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2 アッ!網棚に珍獣がっ!

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 今回は、【チキエリ】さんからご提供いただいたエピソードをベースに脚色しています。

 チキエリさん、ありがとう♪

 この珍事件をお浜ばあさんはどう処理するのか、お手並み拝見と参りましょう! 





 本日は、生憎の雨模様。それでもお浜さんは140円の旅に出掛けます。

 帰りは隣駅の大塚か駒込で降りて、巣鴨まで歩きます。腰は曲がっていても、健脚の持ち主。一駅ぐらいの距離なら平気で歩きます。

 そして、巣鴨の駅前のスーパーで食料を調達して帰宅すると言うのがいつものパターン。

 アンブレラステッキの傘はピンクのチューリップ柄。長靴もお揃いのチューリップ柄で、なかなかのオシャレさんだ。

「……あれれ、今日はやけにいとるのう」

 いつも乗る車両が余りにもガラガラなのを、お浜さんは不可思議に思ったようだ。

「空き過ぎたのは雨ちゃんのせいよ~♪か?」

 と、歌いながら乗った途端、

「ニャオーっ!」

 網棚から猫の鳴き声が。見上げると、網棚の上に包まった小柄な男が威嚇いかくするようににらんでいた。

「ああ、びっくらこいた。こんなとこに猫がいるとは思いもせんわい。どうしたんじゃ、そんなとこに上って。鼠に追われたんか?」

「ニャーニャー」

 男は大きく首を振って否定した。

「じゃ、降りてきなさいな。お話しでもしましょうよ」

「ニャニャニャーっ!」

 男は威嚇するように歯を剥くと、爪を磨ぐ仕種と共に、襲い掛かる格好をした。

「なんか、凶暴そうな猫じゃな。ワンワン!」

 お浜さんは犬の真似をして、吠えた。

「ニャーニャーニャーっ!」

 男も負けじと鳴いた。

「ワンワンワン!」

 お浜さんも吠えた。

 車両の一番端に固まっていた乗客たちから笑いが起こった。

「ニャニャニャーッ!」

「ウーーー!ワンワンワンッ!」

 お浜さんの方が優勢かと思いきや、

「ううっ」

 突然、お浜さんはうなり声を上げると、優先席に後退りし、座席に仰向けに倒れた。

 そして、ジーパンを穿いた脚を大きく広げると、手すりに片足を載せ、ステッキを持った手と共に、チューリップ柄の長靴を履いた足を、痙攣けいれんしているかのように激しく揺らした。

「…く、く、狂おしい」

 お浜さんは片手で胸を押さえると、苦しそうにあえいだ。

「あっ、おばあちゃんが大変だ。救急車、救急車!」

 隅っこの乗客たちがそう言いながら集まってきた。

「ど、どうしよう……」

 網棚から降りてきた猫男が心配そうに声を漏らした。

「おばあちゃん、大丈夫ですか?」

 乗客の一人が声を掛けた。

 途端、お浜さんはすくと上半身を起こすと、

「ああ、苦ちかった。わしが優先席に座る理由は足腰が悪いのもあるが、心臓が弱いのもあるんじゃ。いくら矍鑠かくしゃくとして見えるからと言って、内面の病気までは見えんじゃろ?」

 とペラペラ喋り、猫男をさとした。

「どうも、すいませんでした」

 猫男は深々と頭を下げた。

「おばあちゃん、すいませんでした。僕たちも仲間です。実はサークルの罰ゲームやってたんです。本当にすいませんでした」

 仲間だと言う若い男が謝った。

「今回の罰ゲームはいただけんが、網棚猫さんの度胸には恐れ入谷の鬼子母神おそれいりやのきしぼじんだわさ」

「アハハ……」

 皆が笑った。



 連中が降りると、お浜さんは早速、ティータイムを満喫した。

「ん~、オイチイ。一日一善。善い事をするとカフェオレが旨いね~。ゲヘッ」
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