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A田〜優等生〜

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A田:先生、私の悩みを聞いて下さい。

E崎:なんだね? 優等生で、これといって問題のないA田さん。

A田:先生、セリフが、メタです。

E崎:気にするな。それで、悩みというのは。

A田:それが、なにが悩みなのか、よく分からないまま悩んでるんです。

E崎:それは、由々(ゆゆ)しき問題だな。

A田:由々しいですか?

E崎:ああ、いますぐ、「由々しくて」という曲を作りたいくらいだ。

A田:先生、顔面、白塗りしますか?

E崎:それは、さすがに、ちょっと、抵抗あるな。

ト書き:間

A田:面談にて

ト書き:間

E崎:俺が言ったパーツを切り取って、バリを取って、渡してくれるか?

A田:断ってもいいですか?

E崎:もちろん断ってもいい。どうする?

A田:考えさせて下さい。

E崎:いいよ。

ト書き:間

A田:やっぱりお断りします。

E崎:そうか……。まぁ、そのイスに座ってくれ。

A田:はい。

E崎:で、これから少し話をするんだが、話をしながら、俺が言ったパーツを切り取って、バリを取って、渡してくれるか?

A田:え? 私、さっき、それ、お断りしましたよね?

E崎:うん、もう一度頼んでる。

A田:はぁ。

E崎:やってくれるか?

A田:分かりました。

E崎:じゃあ、頼む。

A田:先生?

E崎:なんだ?

A田:なんで、2度目、頼んだんですか?

E崎:ん~? 一度目の断りに迷いがあったし。

A田:迷いがあったし?

E崎:なんていうか……、断ることに、心苦しさを感じているようだったから。

A田:……先生、そういうのを、「つけこむ」というのではないでしょうか?

E崎:……あるいは、そうかもな。

ト書き:間

E崎:すれ違いざま

ト書き:間

A田:先生、私が、何に見えますか?

E崎:「暴れ狂う龍」

A田:え?

E崎:すまん。冗談だ。

A田:冗談だったんですか? 残念です。

E崎:ん?

A田:いえ、私の求めていた答えに近かったもので。

E崎:ああ、なるほど。

A田:はい?

E崎:冗談ではあるが、でたらめではないんだぞ。

A田:えっ?

E崎:そうだな。「品行方正(ひんほうこうせい)な暴れ狂う龍」に訂正しよう。

A田:それ、矛盾してませんか?

E崎:いやぁ? ルールやマナーを守って、正しく暴れ狂うことなら可能だよ。

A田:ルールやマナーを守ってたら、「暴れる」ことはできても、「狂え」なくないですか?

E崎:ルールやマナーのことを考えてるようじゃ、本当には狂ってないってことか? それは、そうだが、計算された狂気でも、人は十分恐怖するし、商品として売れるのは、計算された狂気だけだ。

A田:……え? もしかして、先生って、すべて、計算してるんですか?

E崎:イエイエ、ワタシハ、クルッテナド、イマセンヨ?

ト書き:間

A田:面談にて2

ト書き:間

A田:私、よく、まわりから、「真面目」っていわれるんです。

E崎:……自分のことを、「真面目」っていうやつは、たいてい、ろくなやつじゃないイメージが……。

A田:私が私のことを真面目と言っているんじゃなくて、周囲の人間が、私を評して「真面目」と言うという話をしています。

E崎:分かった、分かった。でも、「真面目」「普通」「優しい」なんて、よく知らない相手への無個性な誉め言葉じゃないのか?

A田:相変わらず無神経ですね、先生。

E崎:ん? こういうのが、ご所望(しょもう)じゃなかった?

A田:求めてなかったとは言いませんけど、やっぱり、言われると、腹が立つんです。

E崎:じゃあ、どうして欲しいの?

A田:それ、聞いたらダメなやつです。

ト書き:間

A田:すれ違いざま2

ト書き:間

E崎:A田、今回のテスト、頑張ったな。

A田:頑張ってません。頑張ってないのに、結果だけ良かったんです。

E崎:悪かったなぁーーーーーーーーっ! 考えが浅くて、悪かったなぁーーーーーーーーっ!

A田:えっ? 先生、なに、キレてるんですか?

E崎:ごめんごめん。でも、おまえも、そこは、「ありがとうございます」で、良くない?

A田:いえ、頑張ってませんから。

E崎:頑張ってないのに、評価されるとか、嫌いだよな、おまえ。

A田:はい。

E崎:で、頑張ったのに、結果が悪い時に、頑張りだけ評価されるのも、嫌いだろ?

A田:はい。

E崎:損してない?

A田:それでも、結構、褒(ほ)められてます。

E崎:え? なんですか? 自慢ですか?

ト書き:間

A田:係り決め

ト書き:間

E崎:係り決まらねーなぁ。

A田:先生、私、やりま……。

E崎:やらんでいい!

A田:はい?

E崎:さっきから、チラッチラッ聞こえてくる、「A田さんで良くない」って声に負けんな!

A田:別に、そういう……。

E崎:だいたい、「で」って、なんだ? 「で」って?

E崎:「晩御飯、何がいい?」

E崎:「ハンバーグでいいよ」

E崎:ハンバーグに失礼だぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!

E崎:今の場合はA田に失礼だ。

A田:先生!

E崎:なんだ?

A田:私をハンバーグと同列に扱うのは失礼だと思います。

E崎:あ、そこ、ツッコみます?
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