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第6章:ほら、あたくし、もう厚化粧じゃなくってよ!
第1話
しおりを挟む「ほらほら、カリラちゃん、しっかり歩いてくださいまし!」
「ふん。なによ…どうせ…どうせさ、あたしの事なんか…どうでもいいと思ってるでしょ。あ~あ。もうほっといてくれよ。本当にだるい。本当にいやだ。フトンにもぐって震えていたい。何もしたくない…何もしたくないんだ」
「キルホーマン、これって大丈夫なのかな?」
「まあ、これだけ喋れていれば、今のところは大丈夫でしょう。ただし、精神の病はとりかえしがつかない場合がありますから、常にカリラさんの言葉に耳を傾けるようにしてあげてください。要因がスキルの発動だとわかっていますので、一過性の状況だとは思いますが…」
「おい。やはり俺がその小娘の体を乗っ取ってやろうか。その方がその体のためになりそうだ」
「に…人形が…しゃべった…!? あたし、やっぱり心の状態が良くないんだね…。エレンの人形が、今、しゃべったような気がしたんだよね…」
「カリラちゃん、そのくだりは、また元気になった時にやってくださると助かりますわ」
「ふん。この先、小娘のためにゴブリンに腹話術をいちいち依頼するのは面倒だ。早く慣れさせるしかあるまい」
「ラフロイグさんは、ずいぶんとカリラちゃんの体に執着しますのね。そんなに女性の体が気になりますの?」
「へんっ! お前は人形のくせに、セクハラ野郎だよな」
「ほう。お前たちがそう思う理由について、俺には問いただす権利がありそうだ」
「まあまあ。ラフロイグさんってば、冗談はそのくらいでやめてあげてください。カリラは皆さんが思っているほど、気丈ではないんだと、ボクは思うんです」
「なるほど。メスガキは俺が冗談を言っていると思っているらしい。人形の体で動く事ができず、自身の生殺与奪を自由にできない苦しみをいずれ教えてやる必要がありそうだ。俺を持っているのがメスガキでなければ、いまごろ炭素の塊と化していただろう」
「そもそも、クサレ人形は自分の力で他人の体を乗っ取る事ができるのかよ? どうなんだよ? できないんだろう~?」
「面白い。ゴブリンよ、お前で試してみるか?」
「はいはい、ラフロイグさん、そのくらいでやめておきましょうよ。ラフロイグさんにはその能力がないから強がりを言えるんだって、ボクはわかってますからね」
「ふん。賢いガキは嫌いだ」
(そう言えばキルホーマン。病気が治って、エレンちゃんの寿命は、どのくらいになりましたの?)
(おや、やはり、それをきいてしまいますか?)
(だって…気になるじゃないですの。できるものなら、あんなにカワイイ男の子を転生させたくないですもの)
(そうですねえ…。まあ、カリラさんと子供を成して、添い遂げるに充分な寿命はある、とだけ言っておきましょうか)
(あら、キルホーマンは、お二人にそういう未来があると考えていますのね?)
(さあ、どうでしょう。それはお二人次第でしょうね。私は常に、誰かの幸せを願っていますよ)
(エレンちゃんには、寿命が延びた事を、もう伝えましたの?)
(時期が来たら、お伝えしますよ。今は『南のお告げ所』へ行くという共通の目的がありますからね)
「なあ、キルホーマン、次の街まではあとどのくらいなんだい?」
「もう、間もなくだと思いますよ。お昼までには到着できるでしょう」
「そうか、ありがとう。はやくカリラちゃんをベッドに横にしてあげたくってさ」
「うう…オジサン…ゴブリンにしては優しいんだね…」
「そんな状態なら、せめて人間に見えて欲しかったよな、まったく」
「あまり調子がよくなさそうであれば、いつでも足をとめて休憩の時間をつくりますから、ラガヴーリンさんはカリラさんの様子を引き続きお願いしますね」
「カリラちゃん、大丈夫かしら?」
「ラガヴーリンさんとポートエレンさんがついている限り、大丈夫でしょう」
「ならいいのですけど…。でも、『南のお告げ所』の場所がわかっていると思うと、少し気が楽ですのね」
「ええ。この旅も、残りもう何日も必要ないでしょう」
「そう…なんだか寂しい気もしますわね…」
「おや、お嬢様。それは現世への未練というものでしょうか」
「ま、まさか。あたくしは、自分の転生の目的も、動機も、ひと時だって忘れた事がなくってよ」
「私は、迷われる事を否定はいたしませんよ」
「違います。この旅の終わりに対して、寂しさを感じていたんですの。それよりも、次の街はどんなところですの?」
「ええと…。聞いたところによりますと、大きな博物館があるそうでして、そこが観光名所になっているそうです」
「博物館ですの? ずいぶんとアカデミックですのね」
「なんでも、数年前に展示が始まった『女神の遺骸』が大変人気だそうですよ」
「め…女神の遺骸…ですの? なんだか急にアカデミックでなくなりましたのね…。ミイラみたいなものかしら…ちょっと見るのに勇気がいりそうですのね…」
「ふん。なによ…どうせ…どうせさ、あたしの事なんか…どうでもいいと思ってるでしょ。あ~あ。もうほっといてくれよ。本当にだるい。本当にいやだ。フトンにもぐって震えていたい。何もしたくない…何もしたくないんだ」
「キルホーマン、これって大丈夫なのかな?」
「まあ、これだけ喋れていれば、今のところは大丈夫でしょう。ただし、精神の病はとりかえしがつかない場合がありますから、常にカリラさんの言葉に耳を傾けるようにしてあげてください。要因がスキルの発動だとわかっていますので、一過性の状況だとは思いますが…」
「おい。やはり俺がその小娘の体を乗っ取ってやろうか。その方がその体のためになりそうだ」
「に…人形が…しゃべった…!? あたし、やっぱり心の状態が良くないんだね…。エレンの人形が、今、しゃべったような気がしたんだよね…」
「カリラちゃん、そのくだりは、また元気になった時にやってくださると助かりますわ」
「ふん。この先、小娘のためにゴブリンに腹話術をいちいち依頼するのは面倒だ。早く慣れさせるしかあるまい」
「ラフロイグさんは、ずいぶんとカリラちゃんの体に執着しますのね。そんなに女性の体が気になりますの?」
「へんっ! お前は人形のくせに、セクハラ野郎だよな」
「ほう。お前たちがそう思う理由について、俺には問いただす権利がありそうだ」
「まあまあ。ラフロイグさんってば、冗談はそのくらいでやめてあげてください。カリラは皆さんが思っているほど、気丈ではないんだと、ボクは思うんです」
「なるほど。メスガキは俺が冗談を言っていると思っているらしい。人形の体で動く事ができず、自身の生殺与奪を自由にできない苦しみをいずれ教えてやる必要がありそうだ。俺を持っているのがメスガキでなければ、いまごろ炭素の塊と化していただろう」
「そもそも、クサレ人形は自分の力で他人の体を乗っ取る事ができるのかよ? どうなんだよ? できないんだろう~?」
「面白い。ゴブリンよ、お前で試してみるか?」
「はいはい、ラフロイグさん、そのくらいでやめておきましょうよ。ラフロイグさんにはその能力がないから強がりを言えるんだって、ボクはわかってますからね」
「ふん。賢いガキは嫌いだ」
(そう言えばキルホーマン。病気が治って、エレンちゃんの寿命は、どのくらいになりましたの?)
(おや、やはり、それをきいてしまいますか?)
(だって…気になるじゃないですの。できるものなら、あんなにカワイイ男の子を転生させたくないですもの)
(そうですねえ…。まあ、カリラさんと子供を成して、添い遂げるに充分な寿命はある、とだけ言っておきましょうか)
(あら、キルホーマンは、お二人にそういう未来があると考えていますのね?)
(さあ、どうでしょう。それはお二人次第でしょうね。私は常に、誰かの幸せを願っていますよ)
(エレンちゃんには、寿命が延びた事を、もう伝えましたの?)
(時期が来たら、お伝えしますよ。今は『南のお告げ所』へ行くという共通の目的がありますからね)
「なあ、キルホーマン、次の街まではあとどのくらいなんだい?」
「もう、間もなくだと思いますよ。お昼までには到着できるでしょう」
「そうか、ありがとう。はやくカリラちゃんをベッドに横にしてあげたくってさ」
「うう…オジサン…ゴブリンにしては優しいんだね…」
「そんな状態なら、せめて人間に見えて欲しかったよな、まったく」
「あまり調子がよくなさそうであれば、いつでも足をとめて休憩の時間をつくりますから、ラガヴーリンさんはカリラさんの様子を引き続きお願いしますね」
「カリラちゃん、大丈夫かしら?」
「ラガヴーリンさんとポートエレンさんがついている限り、大丈夫でしょう」
「ならいいのですけど…。でも、『南のお告げ所』の場所がわかっていると思うと、少し気が楽ですのね」
「ええ。この旅も、残りもう何日も必要ないでしょう」
「そう…なんだか寂しい気もしますわね…」
「おや、お嬢様。それは現世への未練というものでしょうか」
「ま、まさか。あたくしは、自分の転生の目的も、動機も、ひと時だって忘れた事がなくってよ」
「私は、迷われる事を否定はいたしませんよ」
「違います。この旅の終わりに対して、寂しさを感じていたんですの。それよりも、次の街はどんなところですの?」
「ええと…。聞いたところによりますと、大きな博物館があるそうでして、そこが観光名所になっているそうです」
「博物館ですの? ずいぶんとアカデミックですのね」
「なんでも、数年前に展示が始まった『女神の遺骸』が大変人気だそうですよ」
「め…女神の遺骸…ですの? なんだか急にアカデミックでなくなりましたのね…。ミイラみたいなものかしら…ちょっと見るのに勇気がいりそうですのね…」
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