最初に抱いた愛をわすれないで

悠木矢彩

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元夫視点

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コチコチと時計の音がやけに大きく聞こえる…


「…いつから?」


僕の言葉にゼン医師が顔を上げる。

「…いつから彼女は病気だったんだ?」


「…私から申し上げることはできません。」

「なぜだ?」

「レディ・アントレットはすでにこの家との関係を絶たれています。これ以上私が申しあげることはできません。」


ゼン医師の表情は本当にこれ以上僕にリネージュのことを話すつもりはないという決意に染まっていた。


「わかった。この情報だけでも僥倖だ。感謝する。話は以上だ。」


「…かしこまりました。しかし侯爵様。」


「なんだ?」


「この情報をもったとして一体どうされるのでしょうか?」



ゼン医師は本当にわからないらしく、戸惑っていた。



「…手紙を送るだけだ。」











ゼン医師を帰した後、マルコを呼んだ。


「お呼びでしょうか?。」


「手紙を書く。」


「はい、どなた宛でしょうか?」


「隣国にいる、リネージュ・アントレット伯爵令嬢だ。」



そう告げるとマルコは驚いた表情をする。


「ア、アレク様それは…」

「なんだ、何か問題でも?…お前知っていたな?」


「…知っていたとしてもこの情報にどのような価値がおありでしょうか?」

「なに?」


「貴方様は奥様…いえ、リネージュ様に離婚を言い渡されました。そのあとでお探しになっている様子も、もちろん私は知っております。ただ、私としてはリネージュ様が治療する上で憂いになってはいけないと思い…」

マルコはやはり知っていたんだな。
僕がリネージュを探しているのを知っているにも関わらず…


「お前には僕が滑稽に見えていたことだろう、リネージュを取り戻そうとするのがそんなにいけないことかい?」


僕はリネージュを愛しているんだ。なのにマルコは僕の気持ちをわかろうとせず隠してまでいたなんて!!


「リネージュ様のお気持ちはアレク様に向いていますか?今はまだ連絡を取るべきではないと愚考いたします。」


「今はとりあえず、会って話すべきだろう!病気のこともある。見舞いに行くのがそんなに悪いことか??」


「では、まずお会いできるのかをその医療に携わる方にどうか確認なさいませ。ご病気のこともあります、行ったとて面会を断られれば無駄足になりますので」

「ふん、わかった。とりあえず手紙をだそう」



そうして僕は、マルコに言われた通り、医療関係者に手紙を出した。


手紙の内容は

まず僕がリネージュ・アントレットと婚姻関係があったこと。
病気の進行状況。
僕とリネージュがちょっとした行き違いで離婚したこと。
その件についてどうか話し合いたいこと。


などを書いた…そう、何通も書いたけれども…答えは




病気を理由に合わせることは不可


という返事だった。
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