上 下
1 / 1

おかんはおかんをおかんで‥‥

しおりを挟む
 


【鬼の霍乱かくらん


 おかんが風邪引いた。

 いっぺんも病気したことない健康優良オバンのおかんが、寝込んでもうた。

 これ幸いと、おかんの代わりに近所のおばはんと喋りまくる私。

「おかん、風邪引いてもうてな。アッハッハ。なんや、おかんが元気ないと、寂しいてあかんわ。早よ風邪治して、いつもの元気なおかんに戻ってほしいわ、ほんま。アッハッハ……」

「オッホッホ……ほんまやな。おかあはんの笑い声が聞けんと、なんや寂しいなぁ」




【口は重宝ちょうほう


「……おかん、おかゆができたで。チッとでも食べんと、風邪治らへんで。早よう、元気なおかんに戻ってや。具合はどないや?」

「……ぅぅぅ」

(クッ。静かなわが家や。この間に羽根を伸ばすか)




【鬼の居ぬ間に洗濯】


 居間にて、おとんと弟と三人で家族だんらん。

「ワッハッハ……。なんや知らんけど楽しいな。な?姉貴」

「ほんまやな。久しぶりにおとんの笑う顔見るで」

「そうか?なんや、一人おらんだけで、こんなに楽しいもんかいな。お前が作ったまずい飯もうまく感じるわ。ガッハッハ」

「俺もおとんと同感や。ワッハッハ」

「二人とも、ひとこと余計や。アッハッハ」




【百薬の長】


 翌朝。

「ウッヒッヒ。寝酒したら一発で治ったやんか。やっぱ、酒は百薬の長やで。ほんま。ほな、早速、井戸端会議に行ってくるで。ゲヘ」

 一変して、元気ありすぎのおかん。

 呆気に取られた顔で目を合わせる、おとんと弟と私。



【おかんは悪寒をお燗で】治して、あっという間に、元のおかんに戻ってもうた。

 静かなわが家は、一夜にして幻と消えた。




【泣きっ面に蜂】


「ヒィ~ックション!」

 あげく、おかんに風邪移された。

 おかんのパワーには誰も勝てへん。





 風邪さえも。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ほっぺの赤は夕日のいろ

紫 李鳥
児童書・童話
  さやかは今日も海に来ました。 夕日に染まる海が好きでした。

芍薬の寺

紫 李鳥
児童書・童話
和尚さんと子狐のお話。

【完結】三毛猫みぃのお家

たまこ
児童書・童話
三毛猫みぃと家族との、ちいさくて、やさしい日常。 ※『君たちへの処方箋』にて三毛猫みぃ再登場しています

魔王の飼い方説明書

ASOBIVA
児童書・童話
恋愛小説を書く予定でしたが 魔界では魔王様と恐れられていたが ひょんな事から地球に異世界転生して女子高生に拾われてしまうお話を書いています。 短めのクスッと笑えるドタバタこめでぃ。 実際にあるサービスをもじった名称や、魔法なども滑り倒す覚悟でふざけていますがお許しを。 是非空き時間にどうぞ(*^_^*) あなたも魔王を飼ってみませんか? 魔王様と女子高生の365日後もお楽しみに。

あわてんぼう パパ

hanahui2021.6.1
児童書・童話
あたしは、パパと2人ぐらし。 だから、【あたしが しっかりしなくちゃ!】って頑張ってるんだけど…。

夜更かしな天使さま

雨宮大智
児童書・童話
冬のある晩、十才の少年シンクの元を天使さまが訪れました。その日から、シンクは天使さまと語らうようになったのです。「お休みなさい、天使さま」「お休み、シンク」眠りのベッドの中で語られる、シンクと天使さまの心温まるファンタジー。

おねしょゆうれい

ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。 ※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。

小さな王子さまのお話

佐宗
児童書・童話
『これだけは覚えていて。あなたの命にはわたしたちの祈りがこめられているの』…… **あらすじ** 昔むかし、あるところに小さな王子さまがいました。 珠のようにかわいらしい黒髪の王子さまです。 王子さまの住む国は、生きた人間には決してたどりつけません。 なぜなら、その国は……、人間たちが恐れている、三途の河の向こう側にあるからです。 「あの世の国」の小さな王子さまにはお母さまはいませんが、お父さまや家臣たちとたのしく暮らしていました。 ある日、狩りの最中に、一行からはぐれてやんちゃな友達と冒険することに…? 『そなたはこの世で唯一の、何物にも代えがたい宝』―― 亡き母の想い、父神の愛。くらがりの世界に生きる小さな王子さまの家族愛と成長。 全年齢の童話風ファンタジーになります。

処理中です...