悪役令嬢に転生したので私は自ら破滅を目指す〜悪行を重ねているはずなのにどんどん周りからの視線が優しくなるのは何故だろうか〜

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第1話 悪役令嬢に転生した、破滅しよう

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 目が覚めた瞬間、見知らぬ天井が目に飛び込んできた。

 ベッドの上に寝そべり、周囲を見回すと、豪華な家具やカーテンが視界に広がっている。あまりに異質で夢のような空間だが、ふと自分の手に目をやり、驚くほど小さくて可憐な手が目に入った。

「あれ? 私……誰?」

 まるで鏡を見るように、自分の顔が思い浮かばない。だが、不思議と記憶はある。
 ここは、なんと乙女ゲームの中。

 しかも、私が転生しているのは……悪役令嬢! 

 ゲームの中でヒロインをいじめ抜き、最後には破滅を迎える運命のキャラクターだ。

 普通の人なら、そんな運命を避けるために、なんとか悪事を犯さず、無事に生き延びたいと思うのだろう。だが……私は違う。

「破滅……! なんて素晴らしい響き! これぞ私が待ち望んでいた運命よ!」

 ──そう、何を隠そう、私はドM。

 痛みも屈辱も私にとっては快楽であり、破滅こそ私の至高のご褒美なのだ。

 この転生した新しい世界では、もはや何のためらいもない。私はこの悪役令嬢として、堂々と破滅の道を突き進む!

「まずは、どうしよう、ヒロインをいじめなくちゃ!」

 私はその日から、ゲームで用意された悪役令嬢の役割に従い、ヒロインである庶民出身の美少女、リリィ・エバンズを徹底的にいじめ抜くことを決意した。

 彼女はどんなに泣いても周囲に守られ、私は次第に悪名を高めていく。そして、破滅ルートがやってくるのだ。

 ──だが、何かがおかしい。

 私がリリィに無理難題を押し付けても、彼女は嫌な顔ひとつせず、むしろ私を慕うようにまでなってきた。
 そして周囲も、私の悪事を咎めるどころか、なぜか私に微笑みかけてくるのだ。

「え? どうして誰も私を罰しないの?」

 本来なら、私はどんどん悪役として孤立し、罵られ、最後には追放されるはずだった。

 それなのに、まるで私の悪行が誰にも伝わっていないかのように、周囲は寛大な態度で接してくる。これでは、私の大切な破滅が訪れないじゃない!

「こんな…こんなはずじゃないわ! 私はもっと酷い目に遭いたいのに!」

 破滅に向けて順調に進んでいるはずが、なぜか誰も私を罰してくれないどころか、褒められたり、優しくされたりする状況に私は大きな戸惑いを感じ始めていた。

 このままでは楽しめない! 
 どうしたら、私の望む破滅が手に入るのか?

「ああ……もっと罰を……もっと追い詰められたいのに!」

 心の中で絶叫しながら、私はさらに過激な悪事を働こうと決意した。
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