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第5章:あの「しずかちゃん」が5人の中で処女を維持できた理由を俺はまだ探し続けている
第1話
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結局、支給されたのは30万Gだった。都合、1,000倍の資金を引き出せた事になる。これだけの金があれば、想定よりも多くの人数を雇う事ができそうだ。ただし、女勇者の役目は斥候だから、大人数はデメリットになる。メンバは、各々の性格や年齢、性別を考えて組み合わせる必要がある。AVを撮影する時の配役やスタッフ布陣を編成する時のようにな。そして、俺のチーム編成では、是非、ライフプラン、キャリアプランにまで言及して行きたい。それなりにレベルの高い連中が、魔王の調査という、殆ど日雇いみたいな仕事に集まってくるとは思えないからな。
「ねえ、カナヤマ」フロルが訊いてきた。「なんで、あのトランシーバーってヤツを国王に渡したの? 国王と連絡を取る機会なんて、そうそう無い様に思うけれど」
その疑問は正しい。
「ミクルよ」俺が声をかけた。「君はどう思う。何故、俺が6世のヤツに、俺とヤツとの連絡手段を作ったのか、を。しかも、精々通信距離は60㎞だ。1週間も歩かない内に、圏外になって届かなくなる」
俺の言葉に、ミクルは歩きながら考える素振りを見せた。
「ええ…と。そうね…」ミクルが言った。「国王からの支援金額をできるだけ多くする為…かな。違う?」
「ビンゴだ、ミクル」俺が言った。やはりこの娘は賢い。大学? を出ているだけの事はある。「連絡手段を残す事で、ヤツに信用させた。つまり、少なくとも最初の俺たちの金の使い道については、ヤツは好きなタイミングで確認ができる、という訳だ。でなければ、他の女勇者の1,000倍の金額は渡さない。逃げられる可能性が高いからな」
俺の言葉に、ミクルは深く頷いた。
「次は、どんな基準で、誰を仲間に入れるか…ね。国王を満足させられるパーティ編成ができれば、更なる支援も期待できるかもしれないし」
「そうだ」俺が返答した。「そして、パーティ編成については俺に任せておけ。必要最低限の人数かつ最大限のパフォーマンスを引き出すメンバ構成を作り上げる。だからフロルよ、足をひっぱるなよ」
「なんでボクに言うんだよぉ」
フロルはまた、口を尖らせてみせた。この仕草、萌えなのだが、あざとさがないから返って困る。
「さて、人を雇う為には、求人誌か職安に出向くかが必要だと思うが、どうすればいいんだ?」
「酒場だよ」フロルが答えた。「色んな人が集まる場所だから、職業斡旋もやってる。特に日雇いで仕事が欲しい人は名簿に登録して、夜は酒場でたむろしてることが多いね。ほら、ボクの知識だって役立つでしょ?」
「ああそうだな。よかったな」
俺は適当にあしらって返答した。然し、酒場か…。この世界は何から何までが記号で埋め尽くされている様に思えてならない。ステレオタイプの塊だ。「魔王」も「ぬののふく」も「300G」も予定調和で都合のいい記号の集合体という意味では、この世界はAVとなんら変わらない。意外性は要らないんだ。楽しみたいのは予定調和というワンパターンだからだ。下手にそれを崩すと、視聴者は射精するタイミングを逸してしまう。AVも、ラノベの様なこの世界も。
俺たちが、その酒場に到着したのは、まだ陽が暮れる前だった。ちょっと早すぎたか、と思ったが、予測に反して盛況だった。という事は、この国は存外に不景気なのかもしれない。国王も金がない、と言っていたしな。あとは、こういう酒場に出入りする娼婦の数で市場経済の動向は把握できそうだな。まあ、この首府における総人口や性年代別分布なんかの情報も欲しいところだが。
俺が先頭に、酒場の門をくぐった。見た感じ、半分は、飲む事を目的に来ている客か、女を買いに来ている客、残りの半分は職業を探しに来ている客、と言った体だ。魔王が復活してから、より求職者は増えているに違いない。
俺は店内を一通り見渡してから、店の人間と思われる、奥の酒を出すカウンターで気怠そうに肘をついている女に目を付けた。給仕が忙しそうにしているのに余裕がある人材というのは、余程使えないヤツか、優秀な店主かのどちらかだ。そして、彼女からは後者の雰囲気がムンムンと出ている。ヤバい女だ。
俺は、速足に女に近づいていくと、声をかけた。
「…なかなか気に入ったよ。この店の雰囲気。趣味の良い調度品をあしらっているしな。おいてある飲み物も…品が良さそうだ。まあ、飲んだことがないから詳しくは解らんが」俺が、不愛想にカウンタに頬杖をつく女に言った。「それで…ルイーダよ。訊きたい事がある。旅をする為の人材を募集しているんだが、今この店の中に居る人間で、最もレベルが高い人材は誰だ?」
「…見ない顔ね」女が言った。「おかしな恰好。それで人を雇おうって言うの?」
「新たな仕事は新たな作業着と共にやってくる。期待していい、という証拠に他ならないぞ、ルイーダ」
「…ふうん」女が言った。「まあ、あたしはルイーダってんじゃないけどね」
女は、ゆっくりと立ち上がると、店の奥の棚から分厚い紙の束を取り出してきた。それをカウンターに無造作に置くと、やはり気怠そうにページを繰り始めた。恐ろしい色気だ。熟女物を撮るとしたら、間違いなくこの女だが、こういうタイプに限ってセックスは淡泊だったりするから度し難い。ひとりっ子のB型と見た。
「そうねぇ…」女が言った。どうやら、紙の束は、レベル別、能力別でインデックスされているらしい。「今いるヒトだと、まずはこの男かねえ」
「どいつだ」俺が言った。「写真がないから全くわからん」
俺の言葉に、女は、俺の後方にある、とあるテーブルを指さした。そこには、2人の男が座って酒を飲んでいた。
「あの左の男ね。レベル99」
「レベル99だと?」俺は思わず語気を強めた。「そんな人間が、冒険の序盤からたむろしているのか」
「攻撃系の魔法が得意、と名簿には書かれているわ。見た目はのっぽで色白で大人しそうなのにねえ…」
所謂、ヲタクタイプだな。
「なるほど、早速声をかけたいところだ」
「ちょっとまってね」女が言った。「…一緒に酒を飲んでる向かいの男。あの男も、レベル99だね」
「おいおい。魔王討伐の物語を根底から覆す様な人材の登録状況だな。何故、そんな優秀な人間が求職をしてる?」
「さあね」女が言った。「それは本人たちに訊いてみたら? まあ、大抵は、普段は大工とか鍛冶とか、まっとうな職業に就いていたりするしね。それだけレベルが高いと給金も高くなるから、誰も雇えない、というのが本音かもしれないし」
そりゃあ、300Gから始まった奴らには到底支払える給料ではないだろうな。だが、俺たちは違う。
「教えて貰ったついでに訊きたい。何しろ、俺自身がこの辺りの常識に明るくないんでな」俺の言葉に、女は俺の全身をじろじろ見ながら、解るわ、と言った。「俺が知りたいのは、レベルの概念だ。そもそも、俺にもレベルがあるのか、すら解らん。どいつもこいつも、一体どうやってレベルを上げてるんだ?」
「なんだ、そんな事…」女は薄く笑むと、俺の顔をまじまじと見てきた。「あんたはレベル1ね」
なんだと?
「それは、俺の能力値の事か? それとも、男としての俺か?」
女はカラカラと笑った。
「あんた、なかなか面白いね。そうじゃない。あんたは余所者だから、レベルの試験なんて受けたことないだろうな、って思ったのよ」
「試験…」俺は呟いた。「試験を受ける必要があるのか?」
「そりゃそうさ」女が答えた。「だって、国家資格だもん」
国家資格…。そうだったのか。受験会場は首府だけなのか? 受験料は幾らなんだ? 剣や魔法や占いとかの分野ごとに科目は異なるのか? など疑問が次々に沸いたが、面倒なので訊くのは止した。
俺は、フロルの方を振り返った。
「時に、フロルよ。お前はレベルアップの国家試験を受けたことはあるのか?」
フロルはかぶりを振った。
「ある訳ないじゃん。だって、ボク、首府に来るの初めてなんだよ?」
「その口ぶりだと、試験を受けられる場所は限られる様だ。因みに、フロルの場合、レベル試験はどんな内容になるんだ?」
「剣だろうね。剣の種類から使い方、手入れや鍛錬の仕方、実技なんかがあるみたいだよ」
なるほど。思ったよりも合理的だ。フロルもミクルも、レベル1なんだ。何故なら、レベルアップの試験を受けた事がないから。
俺は、女の方に向き直った。
「助かった。心から礼を言う、ルイーダ」
「…契約成立したら、手数料を貰うから、忘れないでよね。それに、まあ、あたしはルイーダってんじゃないんだけどね」
「ねえ、カナヤマ」フロルが訊いてきた。「なんで、あのトランシーバーってヤツを国王に渡したの? 国王と連絡を取る機会なんて、そうそう無い様に思うけれど」
その疑問は正しい。
「ミクルよ」俺が声をかけた。「君はどう思う。何故、俺が6世のヤツに、俺とヤツとの連絡手段を作ったのか、を。しかも、精々通信距離は60㎞だ。1週間も歩かない内に、圏外になって届かなくなる」
俺の言葉に、ミクルは歩きながら考える素振りを見せた。
「ええ…と。そうね…」ミクルが言った。「国王からの支援金額をできるだけ多くする為…かな。違う?」
「ビンゴだ、ミクル」俺が言った。やはりこの娘は賢い。大学? を出ているだけの事はある。「連絡手段を残す事で、ヤツに信用させた。つまり、少なくとも最初の俺たちの金の使い道については、ヤツは好きなタイミングで確認ができる、という訳だ。でなければ、他の女勇者の1,000倍の金額は渡さない。逃げられる可能性が高いからな」
俺の言葉に、ミクルは深く頷いた。
「次は、どんな基準で、誰を仲間に入れるか…ね。国王を満足させられるパーティ編成ができれば、更なる支援も期待できるかもしれないし」
「そうだ」俺が返答した。「そして、パーティ編成については俺に任せておけ。必要最低限の人数かつ最大限のパフォーマンスを引き出すメンバ構成を作り上げる。だからフロルよ、足をひっぱるなよ」
「なんでボクに言うんだよぉ」
フロルはまた、口を尖らせてみせた。この仕草、萌えなのだが、あざとさがないから返って困る。
「さて、人を雇う為には、求人誌か職安に出向くかが必要だと思うが、どうすればいいんだ?」
「酒場だよ」フロルが答えた。「色んな人が集まる場所だから、職業斡旋もやってる。特に日雇いで仕事が欲しい人は名簿に登録して、夜は酒場でたむろしてることが多いね。ほら、ボクの知識だって役立つでしょ?」
「ああそうだな。よかったな」
俺は適当にあしらって返答した。然し、酒場か…。この世界は何から何までが記号で埋め尽くされている様に思えてならない。ステレオタイプの塊だ。「魔王」も「ぬののふく」も「300G」も予定調和で都合のいい記号の集合体という意味では、この世界はAVとなんら変わらない。意外性は要らないんだ。楽しみたいのは予定調和というワンパターンだからだ。下手にそれを崩すと、視聴者は射精するタイミングを逸してしまう。AVも、ラノベの様なこの世界も。
俺たちが、その酒場に到着したのは、まだ陽が暮れる前だった。ちょっと早すぎたか、と思ったが、予測に反して盛況だった。という事は、この国は存外に不景気なのかもしれない。国王も金がない、と言っていたしな。あとは、こういう酒場に出入りする娼婦の数で市場経済の動向は把握できそうだな。まあ、この首府における総人口や性年代別分布なんかの情報も欲しいところだが。
俺が先頭に、酒場の門をくぐった。見た感じ、半分は、飲む事を目的に来ている客か、女を買いに来ている客、残りの半分は職業を探しに来ている客、と言った体だ。魔王が復活してから、より求職者は増えているに違いない。
俺は店内を一通り見渡してから、店の人間と思われる、奥の酒を出すカウンターで気怠そうに肘をついている女に目を付けた。給仕が忙しそうにしているのに余裕がある人材というのは、余程使えないヤツか、優秀な店主かのどちらかだ。そして、彼女からは後者の雰囲気がムンムンと出ている。ヤバい女だ。
俺は、速足に女に近づいていくと、声をかけた。
「…なかなか気に入ったよ。この店の雰囲気。趣味の良い調度品をあしらっているしな。おいてある飲み物も…品が良さそうだ。まあ、飲んだことがないから詳しくは解らんが」俺が、不愛想にカウンタに頬杖をつく女に言った。「それで…ルイーダよ。訊きたい事がある。旅をする為の人材を募集しているんだが、今この店の中に居る人間で、最もレベルが高い人材は誰だ?」
「…見ない顔ね」女が言った。「おかしな恰好。それで人を雇おうって言うの?」
「新たな仕事は新たな作業着と共にやってくる。期待していい、という証拠に他ならないぞ、ルイーダ」
「…ふうん」女が言った。「まあ、あたしはルイーダってんじゃないけどね」
女は、ゆっくりと立ち上がると、店の奥の棚から分厚い紙の束を取り出してきた。それをカウンターに無造作に置くと、やはり気怠そうにページを繰り始めた。恐ろしい色気だ。熟女物を撮るとしたら、間違いなくこの女だが、こういうタイプに限ってセックスは淡泊だったりするから度し難い。ひとりっ子のB型と見た。
「そうねぇ…」女が言った。どうやら、紙の束は、レベル別、能力別でインデックスされているらしい。「今いるヒトだと、まずはこの男かねえ」
「どいつだ」俺が言った。「写真がないから全くわからん」
俺の言葉に、女は、俺の後方にある、とあるテーブルを指さした。そこには、2人の男が座って酒を飲んでいた。
「あの左の男ね。レベル99」
「レベル99だと?」俺は思わず語気を強めた。「そんな人間が、冒険の序盤からたむろしているのか」
「攻撃系の魔法が得意、と名簿には書かれているわ。見た目はのっぽで色白で大人しそうなのにねえ…」
所謂、ヲタクタイプだな。
「なるほど、早速声をかけたいところだ」
「ちょっとまってね」女が言った。「…一緒に酒を飲んでる向かいの男。あの男も、レベル99だね」
「おいおい。魔王討伐の物語を根底から覆す様な人材の登録状況だな。何故、そんな優秀な人間が求職をしてる?」
「さあね」女が言った。「それは本人たちに訊いてみたら? まあ、大抵は、普段は大工とか鍛冶とか、まっとうな職業に就いていたりするしね。それだけレベルが高いと給金も高くなるから、誰も雇えない、というのが本音かもしれないし」
そりゃあ、300Gから始まった奴らには到底支払える給料ではないだろうな。だが、俺たちは違う。
「教えて貰ったついでに訊きたい。何しろ、俺自身がこの辺りの常識に明るくないんでな」俺の言葉に、女は俺の全身をじろじろ見ながら、解るわ、と言った。「俺が知りたいのは、レベルの概念だ。そもそも、俺にもレベルがあるのか、すら解らん。どいつもこいつも、一体どうやってレベルを上げてるんだ?」
「なんだ、そんな事…」女は薄く笑むと、俺の顔をまじまじと見てきた。「あんたはレベル1ね」
なんだと?
「それは、俺の能力値の事か? それとも、男としての俺か?」
女はカラカラと笑った。
「あんた、なかなか面白いね。そうじゃない。あんたは余所者だから、レベルの試験なんて受けたことないだろうな、って思ったのよ」
「試験…」俺は呟いた。「試験を受ける必要があるのか?」
「そりゃそうさ」女が答えた。「だって、国家資格だもん」
国家資格…。そうだったのか。受験会場は首府だけなのか? 受験料は幾らなんだ? 剣や魔法や占いとかの分野ごとに科目は異なるのか? など疑問が次々に沸いたが、面倒なので訊くのは止した。
俺は、フロルの方を振り返った。
「時に、フロルよ。お前はレベルアップの国家試験を受けたことはあるのか?」
フロルはかぶりを振った。
「ある訳ないじゃん。だって、ボク、首府に来るの初めてなんだよ?」
「その口ぶりだと、試験を受けられる場所は限られる様だ。因みに、フロルの場合、レベル試験はどんな内容になるんだ?」
「剣だろうね。剣の種類から使い方、手入れや鍛錬の仕方、実技なんかがあるみたいだよ」
なるほど。思ったよりも合理的だ。フロルもミクルも、レベル1なんだ。何故なら、レベルアップの試験を受けた事がないから。
俺は、女の方に向き直った。
「助かった。心から礼を言う、ルイーダ」
「…契約成立したら、手数料を貰うから、忘れないでよね。それに、まあ、あたしはルイーダってんじゃないんだけどね」
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