1 / 6
D原〜いじめ〜
しおりを挟む
E崎:で、相談っていうのは?
D原:私、いじめられてるんです。
E崎:誰に?
D原:え? 先生、いきなり、それ、聞くんですか?
E崎:ん? 俺、なんか、手順、間違えた?
D原:まず、いじめの内容を聞いて、で、私が、勝手にいじめと思い込んでないか? とか、確かめないんですか?
E崎:へー、そんなこと、したりするもんなんだ。おまえ、詳しいなぁ。
D原:いや、先生、大丈夫ですか? 中学の時は、そうでしたよ。
E崎:そうなんだ。で、誰にいじめられてるんだ?
D原:あの、私の話、聞いてました?
E崎:なんだっけ?
D原:はーーーー (深いため息)、B山とC川です。
E崎:あいつらかぁ。
D原:え? あっさり信じるんですか?
E崎:え? 何? いちいち?
D原:だって、あいつらの方が、先生たちに信用されてそうだから。
E崎:え? そうなの? 俺、あんまり上手く他の先生たちとコミュニケーション取れてないから、他の先生たちの評価とか知らん。
D原:あの……、先生、大丈夫ですか?
E崎:それは、どういう意味での、「大丈夫」だ?
D原:えーっと、いろいろと、諸々(もろもろ)です。
E崎:だいたいは大丈夫と思いたい。
D原:願望なんですか?
E崎:まぁ、俺の話はいいから、お前の話をしろよ。
D原:はい……、聞いて下さい。
ト書き:間
A田:次の日の昼休み
E崎:あー、聞いてくれ! 今日から、俺は、毎日、昼休みはこの教室で、ガンプラを組み立てるけど、気にするな!
B山:先生! すさまじく気になります!
E崎:え? そう?
C川:っていうか、意味が分かりません!
E崎:ほら? 小学校とかだと、昼休みも先生が教室にいて、一緒に給食たべるよね?
A田:そうですね。
E崎:それと、同じだよ。
A田:「同じ」と言われても、共通点が見つけられないレベルなんですけど?
E崎:忖度(そんたく)してくれ。
B山:無理です!
E崎:大したことじゃねーじゃん?
C川:僕らの安らぎの時間を奪わないで下さい。
E崎:いやいや、存分に安らいでもろて。
C川:だから、先生がいたら無理です。
E崎:なーんで? 俺がいたら出来ないような安らぎ方でも、してんのかなぁ?
B山:はぁ? それ、どういう意味ですか? 先生?
E崎:そーいう意味だよぉ。「いじり」と「いじめ」みたいなビミョーなやつだよ。
A田:「介入」ですか?
E崎:解釈は個人の自由だ。
B山:親に言って、学校にクレーム入れてもらおう。
E崎:入れてもろてー。俺の評価なら、これ以上、下がりようがないから。B山君。
C川:勤務時間中にガンプラ作ってるって、管理職にチクるぞ。
E崎:チクってもろてー。管理職には、「必要があって、玩具(がんぐ)・プラモデルなどを持ち込みます」と言ってあるから。C川君。
A田:先生、そういうのは、詐欺まがいというのでは?
E崎:グレーゾーンはセーフなんだよ。
B山:え? あんたが、それ、言っちゃうの?
C川:ダメでしょ?
E崎:とにかく、俺は、毎日、昼休み、教室でガンプラを組み立てる!
ト書き:間
A田:その日の放課後
D原:先生、なんで、ガンプラなんですか?
E崎:んー? じゃあ、何のプラモデルがいいんだ?
D原:そうじゃなくて! そこじゃなくて! なんで毎日、昼休みに教室でガンプラを組み立てることにしたんですか?
E崎:いや、主に、嫌なことをされるのは、昼休みなんだろ?
D原:そうですけど?
E崎:で、ちょっと調べたんだけど、B山とC川って、昼休みは教室以外に行き場所ないみたいだ。
D原:そうなんですか?
E崎:まぁ、他では、サッパリ、威勢(いせい)が悪いらしい。
D原:はぁ。
E崎:だから、おまえが、別の場所に連れて行かれて、いじめられる心配はないと思っていいぞ。
D原:はあ……、はぁっ? だから、教室に張り付くことにしたんですか?
E崎:まぁ、大まかには、そんなところだ。
D原:はあ……、で、なんでガンプラ?
E崎:それは、趣味だ。
ト書き:間
A田:さらに、翌日の昼休み
B山:おい、D原、おまえ、E崎に何か、言ったんじゃねぇだろうな?
C川:ことと次第(しだい)によっちゃあ……。
E崎:ビコ――――――ン!
A田:先生? なんか、今、先生の頭の毛の一部が、束(たば)になって立ちましたけど?
E崎:説明しよう! これは、「いじめアンテナ」だ! 半径20メートル以内にいじめを感知すると、「ビコ――――――ン!」の音とともに立つのだ!
B山:いや、先生、口で「ビコ――――――ン!」って、言ってるし。
C川:左手でなんかスイッチ押してるの丸見えだし。
E崎:そういうのは、着ぐるみのチャックと一緒で、見えても見えないことにしろよ。
A田:先生、そんなもの、どこで売ってるんですか?
E崎:売ってるわけねぇだろ? 作ったんだよ! 秋葉原に行って、呼び込みのメイドさんには目もくれずに、パーツを買い集めて、自分で作ったの!
B山:え? いじめを感知すると立つとか。
C川:スイッチは見えないとかの設定は?
E崎:ごほん……、これは、「いじめアンテナ」……。
A田:先生、それ、もう、いいです。
ト書き:間
A田:さらに、翌日の昼休み
E崎:B山とC川! こっち、来い!
B山:なんすか?
E崎:いいから、来い!
C川:なんなんすか?
E崎:おまえら、どうせ、アレだろ? 写真撮って「勤務時間中にガンプラ作ってる教師」とか言って、ネットに上げる気なんだろ?
B山:そうですよ。
C川:文句あるんですか?
E崎:大アリだぁーーーーーーっ! そんな遠くから撮った写真でズゴックのカッコよさが伝わるとでも思ってんのかぁ?
B山:はい?
E崎:そんな遠くから撮ったんじゃ、ズゴックのカッコ良さが伝わらねぇ、って言ってるんだよ!
C川:意味が分かりません。
E崎:いいか? 現役教師が勤務時間中に堂々とガンプラ作ってる写真だよ! 当然のことながら、バズるだろう! ならば、ズゴックのカッコ良さを布教せんで、どうするね?
B山:そこなんですか?
E崎:そこだよ? まさに、そこだよ? ジャスト、そこだよ?
C川:他に、言うことは、ないんですか?
E崎:実は、ある。貸せっ!
B山:あ、俺のスマホ。
E崎:やーっぱりなぁ。
C川:なんですか?
E崎:写真にGPS情報が付く設定になってるじゃねーか。
B山:え?
E崎:おまえ、特定されちゃうよぉ?
C川:そんな、俺たちなんか、特定したって……。
E崎:バズったら、注目浴びるんだよ?
B山:あ。
E崎:あとな、遠くから撮ったら、誰かが写り込むかも知れねーだろ? 顔が写り込まなくても、制服から、ウチの学校が特定されるかもな?
C川:あの、それ、ガチで、ズゴックより大事なことなんじゃ……?
E崎:ズゴックを馬鹿にするな!
ト書き:間
D原:それからも、E崎先生は、毎日、昼休みは教室でガンプラを組み立て続けた。私と、B山、C川の関係は、目に見えて改善するわけではなかったが、とりあえず、落ち着いてお弁当が食べられるのは、助かっている。
ト書き:間
D原:先生、ありがとうございます。
E崎:え? 何が?
D原:いえ、先生だって、昼休みは職員室で休みたいでしょうに。
E崎:あ? 俺、職員室に、居場所ないけど?
D原:先生?
D原:私、いじめられてるんです。
E崎:誰に?
D原:え? 先生、いきなり、それ、聞くんですか?
E崎:ん? 俺、なんか、手順、間違えた?
D原:まず、いじめの内容を聞いて、で、私が、勝手にいじめと思い込んでないか? とか、確かめないんですか?
E崎:へー、そんなこと、したりするもんなんだ。おまえ、詳しいなぁ。
D原:いや、先生、大丈夫ですか? 中学の時は、そうでしたよ。
E崎:そうなんだ。で、誰にいじめられてるんだ?
D原:あの、私の話、聞いてました?
E崎:なんだっけ?
D原:はーーーー (深いため息)、B山とC川です。
E崎:あいつらかぁ。
D原:え? あっさり信じるんですか?
E崎:え? 何? いちいち?
D原:だって、あいつらの方が、先生たちに信用されてそうだから。
E崎:え? そうなの? 俺、あんまり上手く他の先生たちとコミュニケーション取れてないから、他の先生たちの評価とか知らん。
D原:あの……、先生、大丈夫ですか?
E崎:それは、どういう意味での、「大丈夫」だ?
D原:えーっと、いろいろと、諸々(もろもろ)です。
E崎:だいたいは大丈夫と思いたい。
D原:願望なんですか?
E崎:まぁ、俺の話はいいから、お前の話をしろよ。
D原:はい……、聞いて下さい。
ト書き:間
A田:次の日の昼休み
E崎:あー、聞いてくれ! 今日から、俺は、毎日、昼休みはこの教室で、ガンプラを組み立てるけど、気にするな!
B山:先生! すさまじく気になります!
E崎:え? そう?
C川:っていうか、意味が分かりません!
E崎:ほら? 小学校とかだと、昼休みも先生が教室にいて、一緒に給食たべるよね?
A田:そうですね。
E崎:それと、同じだよ。
A田:「同じ」と言われても、共通点が見つけられないレベルなんですけど?
E崎:忖度(そんたく)してくれ。
B山:無理です!
E崎:大したことじゃねーじゃん?
C川:僕らの安らぎの時間を奪わないで下さい。
E崎:いやいや、存分に安らいでもろて。
C川:だから、先生がいたら無理です。
E崎:なーんで? 俺がいたら出来ないような安らぎ方でも、してんのかなぁ?
B山:はぁ? それ、どういう意味ですか? 先生?
E崎:そーいう意味だよぉ。「いじり」と「いじめ」みたいなビミョーなやつだよ。
A田:「介入」ですか?
E崎:解釈は個人の自由だ。
B山:親に言って、学校にクレーム入れてもらおう。
E崎:入れてもろてー。俺の評価なら、これ以上、下がりようがないから。B山君。
C川:勤務時間中にガンプラ作ってるって、管理職にチクるぞ。
E崎:チクってもろてー。管理職には、「必要があって、玩具(がんぐ)・プラモデルなどを持ち込みます」と言ってあるから。C川君。
A田:先生、そういうのは、詐欺まがいというのでは?
E崎:グレーゾーンはセーフなんだよ。
B山:え? あんたが、それ、言っちゃうの?
C川:ダメでしょ?
E崎:とにかく、俺は、毎日、昼休み、教室でガンプラを組み立てる!
ト書き:間
A田:その日の放課後
D原:先生、なんで、ガンプラなんですか?
E崎:んー? じゃあ、何のプラモデルがいいんだ?
D原:そうじゃなくて! そこじゃなくて! なんで毎日、昼休みに教室でガンプラを組み立てることにしたんですか?
E崎:いや、主に、嫌なことをされるのは、昼休みなんだろ?
D原:そうですけど?
E崎:で、ちょっと調べたんだけど、B山とC川って、昼休みは教室以外に行き場所ないみたいだ。
D原:そうなんですか?
E崎:まぁ、他では、サッパリ、威勢(いせい)が悪いらしい。
D原:はぁ。
E崎:だから、おまえが、別の場所に連れて行かれて、いじめられる心配はないと思っていいぞ。
D原:はあ……、はぁっ? だから、教室に張り付くことにしたんですか?
E崎:まぁ、大まかには、そんなところだ。
D原:はあ……、で、なんでガンプラ?
E崎:それは、趣味だ。
ト書き:間
A田:さらに、翌日の昼休み
B山:おい、D原、おまえ、E崎に何か、言ったんじゃねぇだろうな?
C川:ことと次第(しだい)によっちゃあ……。
E崎:ビコ――――――ン!
A田:先生? なんか、今、先生の頭の毛の一部が、束(たば)になって立ちましたけど?
E崎:説明しよう! これは、「いじめアンテナ」だ! 半径20メートル以内にいじめを感知すると、「ビコ――――――ン!」の音とともに立つのだ!
B山:いや、先生、口で「ビコ――――――ン!」って、言ってるし。
C川:左手でなんかスイッチ押してるの丸見えだし。
E崎:そういうのは、着ぐるみのチャックと一緒で、見えても見えないことにしろよ。
A田:先生、そんなもの、どこで売ってるんですか?
E崎:売ってるわけねぇだろ? 作ったんだよ! 秋葉原に行って、呼び込みのメイドさんには目もくれずに、パーツを買い集めて、自分で作ったの!
B山:え? いじめを感知すると立つとか。
C川:スイッチは見えないとかの設定は?
E崎:ごほん……、これは、「いじめアンテナ」……。
A田:先生、それ、もう、いいです。
ト書き:間
A田:さらに、翌日の昼休み
E崎:B山とC川! こっち、来い!
B山:なんすか?
E崎:いいから、来い!
C川:なんなんすか?
E崎:おまえら、どうせ、アレだろ? 写真撮って「勤務時間中にガンプラ作ってる教師」とか言って、ネットに上げる気なんだろ?
B山:そうですよ。
C川:文句あるんですか?
E崎:大アリだぁーーーーーーっ! そんな遠くから撮った写真でズゴックのカッコよさが伝わるとでも思ってんのかぁ?
B山:はい?
E崎:そんな遠くから撮ったんじゃ、ズゴックのカッコ良さが伝わらねぇ、って言ってるんだよ!
C川:意味が分かりません。
E崎:いいか? 現役教師が勤務時間中に堂々とガンプラ作ってる写真だよ! 当然のことながら、バズるだろう! ならば、ズゴックのカッコ良さを布教せんで、どうするね?
B山:そこなんですか?
E崎:そこだよ? まさに、そこだよ? ジャスト、そこだよ?
C川:他に、言うことは、ないんですか?
E崎:実は、ある。貸せっ!
B山:あ、俺のスマホ。
E崎:やーっぱりなぁ。
C川:なんですか?
E崎:写真にGPS情報が付く設定になってるじゃねーか。
B山:え?
E崎:おまえ、特定されちゃうよぉ?
C川:そんな、俺たちなんか、特定したって……。
E崎:バズったら、注目浴びるんだよ?
B山:あ。
E崎:あとな、遠くから撮ったら、誰かが写り込むかも知れねーだろ? 顔が写り込まなくても、制服から、ウチの学校が特定されるかもな?
C川:あの、それ、ガチで、ズゴックより大事なことなんじゃ……?
E崎:ズゴックを馬鹿にするな!
ト書き:間
D原:それからも、E崎先生は、毎日、昼休みは教室でガンプラを組み立て続けた。私と、B山、C川の関係は、目に見えて改善するわけではなかったが、とりあえず、落ち着いてお弁当が食べられるのは、助かっている。
ト書き:間
D原:先生、ありがとうございます。
E崎:え? 何が?
D原:いえ、先生だって、昼休みは職員室で休みたいでしょうに。
E崎:あ? 俺、職員室に、居場所ないけど?
D原:先生?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる