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公爵令嬢様は発明好き
友人
しおりを挟む「本当!これで眠れるのね!!」
そう言って破顔したご令嬢はソナタ・デル・シアスタ侯爵令嬢である。
アリシアとソナタは幼馴染でアリシアの錬金術を面白いと笑い飛ばしてくれる器の大きい人物である。
以前レイモンドはソナタ嬢からきいたことがある。
「アリシアはアリシアだからいいのよ。
最初はね、錬金術なんか怪しいと思ってたし、犯罪に巻き込まれたら…とも思ったけど、彼女を見ている限りそれはないって思ったのよ。何より実験に成功しても失敗しても彼女楽しそうでしょ?見ているこちらが楽しくなるわ」
そう言って微笑んでいた。
アリシアの純粋な笑顔。それは貴族の令嬢として年月を経ればなくなるもであるが、アリシアはそうではなかった。
それが、社交界で疲れたソナタ嬢の心を癒していたとレイモンドはきいて、「うちのお嬢がねぇ…」と思った。
「ええ、ソナタ!これであなたの眠れないというストレスから解放されるわ!レイモンドで実験したから間違い無いわ。中毒性の無いもので作ってあるからね」
キラキラした目で話す2人の令嬢。
「けど、どうして眠れなくなったの?」
ふと疑問に思ったのか、アリシアが質問する。
ソナタは、一つため息をついてから
「婚約者候補の話よ…王太子殿下の婚約者候補に選ばれるかもしれないって…」
「ひえええ!ソナタすごいじゃない!」
カチャとカップをソーサーに戻す。
「候補だからたくさんいるわけよ。その中に、あのレイチェルもいるのよ」
「あーレイチェルねぇ…」
レイチェル・カールトン侯爵令嬢はその苛烈な性格と緋色の髪から炎の令嬢と呼ばれている。
あまりつけられたく無い名前だが…
事あるごとにアリシアを陥してくるのも彼女だ。
本来ならあるまじきことであるが、社交界では見て見ぬ振りをされている。
アリシアはアリシアで抗議しないのでそれがまた助長させている悪循環である。
本人は至って気にしていないから余計に煽るのである。
「レイチェルは自分がすでに婚約者と決定したような口ぶりで話しているの。
私は婚約には全然興味はないけど、会うたびにそれで突っかかってくるものだから辟易しているのよ。会うの嫌だなって思うと眠れなくなって…」
「完全にストレスね…」
はぁっとため息をつく2人のご令嬢。
「あの…」
そばに控えていたレイモンドが口をだす。
本来ならば無理だがこのご令嬢たちはあまり気にしない質だった。
「なあに?レイモンド」
アリシアはレイモンドを見る。
こてんと首を傾げながら。
「はい…それって“あなたはきっと眠くなーる君”を使っても根本の解決にならないんじゃ…」
「そうなのよねえ、私も思ったわ。レイチェルをどうにかしないとよね…」
うーんと唸るアリシア。
ソナタはそんなアリシアを見る。
「ねぇ、アリシア。あなたも一回お茶会に出ない?」
「「え?」」
アリシアとレイモンドの声が重なった。
「公爵令嬢が候補じゃないことがそもそもおかしくない?あんなのが王妃になったら国は傾くわ。一回どんなものか様子見るためにも出て欲しいの!」
「無「無理無理無理。ソナタ嬢!分かって言ってますか?申し上げますけど、本当にこのお嬢様は人に興味がなくてただただ錬金術しか頭に入ってこない人ですよ?そりゃ外見は整えればそれなりですが、お茶会ぶっ壊しますよ!!」
アリシアが断る前に、レイモンドが息継ぎせずに答える。
「そんなに言うことないじゃない!」
アリシアが立ち上がる。
「ソナタ!いいわよ!行くわ!ソナタをいじめるなんて許せないわ!」
「ありがとう!アリシア!早速招待状手配するわね!」
無造作に束ねた髪が揺れる。
アリシアは久し振りに社交界に顔を出すことにした。
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