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第一章
プロローグ
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幸せなはずな婚約披露宴がなぜこんなことになったのか、リーゼロッタにはわからなかった。
今日のために作られた真っ白でふわふわなドレスは、所々血で汚れている。
回りには石を持った人達が、恐れたような表情で、或いは激昂して、もしくはニヤニヤと笑いながら、『魔女』が嬲り殺されるのを待っている。
「あれは、魔女だ」
「あいつが裏切ったんだ」
人々は口々に罵しりながら、石をなげ、髪を引っ張り、ドレスを引きちぎった。
「やめて、やめて。私、魔女なんかじゃない」
声の限り叫んだが、誰もその声に耳を貸そうとはしない。
それどころか、恰幅の良い男に背中を蹴られ、一瞬息が出来なくなる。
なんでこんな目に合うのだろう。とリーゼロッテは思った。
今まで、聖女として国に尽くして来たはずだった。
国に疫病が発生したときなどは、自分の命をかえりみずに、病に苦しむ人々を治療したこともあった。
だけどそのときは例え死んでも良いとさえ思ったのに、今は死ぬのがこんなにも怖くてたまらない。
ああ、身体中が痛くて堪らないわ。
でも、それよりも……。
リーゼロッタがふと目線を上げると、人混みの奥に一組の男女が仲睦まじげに寄りそっていた。
二人はこんな状況だというのに、笑顔さえ見せてとても幸せそうでこちらを見ようともしない。
(幸せになれると思ったのに。どうして? どうしてなの? アルフォンスさま……)
リーゼロッタの意識は絶望と共に、永遠の闇の中に沈んで行った。
今日のために作られた真っ白でふわふわなドレスは、所々血で汚れている。
回りには石を持った人達が、恐れたような表情で、或いは激昂して、もしくはニヤニヤと笑いながら、『魔女』が嬲り殺されるのを待っている。
「あれは、魔女だ」
「あいつが裏切ったんだ」
人々は口々に罵しりながら、石をなげ、髪を引っ張り、ドレスを引きちぎった。
「やめて、やめて。私、魔女なんかじゃない」
声の限り叫んだが、誰もその声に耳を貸そうとはしない。
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