令嬢様のおなーりー!

悠木矢彩

文字の大きさ
上 下
21 / 24
公爵令嬢様はお持ち帰りする 過去編

幼子の手 1

しおりを挟む


鉄格子を握りしめている手は自分と同じくらいの短い指だった。それは自分より細く指先だった。爪はボロボロになり、皮膚が剥がれていた…



「血っ!!!」


アリシアは手を取る。とっさに引っ込めようとしたその手をアリシアは離さなかった。


「あなた!手を怪我しているの!?」



もがく手。必死で振り払おうとする。その間も「うぅ!」と呻き声を上げるその主。


「ちょっと!あなた!じっとしなさいな!大丈夫よ。手当ての心得ぐらいあるわ」


少し苛々した声でいう。
しかし、アリシアはふと手当ての仕方を教えてくれた騎士の言葉を思い出した。

「こちらが興奮してはいけません。怪我をした者の興奮を誘ってはなりません。あくまで冷静になってくださいね。」

それを思い出したアリシアは手をそっと撫でる。あくまで擦らずにそっと触れるように。



「ごめんなさい、あなたの手が心配なのよ。あまりにも痛そうだから…」


そう言ってアリシアは相手が落ち着くようにと思いながら摩った。どうか手当てをさせてくれるようにと。


それが功を奏したのか鉄格子の中で暴れていた者が暴れるのをやめた。
アリシアはこの者の手当てをしようと手当ての準備をするためにそっと手を離した。

応急処置用のグッズも持ち歩いていた彼女は、準備が整ってから再度そっとその手を握った。

「ごめんなさい、痛いかもしれないし、しみるかも。でもまずは消毒しないと。」


そう言ってアリシアは持っていた水で手を洗い流した。
ビクっと一瞬動いたがの手はなすがままであった。

消毒液は染みたのか「うぅ!!」と強く拒否を示したが、彼女をその手を離さなかった。

「これをしないと傷がもっと酷くなるってきいたの」


治るように治るようにと祈りながら彼女は手当てをする。
指の一本一本を丁寧に手当てを施す。

先ほどから「うぅ」しか言ってないが意思の疎通ができるのだな思った。


そうこうしているうちに手当てが完了した。



「できた!!」


彼女は手当てが出来たことに達成感を味わった。







しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

もうすぐ、お別れの時間です

夕立悠理
恋愛
──期限つきの恋だった。そんなの、わかってた、はずだったのに。  親友の代わりに、王太子の婚約者となった、レオーネ。けれど、親友の病は治り、婚約は解消される。その翌日、なぜか目覚めると、王太子が親友を見初めるパーティーの日まで、時間が巻き戻っていた。けれど、そのパーティーで、親友ではなくレオーネが見初められ──。王太子のことを信じたいけれど、信じられない。そんな想いにゆれるレオーネにずっと幼なじみだと思っていたアルロが告白し──!?

ひとりぼっちの令嬢様

悠木矢彩
恋愛
その周囲は少女に対してあまりにも無関心だった。 アイコンはあままつ様のフリーイラストを使用させていただきました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか

サクラ近衛将監
ファンタジー
 レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。  昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。  記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。  二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。  男はその未来を変えるべく立ち上がる。  この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。  この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。    投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。

[連載中]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ@異世界恋愛ざまぁ連載
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

処理中です...