8 / 12
自白
しおりを挟む「岩崎が吐いたぞ」
「え?」
渡辺は言葉の意味が飲み込めない様子だった。
「一部始終を見ていたそうだ。犯行の」
「エッ!……そんな筈は」
(!……そんな筈は?)
簡単に落ちた。渡辺は白状したも同然だった。
「そんな筈はないと言うのか?どうしてだ」
「……鼾を掻いてたし……」
「ぐっすり眠っていると思ったのか?」
「……はい」
途端、渡辺は青菜に塩のようになった。
「どうして、殺したんだ?」
「……姐さんのことが好きでした」
(!……)
「社長が死ねば、姐さんと一緒になれると思い――」
「原口の女房と関係があるのか!」
努は、怒ったような口吻で渡辺を睨んだ。
「いいえ。俺の片想いです」
その言葉に、努はホッとすると少年のような安堵の表情を浮かべた。
「たかが片想いで、原口を殺したのか?」
「姐さんに自分の気持ちを打ち明けて、もし、そのことが社長に知られたら殺されるかもしれない。そう思うと、姐さんを自分の物にしたくても、告白できなかった。社長さえ居なければ天国なのに。そう思うと、社長が邪魔で仕方なかった。
そんな時、チャンスが訪れた。あの日は、朝から土砂降りだった。今夜しかない。腹を決めると、予定していた段取りを復習しました。夕食後に、事務所のソファーでテレビを観ながら酒を飲むのが、社長の日課でした。そして、酔うとソファーで寝る癖も知ってました。
……布団の中でパジャマの釦を外すと、岩崎の兄貴が寝付いた頃を見計らって部屋を出ました。事務所のドアを開けると、案の定、テレビを点けっ放しで社長が鼾を掻いていました。
予めパジャマのポケットに忍ばせておいたゴム手袋を嵌めると、紐をポケットから出して、仰向けになった社長の首に巻き、思い切り絞めました。社長は首に手をやると、足をバタバタさせて、うーっ!と唸り声を上げました。が、雨音が何もかも掻き消してくれてる筈だ。そう信じて、俺は躊躇なく更に力を込めました。
社長が動かなくなったのを確認すると、パジャマと下着を脱ぎ、真っ裸になると、庭側の窓を開け、庭の隅に用意しておいたスコップで穴を掘りました。社長を引き摺って埋めた後、シャワーで体を洗うと、下着とパジャマを着て、浴室までの廊下と事務所の床を拭きました――」
「殺害方法は自分で考えたのか?」
「……いいえ。……姐さんから」
(……やっぱりか)
「原口の女房も共犯か?」
「いいえ!姐さんは関係ありません。姐さんから聞いた殺人事件の手口を真似ただけです」
「殺人事件?」
奈津が二十年前の殺人事件の話をしたのだろう。だが、真犯人でなければ手口は知り得ない。益々、奈津への疑惑が深まった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クアドロフォニアは突然に
七星満実
ミステリー
過疎化の進む山奥の小さな集落、忍足(おしたり)村。
廃校寸前の地元中学校に通う有沢祐樹は、卒業を間近に控え、県を出るか、県に留まるか、同級生たちと同じく進路に迷っていた。
そんな時、東京から忍足中学へ転入生がやってくる。
どうしてこの時期に?そんな疑問をよそにやってきた彼は、祐樹達が想像していた東京人とは似ても似つかない、不気味な風貌の少年だった。
時を同じくして、耳を疑うニュースが忍足村に飛び込んでくる。そしてこの事をきっかけにして、かつてない凄惨な事件が次々と巻き起こり、忍足の村民達を恐怖と絶望に陥れるのであった。
自分たちの生まれ育った村で起こる数々の恐ろしく残忍な事件に対し、祐樹達は知恵を絞って懸命に立ち向かおうとするが、禁忌とされていた忍足村の過去を偶然知ってしまったことで、事件は思いもよらぬ展開を見せ始める……。
青春と戦慄が交錯する、プライマリーユースサスペンス。
どうぞ、ご期待ください。
量子迷宮の探偵譚
葉羽
ミステリー
天才高校生の神藤葉羽は、ある日突然、量子力学によって生み出された並行世界の迷宮に閉じ込められてしまう。幼馴染の望月彩由美と共に、彼らは迷宮からの脱出を目指すが、そこには恐ろしい謎と危険が待ち受けていた。葉羽の推理力と彩由美の直感が試される中、二人の関係も徐々に変化していく。果たして彼らは迷宮を脱出し、現実世界に戻ることができるのか?そして、この迷宮の真の目的とは?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる