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元夫視点
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しおりを挟む翌朝を待って、大至急ゼン医師を呼んでもらった。
ゼン医師が来るまでの間、僕は部屋の中をウロウロしていた。
とてもじゃないが落ち着かなかったのだ。
待つのは僕にとっては苦痛でしかなかった。
そんな中、ドアがノックされた。
「侯爵様、お呼びでしょうか?」
大至急といったからなのだろう、彼は額に汗をにじませていた。
「すまない、そこにかけてくれ。…ゼン医師にどうしても確認したいことがあった。」
「何でございましょうか?」
僕はゼン医師が向かいに座ったのを確認しながら、例の女性のデータを彼に見せた。
「これだ、この女性のことを教えてほしい。」
ゼンは少しデータに目を通したのちに答えた。
「申し訳ありません、この女性…だけでなく治験の患者については名前など漏らさないようにとのことなのです。」
「それはなぜだ?ここまで詳細に書かれているものだ。今更ではないのか?」
「いいえ、マリリス病を患っていることを知られたくない患者もいるので、名前などは分からないようになっています。」
確信を得たいと思うのに、すり抜けられる。
焦ってはだめだと理性が警告する。
「では、質問をかえよう。ゼン医師はこの女性に会ったか?」
その質問をしたときに確かにゼン医師は目を見開いたのだ。
「その表情は会ったということか。ならばこの女性は見知った女性だったか?」
「そ…それは…」
ゼン医師は困ったような表情をしていた。
間違いない。僕は確信をもってゼン医師に再度質問をした。
「この女性の特徴で、僕が知っている女性はただ一人だ。ゼン医師、もう一度訊ねる。
このデータの女性はリネージュ・アントレット伯爵令嬢だな?」
ゼン医師は観念したかのように深いため息をついた。
「その通りでございます、侯爵様。」
やはり…やはりそうか…
やっと見つけた。
リネージュ…
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