悪役令嬢に転生したので私は自ら破滅を目指す〜悪行を重ねているはずなのにどんどん周りからの視線が優しくなるのは何故だろうか〜

第9話 ついに破滅！……と思ったのも束の間

──私はずっと「破滅」を望んできた。

エドワード殿下と手を組んだことで、私の評価はますます高まり、国の未来を導く存在として期待されるようになってしまった。

そんなもの、私には何の意味もない。ただ、破滅したいのだ──それだけが私の願い。

「どうすれば、破滅できるの？」

何度も自問してきた。
どんなに策略を練っても、どんなに悪事を働こうとしても、私の行動はなぜか「善行」として解釈され、周囲の評価が上がるばかりだった。

けれど、ついに私は一つの答えを見つけた。

演説の場で、大きな失態を犯す──。

エドワードに近づいたことにより開かれた私にとっての希望への道だ。

エドワード殿下が自らの支持を固めようと計画している次の大演説。
その場で、私は彼の意向を無視して、自分から「破滅」を迎えるのだ。
大勢の貴族や高官たちが見守る中で、私は自らの評判を地に落とし、すべてを台無しにする。これが最後のチャンスだ。



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そして、ついにその日がやって来た。王宮の大広間には、王国中の重要な人物たちが集まり、エドワード殿下の演説を待っていた。
彼はこの夜を利用して、さらに自分の地位を固めようとしているが、私にとっては破滅を実現する絶好の機会だった。

「セシリア様、今夜は私たちにとって非常に大切な夜です。貴女の支えに感謝していますよ。」

エドワード殿下は私に優しく微笑みかけたが、私はその言葉に何の感情も抱かず、ただ自分の計画に集中していた。
──今夜、私は全てを終わらせる。

演説が始まる直前、私はゆっくりと席を立ち、壇上に向かった。会場中の視線が私に集まるが、気にしない。むしろ、それが私の破滅への道だと感じていた。
レッツ破滅。



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「──皆様、少し私にお時間をいただけませんか？」

私は大きな声で呼びかけ、エドワード殿下の演説を中断させた。
彼は驚いた表情を見せたが、私はそのまま言葉を続けた。

「ここでお伝えしたいことがあります……私は、自らの無能さを認めます！ 私は王宮にふさわしい存在ではありません！」

会場がざわめき始める。私は意図的に言葉を選び、どれだけ自分がこの場に相応しくないかを語り続けた。

「私は数々の失態を犯してきました！ 今この場で、すべてを認めます！」

さらに、私は目の前のテーブルに置かれたグラスを倒し、ワインをこぼした。

まるで自分が失態の象徴であるかのように振る舞い、貴族たちに不快感を与えるように行動した。
より不快に、より嫌悪感を抱かせて。

「私こそがこの国の恥です！ この場にいる価値などありません！」

場内は完全に混乱に陥った。

貴族たちは呆然とし、エドワード殿下は青ざめた顔で私を見つめていた。私はそれを見て、確信した──ついに破滅を迎えることができると。
私は一人その冷たい視線を浴びて自分の中で歓喜していた。

「これで、すべてが終わった……。私の破滅が完成した…！」

私はその場にへたり込むように座り込み、笑みを浮かべながら自分の敗北をかみしめた。



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私の失態があまりに大きく、王宮の一大イベントを完全に台無しにしたため、エドワード殿下はその場で激怒した。

演説が中断されたこと、貴族たちの前での恥辱。

彼の野望が今夜大きく損なわれたことに、彼は怒りを隠せなかった。

「セシリア、貴女は何をしているのか！？」

エドワード殿下は私に詰め寄り、冷たい目で私を睨みつけた。

その怒りの声に、私はただ満足感に浸っていた。これで私の破滅は確定だ。



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その後、すぐに私は処罰を受けることが決まった。

エドワード殿下は私を辺境に追放し、下民として生きることを命じた。貴族としての身分を失い、何もかもを失った存在として生きることになる。

「下民として、辺境の地に追放……！ これこそ、私が望んでいた破滅だ！」

私は内心で歓喜した。ついに私は完全に破滅したのだ。これからは貴族でもなく、誰からも期待されない存在として、静かに生きていける。破滅の喜びが胸に広がり、私は笑いを堪えきれなかった。
私の勝利だ！！！



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追放が決まったその夜、私は自室で荷物をまとめながら、破滅の余韻に浸っていた。
あの演説での私を見る冷たいいく千もの視線。そしてエドワードの罵倒。そして王国追放。

辺境の地で、下民として過ごす日々が楽しみでならなかった。しかし、その喜びも束の間、次の日には状況が一変していた。

「セシリア様、少しよろしいでしょうか。」

突然、数名の貴族が私のもとを訪れ、奇妙な噂を持ちかけてきた。なんだなんだ？

どうやら、話を聞くと私が晩餐会で犯した失態が、ただの「無能さ」や「失敗」ではなく、もっと深い意味があるのではないかという憶測が広がっているというのだ。

「実は、セシリア様があの失態をわざと犯したのは、エドワード殿下の陰謀を暴くためだったのではないか、という話が広がっています。」

──えっ……？ 陰謀……？

驚く私に、貴族たちはさらに続けた。

「エドワード殿下が裏で何かを企んでいたという噂があり、それに気づいたセシリア様が自らの評判を犠牲にして彼を阻止したのではないか、と……。」

──いやいやいや、そんなの、全然知らない！ エドワードの企み？なんだそれ？

私はただ、破滅したかっただけなのに…！

まさかの展開に私は動揺した。破滅を迎えるために必死で行動した結果、なぜか私は「エドワードの企みを暴き、自己を犠牲にすることでその企みを強引に食い止めた英雄」。そのように見られ始めていた。




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その噂は瞬く間に広がり、次第にエドワード殿下への疑惑が高まっていった。彼が裏で国を操ろうとしていたという憶測が強まり、私の「犠牲的な行動」は称賛されることに。結果、私は追放を取り消されることになった。

「セシリア様は国を救った立派な方だ。」

「彼女はエドワード殿下の野望を阻止するために自らを犠牲にしたんだ。」

──違う、そんなことじゃない！ 私はただ破滅したかっただけなのに…！

追放は取り消され、私は国民や貴族から感謝される存在となった。
破滅するはずだったのに、結果として私は再び賞賛される立場に戻ってしまった。

「どうしてこうなるの……？ 破滅できない……！」

破滅の喜びは一瞬で消え、私は再び悔しさと絶望に包まれていた。
泣いていいですかね。トホホ。