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ステージ3-2 シロクロ連邦国家
第85話 重たい肉体
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……やめろ。やめろやめろやめろ……もう僕の身体で暴れるな!
「……けっ、これがクローピエンス? 雑魚の集まりじゃねえか。我と対等なのはオメーしかいねー」
「つ、強過ぎる……!! 天汰さん、手加減していたの……!?」
僕の目の前には血反吐を吐いて倒れた無数のクローピエンス達と、中心でまだ戦う意志を見せるエレーナがいる。
だけど、天汰はギラついた目線を悪魔に向け、目の前の彼らには目も当てない。
「あー……我と一緒に行動していた……誰だっけ? アイツらどこいった?」
「――ここだぜ! 【ガン・ショット】ッ!」
隠れていたシェンが天汰に向かって奇襲攻撃を仕掛けたが、天汰は眉一つ動かさず片手を突き出して僕の魔力を消費していく。
僕が得意としていた火炎系の魔法ではなく、雷系を乱発していく僕ではない誰か。
あっという間に天汰はシェンの攻撃を回避し、シェンの全身を稲妻が貫く。
笑顔で攻撃する天汰の全ての攻撃はカンストしていた。
「……あらら、死んだ? まあいいや。もう準備運動は済んだから、悪魔。我と戦え」
「後二人、戦えそうだけど。見逃すってことでいいのね」
さっきから悪魔はわざと誘導して、残りのニーダとエレーナも殺させようとしているな。
……シェンも、虫の息だし。
もう身体を動かせない以上、天汰の暴走は防げない。ならば、乗っ取っている人物が誰なのかを考察してみるか。
とは言っても、候補としては『僕』か『へラル』、『それ以外の誰か』……候補を絞り切るのは不可能だ。
僕自身はあり得ないとして……へラルが最有力なんだけど、言動的に全く似てないんだよな。
だから『それ以外の誰か』なのは間違いないんだけど……何かあったかな。
僕が考えていると、天汰は地面を蹴り出して悪魔に飛びかかった。お互いに素性を曝け出すように抑えていた魔力を放出し始める。
「ギャハハハハハ! 我が抜けて随分と弱くなっちまったな! 転移? 人間の肉目ですら追いきれるぞ」
「あなたは欠陥のままなのね……」
……そういえば、僕があの悪魔をママと呼んでいた時、たしか腹に刺さっている石について話していたな。
『引き抜こうとしたら不思議な魔力が反抗してきた』……アイツはそう言っていた!
しかも、『僕以外の魔力』とも言っていたから、もしかするとどこかのタイミングで誰かの魔力を取り込んだんじゃないか?
「どうする、我自身の魔力も湧いてきたぞ?」
口調的に候補を絞るなら、恐らく僕を乗っ取ったのは女神なんだろう。
僕は2回女神と戦ったことがある。そいつらの名はアマテラスとイザナミだけど、うーん……あの二人に見分けられるほどの違いは無かった。
ただ、二人の死に方はそれぞれバラバラだった記憶が残っている。イザナミはへラルがぶっ殺したから死体が灰になっていたのに対して、アマテラスは光になって消えていったはず。
それも……僕の身体の真下で。
「関係無いわ。私があなたを打ちのめすだけ」
「そりゃあ理想論でしかないな」
相変わらず眼前で悪魔と争い続けているけど……話を戻そう。
やっぱり僕の身体で暴れてるのはアマテラスの可能性がかなり高まってきたな。
要するに僕は死にかけのアマテラスを下敷きにしたせいで、福源の石がアマテラスの魂本体を吸い取ってしまった可能性があるということになるが……流石に飛躍し過ぎか。
石の中に他人が入っていたからママは弾かれたと考えるのが妥当だが……そんなことあり得るのか。
あり得るか、異世界だし。
「はは……にしても我らに名前が付けられていないのは悲惨と思わないか?」
「思わないわ。あなたが居なくなれば私は昇格出来るから」
「盛り上がりに欠けるなあ……」
いや……二人の会話を聞いているとどうもアマテラス説は無いように思える。
『欠陥』だとか『我が抜けて』だとか、あの悪魔は何を言ってんだ?
ああ、どうあがいても意味不明だ。
「……飽きてしまうわ。私は暇じゃないの。折角新たな身体を手に入れた所悪いけど、早く終わらせてもいいかしら」
「……飽きた!? 我を相手して飽きたか……逃げるつもりだな」
「ええ、そうよ。第一目標は達成したから、後はあなた達の決断を待つだけ」
…………第一目標? コイツが僕の身体を乗っ取る所までが第一目標なのか?
だとしたらコイツは……僕側の問題では無さそうだ。つまり、へラルに何かしら謎があって、それを悪魔も知っていた……?
まさか……!
「あなたも散々だったわね、私の分身体に封印されるなんて。したのは私だけど」
「待て……話が違うな。我だけの肉体ならまだしも、この身体には魂が入り過ぎてる。我は邪魔されたくないのだ、復活の為には」
やはり、へラルはこの悪魔から生まれた存在だったのか……。
後は何となく僕は察してしまった。彼女の目的も正体も。
「では、さようなら。今度会うときはお互いに願いを叶える時ね」
「チッ待ちやがれ――」
悪魔を捕まえようと手を伸ばした天汰だったが間に合わず、目前で悪魔は居なくなる。
僕達は悪魔に転移魔法で逃げられてしまった。
だが、奴の行き先は一つしかないことはコイツにも分かるだろう。
天汰は僕と共鳴するように口を開いた。
「行くしかないか……我が完全体になる為、アイツの本拠地に」
魔力を巧みに操り地面から浮かび上がって飛び立つ天汰を、誰も止めようとしなかった。
「……けっ、これがクローピエンス? 雑魚の集まりじゃねえか。我と対等なのはオメーしかいねー」
「つ、強過ぎる……!! 天汰さん、手加減していたの……!?」
僕の目の前には血反吐を吐いて倒れた無数のクローピエンス達と、中心でまだ戦う意志を見せるエレーナがいる。
だけど、天汰はギラついた目線を悪魔に向け、目の前の彼らには目も当てない。
「あー……我と一緒に行動していた……誰だっけ? アイツらどこいった?」
「――ここだぜ! 【ガン・ショット】ッ!」
隠れていたシェンが天汰に向かって奇襲攻撃を仕掛けたが、天汰は眉一つ動かさず片手を突き出して僕の魔力を消費していく。
僕が得意としていた火炎系の魔法ではなく、雷系を乱発していく僕ではない誰か。
あっという間に天汰はシェンの攻撃を回避し、シェンの全身を稲妻が貫く。
笑顔で攻撃する天汰の全ての攻撃はカンストしていた。
「……あらら、死んだ? まあいいや。もう準備運動は済んだから、悪魔。我と戦え」
「後二人、戦えそうだけど。見逃すってことでいいのね」
さっきから悪魔はわざと誘導して、残りのニーダとエレーナも殺させようとしているな。
……シェンも、虫の息だし。
もう身体を動かせない以上、天汰の暴走は防げない。ならば、乗っ取っている人物が誰なのかを考察してみるか。
とは言っても、候補としては『僕』か『へラル』、『それ以外の誰か』……候補を絞り切るのは不可能だ。
僕自身はあり得ないとして……へラルが最有力なんだけど、言動的に全く似てないんだよな。
だから『それ以外の誰か』なのは間違いないんだけど……何かあったかな。
僕が考えていると、天汰は地面を蹴り出して悪魔に飛びかかった。お互いに素性を曝け出すように抑えていた魔力を放出し始める。
「ギャハハハハハ! 我が抜けて随分と弱くなっちまったな! 転移? 人間の肉目ですら追いきれるぞ」
「あなたは欠陥のままなのね……」
……そういえば、僕があの悪魔をママと呼んでいた時、たしか腹に刺さっている石について話していたな。
『引き抜こうとしたら不思議な魔力が反抗してきた』……アイツはそう言っていた!
しかも、『僕以外の魔力』とも言っていたから、もしかするとどこかのタイミングで誰かの魔力を取り込んだんじゃないか?
「どうする、我自身の魔力も湧いてきたぞ?」
口調的に候補を絞るなら、恐らく僕を乗っ取ったのは女神なんだろう。
僕は2回女神と戦ったことがある。そいつらの名はアマテラスとイザナミだけど、うーん……あの二人に見分けられるほどの違いは無かった。
ただ、二人の死に方はそれぞれバラバラだった記憶が残っている。イザナミはへラルがぶっ殺したから死体が灰になっていたのに対して、アマテラスは光になって消えていったはず。
それも……僕の身体の真下で。
「関係無いわ。私があなたを打ちのめすだけ」
「そりゃあ理想論でしかないな」
相変わらず眼前で悪魔と争い続けているけど……話を戻そう。
やっぱり僕の身体で暴れてるのはアマテラスの可能性がかなり高まってきたな。
要するに僕は死にかけのアマテラスを下敷きにしたせいで、福源の石がアマテラスの魂本体を吸い取ってしまった可能性があるということになるが……流石に飛躍し過ぎか。
石の中に他人が入っていたからママは弾かれたと考えるのが妥当だが……そんなことあり得るのか。
あり得るか、異世界だし。
「はは……にしても我らに名前が付けられていないのは悲惨と思わないか?」
「思わないわ。あなたが居なくなれば私は昇格出来るから」
「盛り上がりに欠けるなあ……」
いや……二人の会話を聞いているとどうもアマテラス説は無いように思える。
『欠陥』だとか『我が抜けて』だとか、あの悪魔は何を言ってんだ?
ああ、どうあがいても意味不明だ。
「……飽きてしまうわ。私は暇じゃないの。折角新たな身体を手に入れた所悪いけど、早く終わらせてもいいかしら」
「……飽きた!? 我を相手して飽きたか……逃げるつもりだな」
「ええ、そうよ。第一目標は達成したから、後はあなた達の決断を待つだけ」
…………第一目標? コイツが僕の身体を乗っ取る所までが第一目標なのか?
だとしたらコイツは……僕側の問題では無さそうだ。つまり、へラルに何かしら謎があって、それを悪魔も知っていた……?
まさか……!
「あなたも散々だったわね、私の分身体に封印されるなんて。したのは私だけど」
「待て……話が違うな。我だけの肉体ならまだしも、この身体には魂が入り過ぎてる。我は邪魔されたくないのだ、復活の為には」
やはり、へラルはこの悪魔から生まれた存在だったのか……。
後は何となく僕は察してしまった。彼女の目的も正体も。
「では、さようなら。今度会うときはお互いに願いを叶える時ね」
「チッ待ちやがれ――」
悪魔を捕まえようと手を伸ばした天汰だったが間に合わず、目前で悪魔は居なくなる。
僕達は悪魔に転移魔法で逃げられてしまった。
だが、奴の行き先は一つしかないことはコイツにも分かるだろう。
天汰は僕と共鳴するように口を開いた。
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