20 / 141
2章:時を賭ける少女
第10話
しおりを挟む
「ねえ、鳴海くん。国府ちゃんが死んじゃってから、まだ1週間だけど…あたしたち、もう、あの公園に足を運んじゃって大丈夫なのかな?」
「大丈夫さ。奴らが、本気で短期間に僕たちを殺害したいのであれば、この1週間のあいだに、僕たちになんらかの接触をしていてもおかしくない。それがないってことは、奴らは別の手段を考えてるって事さ。それよりも、国府をあのまま放置してきてしまった事の方が気がかりだよ」
「うん…。そうだよね」
「う~。あっついね~! そっかあ。あの公園、バス停じゃないところだったから、ここから歩いていかなきゃいけないんだね」
「途中にコンビニがあったと思うよ。チョコミントアイスでも買う?」
「おっ、いいですねえ」
「ガーン…。また、チョコミントアイスがないなんて…。もうすぐ真夏なのにい…」
「ははは。運がなかったね。で、どうせ、またソフトクリームを食べるんだろ?」
「そのとおり! という訳で、鳴海くん、買ってきてくれる?」
「な、なんで僕が…」
「お願い! コーンはあげるからさ」
「コーンは…って。コーンだけは、だろ。ったく。仕方ないな、桜は…。解ったよ」
「あ~…やっと到着したね」
「思ったよりも遠かったな…。まあ、バスで何分か乗るくらいの距離だから」
「ちょっとドキドキしちゃうな…。まだ、あの時の印象が残っているんだよね…」
「それは僕も同じだな…。国府の最期の場所だから、悪い印象はできるだけ持ちたくないんだけれど…複雑な感情が入り乱れているよ」
「あ、広場。よかったあ…のかな。国府ちゃんはどこにも残っていないね…」
「さすがに、国府の残骸はキレイに片付けられているか…。除染車…って言ってたな、ゴブリンのやつ。やっぱり奴らは、崩壊の最後に爆発が起こる事を知っていたんだ…」
「国府ちゃん、結局転校した事にされちゃったもんね…。ホントの事を知っているのは、あたしたちだけか…」
「沢山の命を助けたのに、当の本人は讃えられもせず、いずれ人の記憶からも消えてしまうのかもしれないな…。こうして広場を見ていると、国府がここで死んだ事も、本当は夢だったんじゃないか…と思えてくるよ」
「鳴海くん、ダメだよ、そんなんじゃ! あたしたちが、しっかり覚えていればいいんでしょ?」
「そうだな…。僕たちだけは、国府の事を絶対に忘れちゃいけないんだ」
「えへへ。よかった。国府ちゃん…安心してね…。あたしたち、死ぬまで国府ちゃんの事を覚えているからね…」
「さて…と。これから、どうしようか」
「あ…あれ。ねえ鳴海くん、あそこ。見て」
「ん? ああ…。これは…双葉? こんな広場の真ん中に?」
「鳴海くん…これ、ひょっとして、ヒマワリの芽じゃない!?」
「ヒマワリ? なんでこんなところに…あっ!」
「ね!? そう思わない?」
「そんな事があるのかな…。でも、場所といい、発芽のタイミングといい、そうとしか思えないなあ…」
「ねえ、鳴海くん、このままじゃ、そのうち子どもたちに蹴られたり、誰かに踏まれちゃうよ。ええっと…ほら、あっちの花壇の方に、植え替えてあげようよ」
「これでよし…っと」
「ヒマワリって、どのくらいで花が咲くのかな?」
「さあなぁ…。僕も植物には詳しくないからな。でも、成長が早い植物だから、この夏中には花を咲かせるんじゃないかな」
「そっか…。じゃあ、また夏の終わり頃くらいに、この公園に様子を見に来ようよね」
「なるほど…なんで人が、事あるごとに記念樹を植えようとするのか、なんとなく理解できた気がするよ」
「えへへ…そうだね。じゃ、国府ちゃんにバイバイして、行こっか」
「うん。帰ろう。またあの道を戻るのかあ…」
「ちょっとお、帰ろう、じゃないでしょ? せっかくここまで来たんだよ?」
「え? ここから、どこに行こうって言うんだよ。まさか、あのラブホテル…じゃないよな」
「鳴海くんのバカ! じゃないでしょ。国府ちゃんが行きたがっていたところだよ」
「国府が? あ…あ~、あの絵本のパンケーキの…」
「そうそう。ね? 行こうよ。でも、さっきソフトクリーム食べちゃったから、1つのパンケーキをはんぶんこしよ!」
「わかったよ。行こう。結局、方向が違うだけで、同じくらいの距離を歩かなきゃいけないんだな…」
「いらっしゃいませ。1名様ですか?」
「え? いや、2名です」
「こちらのお席にどうぞ!」
「おお~、いい席ですな~。鳴海くん、大きな窓から、外の景色がよく見えるよ!」
「天気が良くて、よかったよなあ…。このカフェ、小高いところにあるんだね。そして、この内装…。まさに絵本の世界」
「ステキだよね~。ねっ、どうする? せっかくだし、ゾンビ映画の感想を言い合いますか?」
「そんな、夢の国のテーマパークのレストランで、スーツを着たオジサンたちがビジネスの商談をするような真似はできないよ」
「なにそれ。鳴海くんは例え話が下手ですなあ」
「うるさいなあ」
「パンケーキ、お待たせしました~!」
「こ、これは確かにすごい…」
「わあ~、本当に絵本の世界から出てきたみたいだね。あ、写真とっちゃお!」
「はちみつかけちゃっていい?」
「いいよ! 上手にかけてね」
「上手に…って…。あちち! スキレット触っちゃった…凄く熱い」
「そのままオーブンに入れて焼いてるからね~。気をつけて」
「うぅ…鳴海くん、いざ、食べようとしたら、胸焼けが…。さっきのソフトクリームが効いてるかも…」
「うそだろ? 胸焼けって歳じゃないじゃん。だいたい、桜がソフトクリーム1つで甘いものを断念するなんておかしいし、あのソフトクリームだってほとんど僕が食べたじゃん。もしや…」
「ちょ、ちょっとお。だ、ダイエットなんか…」
「してるんだろ。別に、桜は太ってなんかいないのに」
「あ~、これだから、乙女心が解らない男は。だって…今年の夏は、鳴海く…みんなと、海に遊びに行きたいんだもん」
「そっか、水着かあ…。おっぱいランキング1位の桜の水着姿…」
「ん? 何か変なこと言った?」
「い、いや、なんでもない。じゃあ、とりあえず、頂きます…。なんか、じっと見られてると食べづらいなあ…」
「いいじゃん。あたし、鳴海くんが食べてるところ見ていたいんだもん」
「うん…うん。おいしい。おいしいよ、これ」
「えへへ~。これが、鳴海くんとの最後の楽しい思い出にならなければいいなあ…」
「大丈夫さ。奴らが、本気で短期間に僕たちを殺害したいのであれば、この1週間のあいだに、僕たちになんらかの接触をしていてもおかしくない。それがないってことは、奴らは別の手段を考えてるって事さ。それよりも、国府をあのまま放置してきてしまった事の方が気がかりだよ」
「うん…。そうだよね」
「う~。あっついね~! そっかあ。あの公園、バス停じゃないところだったから、ここから歩いていかなきゃいけないんだね」
「途中にコンビニがあったと思うよ。チョコミントアイスでも買う?」
「おっ、いいですねえ」
「ガーン…。また、チョコミントアイスがないなんて…。もうすぐ真夏なのにい…」
「ははは。運がなかったね。で、どうせ、またソフトクリームを食べるんだろ?」
「そのとおり! という訳で、鳴海くん、買ってきてくれる?」
「な、なんで僕が…」
「お願い! コーンはあげるからさ」
「コーンは…って。コーンだけは、だろ。ったく。仕方ないな、桜は…。解ったよ」
「あ~…やっと到着したね」
「思ったよりも遠かったな…。まあ、バスで何分か乗るくらいの距離だから」
「ちょっとドキドキしちゃうな…。まだ、あの時の印象が残っているんだよね…」
「それは僕も同じだな…。国府の最期の場所だから、悪い印象はできるだけ持ちたくないんだけれど…複雑な感情が入り乱れているよ」
「あ、広場。よかったあ…のかな。国府ちゃんはどこにも残っていないね…」
「さすがに、国府の残骸はキレイに片付けられているか…。除染車…って言ってたな、ゴブリンのやつ。やっぱり奴らは、崩壊の最後に爆発が起こる事を知っていたんだ…」
「国府ちゃん、結局転校した事にされちゃったもんね…。ホントの事を知っているのは、あたしたちだけか…」
「沢山の命を助けたのに、当の本人は讃えられもせず、いずれ人の記憶からも消えてしまうのかもしれないな…。こうして広場を見ていると、国府がここで死んだ事も、本当は夢だったんじゃないか…と思えてくるよ」
「鳴海くん、ダメだよ、そんなんじゃ! あたしたちが、しっかり覚えていればいいんでしょ?」
「そうだな…。僕たちだけは、国府の事を絶対に忘れちゃいけないんだ」
「えへへ。よかった。国府ちゃん…安心してね…。あたしたち、死ぬまで国府ちゃんの事を覚えているからね…」
「さて…と。これから、どうしようか」
「あ…あれ。ねえ鳴海くん、あそこ。見て」
「ん? ああ…。これは…双葉? こんな広場の真ん中に?」
「鳴海くん…これ、ひょっとして、ヒマワリの芽じゃない!?」
「ヒマワリ? なんでこんなところに…あっ!」
「ね!? そう思わない?」
「そんな事があるのかな…。でも、場所といい、発芽のタイミングといい、そうとしか思えないなあ…」
「ねえ、鳴海くん、このままじゃ、そのうち子どもたちに蹴られたり、誰かに踏まれちゃうよ。ええっと…ほら、あっちの花壇の方に、植え替えてあげようよ」
「これでよし…っと」
「ヒマワリって、どのくらいで花が咲くのかな?」
「さあなぁ…。僕も植物には詳しくないからな。でも、成長が早い植物だから、この夏中には花を咲かせるんじゃないかな」
「そっか…。じゃあ、また夏の終わり頃くらいに、この公園に様子を見に来ようよね」
「なるほど…なんで人が、事あるごとに記念樹を植えようとするのか、なんとなく理解できた気がするよ」
「えへへ…そうだね。じゃ、国府ちゃんにバイバイして、行こっか」
「うん。帰ろう。またあの道を戻るのかあ…」
「ちょっとお、帰ろう、じゃないでしょ? せっかくここまで来たんだよ?」
「え? ここから、どこに行こうって言うんだよ。まさか、あのラブホテル…じゃないよな」
「鳴海くんのバカ! じゃないでしょ。国府ちゃんが行きたがっていたところだよ」
「国府が? あ…あ~、あの絵本のパンケーキの…」
「そうそう。ね? 行こうよ。でも、さっきソフトクリーム食べちゃったから、1つのパンケーキをはんぶんこしよ!」
「わかったよ。行こう。結局、方向が違うだけで、同じくらいの距離を歩かなきゃいけないんだな…」
「いらっしゃいませ。1名様ですか?」
「え? いや、2名です」
「こちらのお席にどうぞ!」
「おお~、いい席ですな~。鳴海くん、大きな窓から、外の景色がよく見えるよ!」
「天気が良くて、よかったよなあ…。このカフェ、小高いところにあるんだね。そして、この内装…。まさに絵本の世界」
「ステキだよね~。ねっ、どうする? せっかくだし、ゾンビ映画の感想を言い合いますか?」
「そんな、夢の国のテーマパークのレストランで、スーツを着たオジサンたちがビジネスの商談をするような真似はできないよ」
「なにそれ。鳴海くんは例え話が下手ですなあ」
「うるさいなあ」
「パンケーキ、お待たせしました~!」
「こ、これは確かにすごい…」
「わあ~、本当に絵本の世界から出てきたみたいだね。あ、写真とっちゃお!」
「はちみつかけちゃっていい?」
「いいよ! 上手にかけてね」
「上手に…って…。あちち! スキレット触っちゃった…凄く熱い」
「そのままオーブンに入れて焼いてるからね~。気をつけて」
「うぅ…鳴海くん、いざ、食べようとしたら、胸焼けが…。さっきのソフトクリームが効いてるかも…」
「うそだろ? 胸焼けって歳じゃないじゃん。だいたい、桜がソフトクリーム1つで甘いものを断念するなんておかしいし、あのソフトクリームだってほとんど僕が食べたじゃん。もしや…」
「ちょ、ちょっとお。だ、ダイエットなんか…」
「してるんだろ。別に、桜は太ってなんかいないのに」
「あ~、これだから、乙女心が解らない男は。だって…今年の夏は、鳴海く…みんなと、海に遊びに行きたいんだもん」
「そっか、水着かあ…。おっぱいランキング1位の桜の水着姿…」
「ん? 何か変なこと言った?」
「い、いや、なんでもない。じゃあ、とりあえず、頂きます…。なんか、じっと見られてると食べづらいなあ…」
「いいじゃん。あたし、鳴海くんが食べてるところ見ていたいんだもん」
「うん…うん。おいしい。おいしいよ、これ」
「えへへ~。これが、鳴海くんとの最後の楽しい思い出にならなければいいなあ…」
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
初恋♡リベンジャーズ
遊馬友仁
青春
【第五部開始】
高校一年生の春休み直前、クラスメートの紅野アザミに告白し、華々しい玉砕を遂げた黒田竜司は、憂鬱な気持ちのまま、新学期を迎えていた。そんな竜司のクラスに、SNSなどでカリスマ的人気を誇る白草四葉が転入してきた。
眉目秀麗、容姿端麗、美の化身を具現化したような四葉は、性格も明るく、休み時間のたびに、竜司と親友の壮馬に気さくに話しかけてくるのだが――――――。
転入早々、竜司に絡みだす、彼女の真の目的とは!?
◯ンスタグラム、ユ◯チューブ、◯イッターなどを駆使して繰り広げられる、SNS世代の新感覚復讐系ラブコメディ、ここに開幕!
第二部からは、さらに登場人物たちも増え、コメディ要素が多めとなります(予定)
マイグレーション ~現実世界に入れ替え現象を設定してみた~
気の言
ミステリー
いたって平凡な男子高校生の玉宮香六(たまみや かむい)はひょんなことから、中学からの腐れ縁である姫石華(ひめいし はな)と入れ替わってしまった。このまま元に戻らずにラブコメみたいな生活を送っていくのかと不安をいだきはじめた時に、二人を元に戻すための解決の糸口が見つかる。だが、このことがきっかけで事態は急展開を迎えてしまう。
現実に入れ替わりが起きたことを想定した、恋愛要素あり、謎ありの空想科学小説です。
この作品はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる