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第1話 転生、そして目の前に推し
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『やったー!ついに手に入れた…!』
私、天童雅は待ちに待ったリリアのフィギュアを抱きしめ、心の中で歓喜の声を上げる。
彼女は私が愛してやまない異世界恋愛小説の負けヒロイン、リリア・ベルトラン。
ちょっとドジっ子で、控えめで自信がない彼女だけれど、何事にも全力、一生懸命でとても愛おしくて可愛らしい。
彼女を推し続けてきた私としては、この新作フィギュアを手に入れた瞬間、まさに天にも昇る気持ちだった。
私はアニメショップにて手に入れたリリアのフィギュアを手に持ち、まだ帰り道の途中ではあるが開封し、端から端までその細部を眺めていた。
リリアの表情がまたいい!
少し恥ずかしそうに笑うその顔は、まさに彼女らしい。私の部屋の推しスペースに、まるで宝物のように飾る準備は万端。
ちゃんと今日手に入れたリリアを置くためのスペースを確保しておいた。
家に帰ったら、すぐにフィギュアケースの一番前に飾って、毎日拝む生活が始まるんだ……。
そんな妄想にふけりながら、私はニヤニヤしながら歩いていた。
こんなニヤニヤしながらふらついているやつを見たらヤバいやつだと思われるに違いない。でもそれでも良い!私にはリリアがいるからなっ!はははっ!
私はこの時無敵状態だった。なんでも出来そうな。空だって飛べそうな、そのまま天にも登れそうな勢いだった。
そしてそんな私の目の前はリリアのフィギュアでいっぱいだ。どうやら私は、推しを愛でることに夢中になりすぎていたようで…。
「えっ、うそっ!? え、ちょ、車…?」
目の前に迫ってくる巨大な影。次の瞬間、私はその影に飲み込まれた。
天童雅20歳。
私は天に昇った。
******
「…いたたた…。ここは…?」
目を覚ますと、見慣れない場所に横たわっていた。
青い空にそびえ立つ白い城壁、遠くには煌びやかな宮殿の尖塔。まるで、ファンタジー小説の中に迷い込んだような景色が広がっている。
いや、ここは見なれた景色だ。
「あれ?私、さっきまで道路に…?」
混乱しながらも体を起こすと、目の前には見知らぬ服装の少女たちが私を見つめていた。
その中の一人、くるくる巻き髪の金髪の少女が、私に声をかけてくる。
「エリー、大丈夫?どうしたの、ぼーっとして……?」
「え……リ、リリア……?ええええっ!?」
私に話しかけてきたのは、目の前にいるのは、まさに私の推し、紛れもなくリリア・ベルトランだ。
──え、まじ……!?
あのフィギュアと同じ、いや、フィギュアを超えるリアルな美しさ。ふんわりとした巻き髪、少しドジっぽい笑顔…間違いない、私のリリアだ!
「ど、どうして推しが目の前にいるの!?いや、むしろどうして私がここにいるの!?」
頭が混乱してパニックになる。だが、私はすぐに自分の服装に気がつく。これは…エリーの服装?いやいや待って、エリーってもしかして、物語の中の親友キャラの…?
「え、私、エリーになってる…!?」
車に跳ねられて死んだのかな。
ここは死後の世界なのか。
そこは分からないがとりあえずそんなことは置いておいて今は推しが目の前にいる幸せを全力で噛み締めるぞっ!!!
──兎にも角にも、私はリリアの親友ポジションであるエリーに転生していたのだ!これは…まさかの展開すぎる!
だが、そんな私の頭の中はすぐに別のことでいっぱいになる。
待って、待って、落ち着け私。これってつまり、リリアと毎日一緒にいられるってこと…?それってもしかして、推しのために何でもできるってこと!?
私はその事実に心の中でバンザイして喜んだ。それはそれは喜んだ。
やがて、私はこの異世界転生がただの運命ではないことを理解する。
リリアは負けヒロイン。物語の中では王子様を正ヒロインに取られてしまう。でも、今の私はエリーだ。リリアの親友として彼女を支えることができるのだ。
そうだ、これは神様が私に与えてくれたチャンス…いや、使命だ!推しのリリアを絶対に幸せにしてみせる!
心の中で決意を固めた私は、リリアに満面の笑みで言った。
「ううん、なんでもないよ、リリア!これから一緒に頑張ろうね!」
リリアがキョトンとした表情で首をかしげる。それもまた可愛い。
「うん、ありがとう、エリー。何だか急に元気になったみたいだね。」
私は彼女のその笑顔を見てさらに確信した。推しのためなら何だってやってやる!
リリア、君を絶対に正ヒロインにしてみせるからね!
私、天童雅は待ちに待ったリリアのフィギュアを抱きしめ、心の中で歓喜の声を上げる。
彼女は私が愛してやまない異世界恋愛小説の負けヒロイン、リリア・ベルトラン。
ちょっとドジっ子で、控えめで自信がない彼女だけれど、何事にも全力、一生懸命でとても愛おしくて可愛らしい。
彼女を推し続けてきた私としては、この新作フィギュアを手に入れた瞬間、まさに天にも昇る気持ちだった。
私はアニメショップにて手に入れたリリアのフィギュアを手に持ち、まだ帰り道の途中ではあるが開封し、端から端までその細部を眺めていた。
リリアの表情がまたいい!
少し恥ずかしそうに笑うその顔は、まさに彼女らしい。私の部屋の推しスペースに、まるで宝物のように飾る準備は万端。
ちゃんと今日手に入れたリリアを置くためのスペースを確保しておいた。
家に帰ったら、すぐにフィギュアケースの一番前に飾って、毎日拝む生活が始まるんだ……。
そんな妄想にふけりながら、私はニヤニヤしながら歩いていた。
こんなニヤニヤしながらふらついているやつを見たらヤバいやつだと思われるに違いない。でもそれでも良い!私にはリリアがいるからなっ!はははっ!
私はこの時無敵状態だった。なんでも出来そうな。空だって飛べそうな、そのまま天にも登れそうな勢いだった。
そしてそんな私の目の前はリリアのフィギュアでいっぱいだ。どうやら私は、推しを愛でることに夢中になりすぎていたようで…。
「えっ、うそっ!? え、ちょ、車…?」
目の前に迫ってくる巨大な影。次の瞬間、私はその影に飲み込まれた。
天童雅20歳。
私は天に昇った。
******
「…いたたた…。ここは…?」
目を覚ますと、見慣れない場所に横たわっていた。
青い空にそびえ立つ白い城壁、遠くには煌びやかな宮殿の尖塔。まるで、ファンタジー小説の中に迷い込んだような景色が広がっている。
いや、ここは見なれた景色だ。
「あれ?私、さっきまで道路に…?」
混乱しながらも体を起こすと、目の前には見知らぬ服装の少女たちが私を見つめていた。
その中の一人、くるくる巻き髪の金髪の少女が、私に声をかけてくる。
「エリー、大丈夫?どうしたの、ぼーっとして……?」
「え……リ、リリア……?ええええっ!?」
私に話しかけてきたのは、目の前にいるのは、まさに私の推し、紛れもなくリリア・ベルトランだ。
──え、まじ……!?
あのフィギュアと同じ、いや、フィギュアを超えるリアルな美しさ。ふんわりとした巻き髪、少しドジっぽい笑顔…間違いない、私のリリアだ!
「ど、どうして推しが目の前にいるの!?いや、むしろどうして私がここにいるの!?」
頭が混乱してパニックになる。だが、私はすぐに自分の服装に気がつく。これは…エリーの服装?いやいや待って、エリーってもしかして、物語の中の親友キャラの…?
「え、私、エリーになってる…!?」
車に跳ねられて死んだのかな。
ここは死後の世界なのか。
そこは分からないがとりあえずそんなことは置いておいて今は推しが目の前にいる幸せを全力で噛み締めるぞっ!!!
──兎にも角にも、私はリリアの親友ポジションであるエリーに転生していたのだ!これは…まさかの展開すぎる!
だが、そんな私の頭の中はすぐに別のことでいっぱいになる。
待って、待って、落ち着け私。これってつまり、リリアと毎日一緒にいられるってこと…?それってもしかして、推しのために何でもできるってこと!?
私はその事実に心の中でバンザイして喜んだ。それはそれは喜んだ。
やがて、私はこの異世界転生がただの運命ではないことを理解する。
リリアは負けヒロイン。物語の中では王子様を正ヒロインに取られてしまう。でも、今の私はエリーだ。リリアの親友として彼女を支えることができるのだ。
そうだ、これは神様が私に与えてくれたチャンス…いや、使命だ!推しのリリアを絶対に幸せにしてみせる!
心の中で決意を固めた私は、リリアに満面の笑みで言った。
「ううん、なんでもないよ、リリア!これから一緒に頑張ろうね!」
リリアがキョトンとした表情で首をかしげる。それもまた可愛い。
「うん、ありがとう、エリー。何だか急に元気になったみたいだね。」
私は彼女のその笑顔を見てさらに確信した。推しのためなら何だってやってやる!
リリア、君を絶対に正ヒロインにしてみせるからね!
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