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ステージ4 へラル編
第89話 誘導【side:へラル】
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「ヘラ、完璧だ。後は我に任せろ」
言われなくても分かってる。ワタシ達三人の魔力を共有してる以上、ラルを信じて全てを託したんだから。
一方で、ラルと全く同じ視界から見える悪魔は、そんなワタシ達の姿を見ても顔色一つ変えずに立ち尽くしていた。
「……ちょっと意味が分からないわ。あなた、神になりたいんじゃなかったの?」
「悪魔の囁きに耳を貸すかよ」
「へぇ面白い冗談ね」
「【火炎】……【火炎刃】」
ラルは天汰の戦いに寄せたのか、全身に火炎を纏わせ剣を作り出した。
勿論、三人分の魔力が詰まっている。悪魔だとしても掠っただけでダメージがカンストしても全く不思議ではない。
問題なのはカンストしても死なないことだけど……。
「……変わらぬな」
突然、奥でこの戦いを傍観していた老けた男がボソリと呟いた。アレがこの悪魔の契約者の筈だけど……あまりにも年を取りすぎている。
「我を馬鹿にしているのか爺。汝が誰か知らないが我らの戦いに水をさすな」
「……それは……すまない」
「私の主を……だから神は嫌いなのよ。大した能力も無いのに驕り、策もなければ力に頼って自滅する種族……上からしたら都合の良い存在でしかないのに」
「勝手に言ってろ! 【火炎球】【火炎竜巻】」
次々と天汰が使ってきた魔法が飛び出す中、一つだけ天汰の魔法じゃない物が放たれた。
妖氷柱……雪娘が使っていた魔法じゃないか? そういえば、あの時二人は一緒に魔法を繰り出していたのを隠れながら見た記憶がある。
まさか、天汰が過去に一度だけ使った魔法の痕跡だけで撃ったのか……!?
「さっきからあなた珍しい技ばかり使っているわね……?」
「我も知らない魔法ばかりでこっちは楽しめてるぜ。そっちこそ、避けるのに専念するのはやめたらどうだ?」
「あなた達を今殺したら困るってさっき言ったわ。手加減よ、手加減」
……何か、様子がおかしい。
悪魔は手加減だと言っているけど、それ以外に何か狙っているように見えるな。
一つに戻る前は必ずワタシ達の目を見て話していたはず。だけど今は胴体ばかり見ている……石?
――ラル、避けろ! コイツは福源の石を狙っている!
しかし、ワタシがいくら叫んだところでラルに声は届かない。
「いや、届いてるからな。我には全て……」
「気味が悪いわ――」
「――ッッ!?」
いきなり視点がぐらつき始め、その場でラルは膝を付いた。
息を荒くして苦しんでいるようだが、痛覚までは共有していないので何が起きているのかワタシには分からない。
――早く立ち上がって! 動かなかったら石を奪われる!
「……なんで今……なんだよ……ッ! 【黒薔薇】【黒百合】【青薔薇】――」
「どれだけ技を並べたって意味が無いわ」
魔力が地を這い、空気を切り裂いて破壊を始めた。恐らく、地面を割ってしまえばクローン室まで逃げ込めると判断したんだろう。
だが、逃げ込めたところで地下に逃げたら追い詰められるだけだ。地下にはクローン以外何も無いことは一度来ているから知っている。
「……【炎天】……ッ!!」
震える手で地面を叩きつけ悪魔の介入をワタシの魔法で防いだ状態で地下に逃げ込んだ。
上で大爆発が起こり、建物が崩れる音が聞こえてくる。奇跡的にワタシ達は一時的に撤退に成功したが、ラルはその場で倒れてしまった。
「……ああ……意識が……持たねえ。何とかして我から出ていけ」
……これはワタシに言ってるの? そしたら、かなり弱っている今なら前回よりも簡単に抜け出せるはず。
……不思議だな、シチュエーションは一緒のはずなのに、抱いている感情が全く違う。
「……っ」
「――っし。ラル、平気か?」
再び身体を取り戻したワタシは倒れたままのラルに向けて手を差し伸べる。
虚ろな目をして天井を見るラルの目には正気が感じられない。
「……ラル?」
「くっ……ここはどこ……?」
……ラルじゃない。優しい表情に落ち着いた抑揚、間違いない。天汰そのものだ。
でも、どうして? 意味が分からない……天汰がいきなり戻ってくるなんてワタシですら知らないことが起こっている。
「……へラル? そうだ思い出したんだよ! ここ、クローン部屋か?」
天汰に言われて周りを見渡してみる。さっきは焦っていて気が付かなかったが、一定間隔で置かれたカプセルの中に培養液に浸かった人間が大量に並べられていた。
これがクローンの元になったオリジナルの人達……皆無表情だから意識があるのか分からないけど、せめて……落ち着いて眠っているなら幸せなんだろうな。
「さっきの会話、僕にもいきなり聞こえたんだ。アイツが言っていたこと……僕にも理解出来た。へラル、皆を探して」
「……皆?」
「ああ! ツバキ・アレゼル・ダイアの三人もここにあるはずなんだ。オリジナルさえあれば、復活出来るかもしれない!」
そうか、ラルが言っていたことはそういうことだったのか。
「……三人はいつも僕を守ってくれたんだ。まだ、生きてる」
言われなくても分かってる。ワタシ達三人の魔力を共有してる以上、ラルを信じて全てを託したんだから。
一方で、ラルと全く同じ視界から見える悪魔は、そんなワタシ達の姿を見ても顔色一つ変えずに立ち尽くしていた。
「……ちょっと意味が分からないわ。あなた、神になりたいんじゃなかったの?」
「悪魔の囁きに耳を貸すかよ」
「へぇ面白い冗談ね」
「【火炎】……【火炎刃】」
ラルは天汰の戦いに寄せたのか、全身に火炎を纏わせ剣を作り出した。
勿論、三人分の魔力が詰まっている。悪魔だとしても掠っただけでダメージがカンストしても全く不思議ではない。
問題なのはカンストしても死なないことだけど……。
「……変わらぬな」
突然、奥でこの戦いを傍観していた老けた男がボソリと呟いた。アレがこの悪魔の契約者の筈だけど……あまりにも年を取りすぎている。
「我を馬鹿にしているのか爺。汝が誰か知らないが我らの戦いに水をさすな」
「……それは……すまない」
「私の主を……だから神は嫌いなのよ。大した能力も無いのに驕り、策もなければ力に頼って自滅する種族……上からしたら都合の良い存在でしかないのに」
「勝手に言ってろ! 【火炎球】【火炎竜巻】」
次々と天汰が使ってきた魔法が飛び出す中、一つだけ天汰の魔法じゃない物が放たれた。
妖氷柱……雪娘が使っていた魔法じゃないか? そういえば、あの時二人は一緒に魔法を繰り出していたのを隠れながら見た記憶がある。
まさか、天汰が過去に一度だけ使った魔法の痕跡だけで撃ったのか……!?
「さっきからあなた珍しい技ばかり使っているわね……?」
「我も知らない魔法ばかりでこっちは楽しめてるぜ。そっちこそ、避けるのに専念するのはやめたらどうだ?」
「あなた達を今殺したら困るってさっき言ったわ。手加減よ、手加減」
……何か、様子がおかしい。
悪魔は手加減だと言っているけど、それ以外に何か狙っているように見えるな。
一つに戻る前は必ずワタシ達の目を見て話していたはず。だけど今は胴体ばかり見ている……石?
――ラル、避けろ! コイツは福源の石を狙っている!
しかし、ワタシがいくら叫んだところでラルに声は届かない。
「いや、届いてるからな。我には全て……」
「気味が悪いわ――」
「――ッッ!?」
いきなり視点がぐらつき始め、その場でラルは膝を付いた。
息を荒くして苦しんでいるようだが、痛覚までは共有していないので何が起きているのかワタシには分からない。
――早く立ち上がって! 動かなかったら石を奪われる!
「……なんで今……なんだよ……ッ! 【黒薔薇】【黒百合】【青薔薇】――」
「どれだけ技を並べたって意味が無いわ」
魔力が地を這い、空気を切り裂いて破壊を始めた。恐らく、地面を割ってしまえばクローン室まで逃げ込めると判断したんだろう。
だが、逃げ込めたところで地下に逃げたら追い詰められるだけだ。地下にはクローン以外何も無いことは一度来ているから知っている。
「……【炎天】……ッ!!」
震える手で地面を叩きつけ悪魔の介入をワタシの魔法で防いだ状態で地下に逃げ込んだ。
上で大爆発が起こり、建物が崩れる音が聞こえてくる。奇跡的にワタシ達は一時的に撤退に成功したが、ラルはその場で倒れてしまった。
「……ああ……意識が……持たねえ。何とかして我から出ていけ」
……これはワタシに言ってるの? そしたら、かなり弱っている今なら前回よりも簡単に抜け出せるはず。
……不思議だな、シチュエーションは一緒のはずなのに、抱いている感情が全く違う。
「……っ」
「――っし。ラル、平気か?」
再び身体を取り戻したワタシは倒れたままのラルに向けて手を差し伸べる。
虚ろな目をして天井を見るラルの目には正気が感じられない。
「……ラル?」
「くっ……ここはどこ……?」
……ラルじゃない。優しい表情に落ち着いた抑揚、間違いない。天汰そのものだ。
でも、どうして? 意味が分からない……天汰がいきなり戻ってくるなんてワタシですら知らないことが起こっている。
「……へラル? そうだ思い出したんだよ! ここ、クローン部屋か?」
天汰に言われて周りを見渡してみる。さっきは焦っていて気が付かなかったが、一定間隔で置かれたカプセルの中に培養液に浸かった人間が大量に並べられていた。
これがクローンの元になったオリジナルの人達……皆無表情だから意識があるのか分からないけど、せめて……落ち着いて眠っているなら幸せなんだろうな。
「さっきの会話、僕にもいきなり聞こえたんだ。アイツが言っていたこと……僕にも理解出来た。へラル、皆を探して」
「……皆?」
「ああ! ツバキ・アレゼル・ダイアの三人もここにあるはずなんだ。オリジナルさえあれば、復活出来るかもしれない!」
そうか、ラルが言っていたことはそういうことだったのか。
「……三人はいつも僕を守ってくれたんだ。まだ、生きてる」
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