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公爵令嬢様はお持ち帰りする 過去編
開けれない?…ならば壊しましょう。
しおりを挟むアリシアは彼がここから出られないようにされていることに瞬時に怒りを覚えた。
「こんなこと許されるもんですか!」
突然大きな声を出しからか鉄格子の向こう側が震えた。
「ああ!ごめんなさい」
彼女はできるだけ労わるようにその手を撫でた。
「開けれない…ならば壊しちゃいましょう!」
この時の彼女は格子の向こう側にいるものが何かも、それに伴うしがらみもなにもかも考えていなかった。
のちにある人物が
「昔から無茶するんスよね、でも…そこがマジで可愛いというか、バカだけど可愛いんス、内緒っス」
それを聞いていた彼女が記録していて、事あるごとにニマニマしているなんて彼は知らない。
アリシアはある液体を取り出した。
それは物を溶かすのに必要なもので少量持ってきていた。
先ほどの鍵を開けることができないときに物理的に溶かしちゃおうという無茶なことをするためである。
本来は時間をかけてそれとなく腐食させて行くときに使ったりするものだが、今回はそんなこと言ってられない。
ニンマリと挑戦的な顔をその鉄格子にむける。
「不可能を可能にするのが錬金術よっ!残念ながら障害がある方がもえるんだから!!」
「うぅ…」
格子の向こう側の手をそっとなで付ける。
「大丈夫よ、私にまかせてね!少し離れてくれる?あなたにこの液体がかかったら火傷しちゃうから」
理解しているかどうかわからないけれども、彼女はできるだけ優しい声音でいう。
安心させるように。
理解したのか、その小さな手は、暗闇に消えた。
アリシアはホッとした。
助けたい相手を火傷させては本末転倒だからだ。
アリシアは手の大きさから向こうの人間の大きさを計っていた。
自分より小さめ…ならば格子を数本ほど溶かしてしまえば充分だろう。
全体にかけるのではない。
ピンポイントでかけるのだ。
そうしなければ彼女のもつ液体はすぐになくなってしまう。
そうなれば助けることもできなくなる。
そこまで瞬時に計算していた。
「あとは私が力一杯押せばなんとかなるでしょ」
液体をかけてしばらく待つ。
液体の特有の匂いの中に鉄の匂いが混じってきた。
「いまだ!」
自分の荷物を背中から下ろし彼女は力一杯ふりまわした
「いけええええ!」
令嬢らしからぬその言葉は普段使わないけれども、力を入れるには必要だった。
ガキンッ!!
その鈍い音はアリシアにたしかな手応えを感じさせた。
勢いづいた彼女は繰り返す。
どこにその力があったのかはわからない。
ただ、その場の勢いで彼女は格子を折ったのだ。
ゼーハーゼーハー肩で息をする彼女。
その先には、動けずにいる小動物のような人であった。
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