19 / 20
侍女マリアの日記
10
しおりを挟む
「まぁ!とても素敵な場所ですね。」
と大きい声ではないですがはしゃぐリネージュ様の声が聞こえます。
「よかった、君がそう言ってくれるなら、安心だな。」
ランバート殿下は少しホッとしたような口調で答えられます。
「はい、日差しが当たりすぎずとても素敵だと思います。こちらは落葉樹でしょうか?もし冬場だと少し寒いかもしれませんが、葉が落ちるのであれば、また冬も趣が違って、少しの間でしたらこちらで過ごせるのかなとも思います。」
「そうか、落ちる葉とそうでない葉か…庭師はその辺うまくやってくれていると思うが確認しておこう。冬も外でお茶会をしたりするのか?」
「あまりされないと思いますが、こちらの施設の特徴的にやはり部屋でずっといると気が滅入る場合もあるかと考えます。そういったときに気分転換の一つとして、冬でも少しの時間寒さ対策をして外で過ごすのもいいんじゃないでしょうか?」
「なるほど。私は寒い日に外でお茶を飲んだりしないから考えたことがなかったな。」
「寒い日の空気がシンとした中でお茶を飲むのも楽しいものですよ。」
「なるほど、少しは冬が楽しみになるな。」
私はこの会話をきいて、ひたすらドキドキするだけでした。
いつ切り出すのだろうか、和やかな会話が続きます。
そんななかふとリネージュ様がこう言われました。
「冬のお茶会…といっても私一人でお茶を飲んでただけなのですが、その冷たい空気の中で見る空には
一枚の布のような雲が広がっていまして…それを見ているとすべてを覆い隠してくれるんではと眺めていた次第です…」
クロス家でのことを思い出されたのでしょうか、その顔には幾許かの寂寥感を滲ませておりました。
「そうか…。」
すこしシンとした空気になり、それぞれ一口、紅茶に口を付けられました。
「レディ・アントレット」
おもむろにランバート殿下が口を開かれました。
「はい?」
「少し尋ねたいことがあるんだが…これは答えたくなかったらいいんだが…。」
「いえ、大丈夫でございます、何でございましょう?」
「君はクロス侯爵にもう一度会えるとしたらどうする?」
「…え?」
「君の個人的な情報は…すまないこちらで患者の大体の情報は知っているんだ。先ほどの表情を見てて、もし会えるとしたらどうするのかなと…個人的なことを聞いてしまったな。」
「…そうですね…。」
どのくらい時間が経ったのでしょうか、もしかしたらそれほど時間はたっていないのかもしれません。
私は待ち続けるしかありません。
リネージュ様の答えが自分の考えと違ったとしても…
はぁ…
と大きく息を吐かれたリネージュ様はその顔をランバート殿下に向けられました。
「会いません。」
ただ一言シンプルにリネージュ様は言われました。
と大きい声ではないですがはしゃぐリネージュ様の声が聞こえます。
「よかった、君がそう言ってくれるなら、安心だな。」
ランバート殿下は少しホッとしたような口調で答えられます。
「はい、日差しが当たりすぎずとても素敵だと思います。こちらは落葉樹でしょうか?もし冬場だと少し寒いかもしれませんが、葉が落ちるのであれば、また冬も趣が違って、少しの間でしたらこちらで過ごせるのかなとも思います。」
「そうか、落ちる葉とそうでない葉か…庭師はその辺うまくやってくれていると思うが確認しておこう。冬も外でお茶会をしたりするのか?」
「あまりされないと思いますが、こちらの施設の特徴的にやはり部屋でずっといると気が滅入る場合もあるかと考えます。そういったときに気分転換の一つとして、冬でも少しの時間寒さ対策をして外で過ごすのもいいんじゃないでしょうか?」
「なるほど。私は寒い日に外でお茶を飲んだりしないから考えたことがなかったな。」
「寒い日の空気がシンとした中でお茶を飲むのも楽しいものですよ。」
「なるほど、少しは冬が楽しみになるな。」
私はこの会話をきいて、ひたすらドキドキするだけでした。
いつ切り出すのだろうか、和やかな会話が続きます。
そんななかふとリネージュ様がこう言われました。
「冬のお茶会…といっても私一人でお茶を飲んでただけなのですが、その冷たい空気の中で見る空には
一枚の布のような雲が広がっていまして…それを見ているとすべてを覆い隠してくれるんではと眺めていた次第です…」
クロス家でのことを思い出されたのでしょうか、その顔には幾許かの寂寥感を滲ませておりました。
「そうか…。」
すこしシンとした空気になり、それぞれ一口、紅茶に口を付けられました。
「レディ・アントレット」
おもむろにランバート殿下が口を開かれました。
「はい?」
「少し尋ねたいことがあるんだが…これは答えたくなかったらいいんだが…。」
「いえ、大丈夫でございます、何でございましょう?」
「君はクロス侯爵にもう一度会えるとしたらどうする?」
「…え?」
「君の個人的な情報は…すまないこちらで患者の大体の情報は知っているんだ。先ほどの表情を見てて、もし会えるとしたらどうするのかなと…個人的なことを聞いてしまったな。」
「…そうですね…。」
どのくらい時間が経ったのでしょうか、もしかしたらそれほど時間はたっていないのかもしれません。
私は待ち続けるしかありません。
リネージュ様の答えが自分の考えと違ったとしても…
はぁ…
と大きく息を吐かれたリネージュ様はその顔をランバート殿下に向けられました。
「会いません。」
ただ一言シンプルにリネージュ様は言われました。
755
お気に入りに追加
3,769
あなたにおすすめの小説
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。

愛してしまって、ごめんなさい
oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」
初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。
けれど私は赦されない人間です。
最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。
※全9話。
毎朝7時に更新致します。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる