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元夫視点
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しおりを挟む伯爵家を追い出された僕はリネージュの友人たちに彼女の行方を尋ねようと思った。
しかし、わかったのは、彼女の交友関係を僕は知りもしなかった。
自分の屋敷の執事のマルコに恥を忍んで尋ねた。
「マルコ…リネージュの交友関係を知っているだけ書き出してほしい」
普段感情を露わにしない彼が渋面を作っていた。
「旦那様、リネージュ様をお探しするのはおやめください。あの方との縁はすでに切れております。私たちはリネージュ様より最後の指示をうかがっております…」
「なんだと…?そ、それはなんだ?!!」
「旦那様の…愛する人を女主人として迎えることと…」
ダン!!
僕は書斎の机を力いっぱい叩いた。
「いない!そんなのは居ないんだ!!と、とにかく彼女は実家にも帰っていなかった!!一度は縁を結んだ仲だ!心配くらいしていいだろう!!」
「いいえ!いいえ!結んだ縁を切ったのは旦那様です!それを今更つかもうとなさらないでください」
マルコの言葉が胸に剣のように刺さった。
確かに僕から言ったのだ。
彼女は親族や周囲の声に傷ついていたのにさらに僕は追い打ちをかけたのだ。
だからこそ謝りたいのだ。
彼女に謝ってもう一度やり直したいと思っているのだ。
「とにかく!!リネージュの交友関係を書き出してくれ!!頼む!!」
僕はマルコに頭を下げた。
本来、貴族ならそうやすやすと頭を下げるべきではない。
しかし、僕は必死だった。
「……決してリネージュ様の御心をかき乱さないでください。あの方は…」
「すまない!…ありがとう」
説得に応じてくれたことに喜んでいた僕は、マルコの言葉を気に留めていなかった。
残念ながら、彼女の交友関係からは何も情報を得られなかった。
彼女は、離婚したことも告げていなかった。勿論、旅行とも言ってなかった。
それでも僕が尋ねたことで、一部の御友人方からは激しい咎めの言葉を受けた。
「子ができないと悩んでいた彼女に追い打ちをかけるとは!!鬼畜の所業です!!」
そうだ、親族や周囲の人間から言われた言葉に傷ついていた。
僕の親も彼女の親も早く子供をとせかさなかった。
二人だけの時間を楽しんだらいいと。
善良な言葉をもらっていた。
それでも、周囲の悪意はその優しい言葉をかき消した。
自分の弱さのゆえに逃げてしまった。
リネージュから目を逸らしてしまった。
そしてレイラに癒しを求めてしまった。
でもリネージュは?彼女は何が癒しだったのだろう…僕が守らなければならなかったのに…
結局、彼女の情報は何一つ得られないままだった。
打つ手なしの中…我が侯爵家の主治医をしているゼンから申し出があった。
「隣国に少しの間行きたいのです。もちろん業務のほうは弟子に任せることになりますが…」
「隣国…?何かあるのか?」
書斎での業務中に彼はやってきた。
「ええ、最近難病と言われている病の治験が始まったのです。解析された資料、情報、論文などが公開されるのです。
国に持ち帰ってこようと思います」
「その病とはなんだ?」
「マリリスという病気です。ご存知でしょうか?」
「ああ…あの病気は死に至る病であろう?」
「そうです、初めに倦怠感を感じ始め、徐々に体の節々に痛みが生じ、それが全身にまわり死に至ります。
もっとも…痛みから逃げるために自殺する方が多数でありますが…それが今回薬が発明されたのです」
「なるほどな、ならば行ってその情報を持ち帰るといい」
「有難うございます!しばし留守にいたします」
そう言ってゼン医師は退室していった。
そういえば、リネージュは出ていく間際に、彼に診察されていたな…
君は今はどこにいるのだろうか…
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