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公爵令嬢様はお持ち帰りする 過去編
幼子の手 1
しおりを挟む鉄格子を握りしめている手は自分と同じくらいの短い指だった。それは自分より細く指先だった。爪はボロボロになり、皮膚が剥がれていた…
「血っ!!!」
アリシアは手を取る。とっさに引っ込めようとしたその手をアリシアは離さなかった。
「あなた!手を怪我しているの!?」
もがく手。必死で振り払おうとする。その間も「うぅ!」と呻き声を上げるその主。
「ちょっと!あなた!じっとしなさいな!大丈夫よ。手当ての心得ぐらいあるわ」
少し苛々した声でいう。
しかし、アリシアはふと手当ての仕方を教えてくれた騎士の言葉を思い出した。
「こちらが興奮してはいけません。怪我をした者の興奮を誘ってはなりません。あくまで冷静になってくださいね。」
それを思い出したアリシアは手をそっと撫でる。あくまで擦らずにそっと触れるように。
「ごめんなさい、あなたの手が心配なのよ。あまりにも痛そうだから…」
そう言ってアリシアは相手が落ち着くようにと思いながら摩った。どうか手当てをさせてくれるようにと。
それが功を奏したのか鉄格子の中で暴れていた者が暴れるのをやめた。
アリシアはこの者の手当てをしようと手当ての準備をするためにそっと手を離した。
応急処置用のグッズも持ち歩いていた彼女は、準備が整ってから再度そっとその手を握った。
「ごめんなさい、痛いかもしれないし、しみるかも。でもまずは消毒しないと。」
そう言ってアリシアは持っていた水で手を洗い流した。
ビクっと一瞬動いたが彼の手はなすがままであった。
消毒液は染みたのか「うぅ!!」と強く拒否を示したが、彼女をその手を離さなかった。
「これをしないと傷がもっと酷くなるってきいたの」
治るように治るようにと祈りながら彼女は手当てをする。
指の一本一本を丁寧に手当てを施す。
先ほどから「うぅ」しか言ってないが意思の疎通ができるのだな思った。
そうこうしているうちに手当てが完了した。
「できた!!」
彼女は手当てが出来たことに達成感を味わった。
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