ごめんね。盗み聞きするつもりはなかったんだけど…ちょっと鳴海くんがかわいそうに思えちゃったかな…アタシ」
「あたしも、そう思います。でも、他に方法がなかったんですよ」
「桜ちゃん…。もしかして、神宮前さんの事を気にしているの? 神宮前さんが、鳴海くんの事を好きだから…。それで鳴海くんの告白を断ったとか…」
「鳴海くんと神宮ちゃんの事ですか? ふふふ。まさか、それはありませんよ。それに、あたしが鳴海くんの事を好きなのは…本当ですもん…」
「そうなのね…。まあ、アタシがこれ以上、口を出す事ではなかったわね。気にしないで」
「でも、そういう堀田さんも、なかなかやり手ですよね~」
「やり手…? アタシが? 桜ちゃん、何を言っているの?」
「だって、堀田さんだって、豊橋さんよりも、もっと振り向いて欲しい人がいるんじゃないですか?」
「…アナタ…何を知っているというの…?」
「あたし、気付いているんですよ? 堀田さんが、その人に対して、何度も何度も呼びかけていること…。でも、気づいてもらえていないですよね?」
「えっと…。何の事かしら?」
「そうですか…。まあ、堀田さんがとぼけるつもりなら、それでもいいと思いますよ。でも、あたしは全部知っていますからね」
「桜ちゃん…アナタ、一体…何者なの…?」
「あ…そうだ。堀田さん、ありがとうございます」
「桜か…。どうやら、この話とは別件の様だ。であれば、俺がここにいる理由はあるまい。帰らせてもらおう」
「豊橋クン、帰るんですの? どなたかいらっしたんですの?」
「桜だ。伊奈、お前も神宮前の用事が済んだのなら、帰った方がよかろう。このホテルにあまり出入りが多いのは好ましいとは思えん」
「わ、わかりましたわ…。堀田サン、大丈夫ですかしら?」
「ええ、もう大丈夫よ。次の当番の時に、よろしくお願いするわ」
「豊橋、また近いうちに話がしたいんだ」
「防衛省側の連中と接触する方法についてか…。無論だ。俺にも考えがある」
「そうか、よかった。よろしく頼むよ。ちなみにだけど…豊橋の考えには、伊奈や呼続ちゃんが崩壊を迎える前に、スキルを消滅させたり、もっと別の方法で崩壊フェイズをパスする方法は含まれているかな」
「呼続に対して現時点で防衛省からの接触がないのであれば、それらの方法は含まれていないと考えて差し支えない。呼続は、自分がどこに捕まっていたかを理解していないのだろう?」
「あ…ああ。わからない」
「ふむ。であれば、同人イベント当日を利用するしかあるまい。俺たちが奴らに対して交渉力を持ちうるのは、その日だけだ」
「やっぱり、豊橋もその考えか…。となると、当日に向けた人員配置や役割分担を議論するしかないのか…」
「鳴海くん、おはよう!」
「おはようって時間じゃないだろ…」
「えへへ、なんだか久しぶりに会った気がしない? 神宮ちゃんの事もあって、ドタバタだったもんね。今日は呼び出してくれて、嬉しかったな~」
「それはよかったよ」
「桜ちゃん、鳴海くん、アタシ、お風呂の掃除してるから、2人で気の済むまで話して大丈夫よ」
「あ、堀田さん、別に、そんな話をするために桜を呼んだわけじゃ…」
「え~、そんな話じゃないのに、わざわざあたしを呼び出したの? ショック…」
「お、おい…桜は、あんまりからかうなよ…」
「うふふ。ごゆっくり」
「はーい、堀田さん! で、鳴海くん、何のご用?」
「いや、別に改まって用があるって訳じゃないんだけどさ…。なんか変に切り出しにくくなっちゃったじゃないか」
「そういえば、こんな風に改まって鳴海くんと会った事はなかったかもしれませんな~」
「いやだから、改まって話したい訳じゃないんだよ。調子くるうなぁ」
「ふふふ、ごめんごめん。で、なんだっけ?」
「この前、みんなで花の種を買いにいっただろ?」
「あ~、そんな事か」
「そんな事なんだけれどさ。桜は何の種を買ったのかな、って思って」
「え? 気になるの?」
「気になるさ」
「え~…」
「なんだよ…」
「どうしようかな…」
「別に、ためらうような事じゃないだろ…」
「じゃあ、秘密」
「は?」
「だから、秘密」
「秘密…って…。ふう…。桜はなんでも秘密にしたがるんだなあ…」
「謎が多い女の子の方がいいでしょ?」
「その理屈はよくわからない」
「ふふ。本当はね、あたし、自分のを選ぶよりも、鳴海くんの種を選んであげようと思ったんだよね」
「僕の種を? そうなんだ…。ちなみに何を選んだの?」
「鳴海くん、葛みたいなしぶとい植物がいいって言ってたでしょ? だから、ミントにしようと思ったの。雑草みたいにしぶといって言うから」
「ミント…。僕の発想も桜レベルだったか…」
「でも、やっぱりやめちゃった。なんか、鳴海くんが気に入らなかったら、やだもん」
「やだもん…って。桜が選んでくれたものだったら、なんでもよかったと思うけどな…」
「はいはい、そうですかね~。ところで、鳴海くんは、何の種を買ったの?」
「僕も桜と同じでさ…。自分のために買う花って思い浮かばなかったんだ。それで、じゃあ桜に似合いそうな花を買って、桜にプレゼントしようかな、て思って…」
「え? あたしのために、種を選んでくれたの?」
「僕は桜と違って、ちゃんと種を買ってきた。だから、それを渡そうと思ってさ」
「えへへ…。そうなんだぁ。やだ、ちょっと嬉しい…」
「ほら、これなんだけどさ」
「あ…カモミールだぁ…。カワイイ小さな花が咲くよね…。いいなぁ…カモミール。あたしって、こんな印象なのかな?」
「本当はね、僕も、桜にミントを買おうと思ったんだ。だって、チョコミントアイスが好きだろ? でも、それこそ雑草みたいになっちゃうからって思って…やっぱり、同じハーブでも、花が咲いた方がいいかな、って思って…。まあ、神宮前に助言してもらったんだけれどね」
「やっぱり最後は神宮ちゃんのアイデアでしたか~。えへへ。でも、嬉しいな…ありがとう」
「まあ、なんとか喜んで貰えたみたいでよかったよ。じゃあ、この種、渡しておくね。ティッシュか何かに包んでポケットに入れておけばいいんじゃないかな」
「ありがとね。でも…ごめんね、鳴海くん。あたし、そのカモミールの種、受け取れない」
「受け取れない…? なんで? 今、嬉しいって言ってたのに…」
「ごめんね…でも、無理なの。だから、その種は全部、鳴海くんが自分で使って欲しいな」
「いや、ちょっと…意味がわからないんだけれど…。ちゃんと理由を言ってくれないと、僕は納得ができないよ」
「理由は…秘密なの。でも、そんなに大きな秘密じゃないよ。だから、気にしないで欲しいな」
「気にしないで…って。僕は…。僕は、桜の事をいつも気にしているのに…」
「あたしの事…気にしているって? どういう事?」
「いや…だから、いつも気になっているって事だよ…」
「鳴海くん、あたし、よくわかんない。…はっきり言って欲しいな」
「…えっと」
「うんうん…」
「だから…気になってるって事だよ」
「もう一声!」
「あおるなよ。…桜らしいけどさ。…はは」
「えへへ。それで?」
「えっと…。だから、僕は、桜の事が…好きってことだよ!」
「それって、告白って事でいいの…?」
「いいもなにも…。ここまで言わせておいて…告白じゃない訳ないだろ?」
「やったぁ! えへへ~。ついに鳴海くんに、告白されちった。しかも、ラブホテルで」
「なんだよ…いちいち調子くるうなあ…。それで、桜の答えは?」
「あたしの答え? ききたいの?」
「ききたいききたい」
「どうしよっかな~」
「桜、ここは焦らすところじゃない…」
「じゃあ…言うね! 鳴海くん、告白してくれて、ありがとう。でも…ごめんなさい!」
「は?」
「だから、ごめんなさい」
「ごめんなさい…って。それって、どういう意味?」
「そのままの意味だよ」
「そのままの意味…。桜は、僕の事、なんとも思っていないってこと…なのかな…?」
「ううん。あたしも…鳴海くんの事が好き…。大好きだよ」
「…え?」
「えへへ…言っちゃった…。ぐすっ…ぐす…。でも、ごめんね…」
「さ…桜…。やっぱり、よくわからない。僕、よくわからないよ。…もしかして、桜にはもう、つきあっている人がいる…とか?」
「あたしが…? 鳴海くん以外の人と…? そんなこと…あると思うの…?」
「だ…だって、じゃなかったら…。どうしてなんだよ…」
「ごめんね…ごめんね…ぐすっ…ぐすん…」
「な、なんで桜が泣くんだよ…。僕の方が泣きたいくらいなのに…」
「あたし、鳴海くんの事が好き…。好き…。ずっと好き…。ずっと、そう言いたかったの…。でも、恋人にはなれない…」
「あ…それって、もしかして…病気のこと? 精密検査の事とか…。教えてくれよ。僕、どうしていいかわかんないよ」
「ありがとう。でも、言えないの…。今はまだ、言えない。だから…ね? あたしたち、このままお友達でいましょう…」
「お友達…。あ、ああ…。それは…もちろんだけど…。ええ…と…。これって、僕、振られたって事でいいのかな…?」
「さあ…どうでしょう? でも、あたしが鳴海くんを好きな気持ちは、これからもずっと、変わらないよ」
「僕も、桜を好きだという気持ちは、きっと変わらない…。でもお友達…」
「鳴海くん。今まで通り…って事だよ」
「今まで通り…」
「だから、これからも、よろしくね!」
「あ…ああ…。こちらこそ…よろしく…でいいのかな…。うん…」
「桜ちゃん、鳴海くんは?」
「あ、堀田さん。鳴海くんは、あたしに、神宮ちゃんを頼むって言い残して、先に帰りましたよ」
「そう…。ねえ桜ちゃん…。事情はわからないけれど…よかったの?」
「あ…堀田さん、もしかして、聞こえていましたか? あたしと鳴海くんのやりとり…」
「ごめんね。盗み聞きするつもりはなかったんだけど…ちょっと鳴海くんがかわいそうに思えちゃったかな…アタシ」
「あたしも、そう思います。でも、他に方法がなかったんですよ」
「桜ちゃん…。もしかして、神宮前さんの事を気にしているの? 神宮前さんが、鳴海くんの事を好きだから…。それで鳴海くんの告白を断ったとか…」
「鳴海くんと神宮ちゃんの事ですか? ふふふ。まさか、それはありませんよ。それに、あたしが鳴海くんの事を好きなのは…本当ですもん…」
「そうなのね…。まあ、アタシがこれ以上、口を出す事ではなかったわね。気にしないで」
「でも、そういう堀田さんも、なかなかやり手ですよね~」
「やり手…? アタシが? 桜ちゃん、何を言っているの?」
「だって、堀田さんだって、豊橋さんよりも、もっと振り向いて欲しい人がいるんじゃないですか?」
「…アナタ…何を知っているというの…?」
「あたし、気付いているんですよ? 堀田さんが、その人に対して、何度も何度も呼びかけていること…。でも、気づいてもらえていないですよね?」
「えっと…。何の事かしら?」
「そうですか…。まあ、堀田さんがとぼけるつもりなら、それでもいいと思いますよ。でも、あたしは全部知っていますからね」
「桜ちゃん…アナタ、一体…何者なの…?」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
スカートの中、…見たいの?
サドラ
大衆娯楽
どうしてこうなったのかは、説明を省かせていただきます。文脈とかも適当です。官能の表現に身を委ねました。
「僕」と「彼女」が二人っきりでいる。僕の指は彼女をなぞり始め…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる