お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩

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呆れが宙返りする

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私の父は2人を睨みつけておりました。

「私は貴族の婚姻について思うことがあるが、百歩譲って愛人を持つことは血統を残す上で必要だと仮定しよう。しかし、私の愛娘がこんなに人として見下されているのは黙っておれん」


普段温厚な父が静かに言いました。
父は正しく私の現状を把握してくださいました。


「何を言ってるの!?人として見下したりしてないわ!マレーネちゃんを大事にしてたのよ!」


「そう言って報告書には随分ひどい目に遭っていることが書かれているが?」


「それは…!アクラムが悪いわ!よく躾けるから!ねえマレーネちゃん戻ってきて!じゃないとこんな終わり方私は納得しないわ」

サシリア様の表情はある種の狂気に取り憑かれているようです。
目が血走り私に掴みかかろうとしているところを父が立ちはだかっているので近づけないのです。

「サシリア様…私をくださるのは嬉しく思います。しかしながら、私は…私の中ではアクラム様への愛は無くなってしまいました。」


「そんな我儘!貴族の女として恥ずかしくないのか!?」

ルーベルト様が私に向かって叫んできました。


恥ずかしい…ではアクラム様やあなた達は?
私だけが我慢しないといけないのでしょうか…?



「貴族の女…だと?今あなた達が娘に言っていることも、その息子であるアクラムがやっていることも恥ずかしくないというのか?」

父の有様は怒りで熱気が出るようです。
兄も私の手を握ってくていますが力が入っております。
私は家族に確かに愛されています。ここまで父達に守ってもらって嬉しく思います。侯爵家では私の味方はいなかったですので、その有り難みが余計にわかります。


私はもう一度意思を伝えます。


「私の意思は変わりません、離縁してください。私の貴族としての評判は落ちるかもしれません、でも私は現実を知った今、ここにいることはできません。私は死んだように生きるのが嫌になりました。」

そう2人に告げると父の手がふわっと頭を撫でていました。



「よく言った、流石私とアリーセ我が最愛の妻の子だ!」


父は私の顔みて満足気な笑顔でした。
ノルトハイム夫妻に向いたときの声はとても静かでした。

「ルーベルト…サシリア…私はあなた方と友人関係を築けていると勘違いしていたのだな。とても悲しい…アリーセにも申訳がない。残念ながら今後一切ノルトハイム家との交流はないものとする」


「「そんな!!」」


そして父が静かに頭を下げたのです。


「お願いだ、まだ、あなた達が私を友人だと思うのなら、娘の離縁を了承してくれ。マレーネから聞く限りアクラムはまともに取り合わないのだろう?」

私のわがままに父を巻き込んでしまいました。私は父に頭を下げさせてしまったことに心が痛みました。


「だめよだめよ!!いやよ!離縁になんてさせないわ!!」



サシリア様が叫びます。


「貴方たちちゃんと私が思い描いている物語の通りに動いてくれればいいのよ!離縁なんてそんな恥ずかしいことましてやそんな最後だなんて納得いかないわ!!!」
















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