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14章:「穴があったら入りたい」愚か者を俺は諭さなければならない。「穴はいれるものだ」と

第2話

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 結局、フロルがあまりにも嫌がったので、聖域…俺のスタジオ…にはフロルも入る事になった。大橋さんはゴメちゃんと扉の外で待機。俺とミクルとフロルがスタジオ入りする。大橋さんは女子供を行かせる事を極度に嫌がったが、全体最適とはそういうものだ。
 穴に入る前に、俺は大橋さんにナンジェーミンとビンラディンの契約書、それと残りの金を全て渡した。
「大儀の為に人は死ねるかもしれない」俺が言った。「だが、俺のチームメンバをそんな不純な理由で失うのは俺の流儀に反する。奴らには、金とライフプランが必要だ。奴らが催促しないものだから、まだ1ゴールドだって契約金を支払っていなかったなんて恥ずかしくて言えないが、これでお役御免という訳だ」
「解った」大橋さんは神妙な表情で言った。「預かろう。だが、引継ぎではない。二人にはカナヤマから渡してほしい」
 俺は、ははは、と笑った。
「『さよならなんて言わないよ』か。いちいち意識しなくとも、大抵の人間関係はサヨナラなんて言わずにその後一生会わずに終わるものだ。でなければ、あの井伏氏が『さよならだけが人生だ』なんて言う筈がない」
「ジャレトンさんとデイーヌさんに、声をかけなくてよかったのかな」フロルが言った。「もし、会えなくなったら、寂しいな」
「口を慎むんだな」俺はフロルを諭す様に言った。「俺が一番連れて行きなくないのは、何よりもお前とミクルだ。寧ろ、俺だけが行けばいい話なんだ。無念な事に、ミクルは大儀を自分の幸福と勘違いしちまっているし、お前は命知らずのシスコンと来ている。救い様がなくて涙が出るぜ」
 ミクルがクスクスと笑った。

 俺たちはゴメちゃんを先頭に、フロルに箱を持たせ、穴の中に入った。扉は、前回と同じように在った。
 扉の前で大橋さんと別れた。フロルは別れしな、物寂しそうに、またあとでね、と大橋さんに手を振った。
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