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ステージ3-2 シロクロ連邦国家

第81話 再戦に怒り

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「……あなた達はどうする? この子みたいになりたい?」


 不気味な笑顔で僕達に目を向けるママは正に悪魔といった感じだ。彼はもう動かない。
 恐らく今の攻撃でフィルスターは死んだだろう。

 次はお前らだとでも言いたいのだろうか。


「よく自分が育ててきた子どもを殺せるな……! オレはテメエを人だと思えねえよ」

「うっふっふ……アーッハッハ!」


 シェンの言葉を聞いた直後、ママは大声を上げて笑いだした。


「あなたまだ分かっていないのね……! 私は悪魔よ? 私がいちいち感情移入すると思う? 悪魔なのに?」

「……テメエ、何言ってやがる。よく悪魔を騙れるな……侮辱するな」

「……シェン。コイツが言ってることは本当だよ、僕は匂いで悪魔だって分かった」


 シェンは多少困惑しながらも僕の言ったことをとりあえず信じてくれた。悪魔はケタケタと笑い続けている悪魔を見て、あの時と同じ感情を僕は抱いている。

 コイツだけは許しちゃいけない……と。

 だが、今ならギリギリ対話は可能かもしれないので念の為話しかけてみる。


「お前、やってることが滅茶苦茶だ。シガヌィや僕達をわざわざ助けたってのに今度は殺すつもりなんだろ?」

「あの時はあの子達を死なせてしまったら私の責任になってしまうからよ。今は真逆。邪魔だから殺してあげたの。あっ、あなた達も当然逃さないわ」

「……天汰、逃げるか」


 僕達を囲っていた瓦礫は大きな音を立てて崩壊し、外の景色が全部見れるようになる。とは言っても吹雪のように舞っている灰のせいで遠くまではっきりと見えないし聞こえないが。


「シェン、笑っているけどもう分かるよな。僕達じゃコイツから逃げられない。立ち向かうしかないって」

「……冗談きついぜ」


 強く荒れた風がそよぎ、僕達の不安を煽ってくる。ギールベルク戦、そして今の様子を見るにこの悪魔は転移魔法が使えるだろう。

 ……ジュマと同じ戦い方だな。
 いや、どうして今それを思い出したんだ僕は。


「テメエ、転移魔法使ってるな? 随分昔に禁じられて使い手が消失したと思ってたが……相当長生きしてんな」

「あら? 失礼ね……たったの数百年よ? あなたのだってそれくらいじゃないかしら」

「誰を指してるが分かんねえが――ぐッ……!」

「シェン!」


 まただ……シェンとの距離は10m近く離れていたのに一瞬で悪魔が目の前に現れてシェンに殴りかかっていた。


「……弱えパンチだなぁ!? 【全反撃オール・カウンター】!」

 顔面を殴ろうとしてきた拳をシェンは腕で受け止め、お返しにと魔法で攻撃を跳ね返す。

 だけど悪魔は莫大な魔力量に微動だにせず、不敵な笑みを浮かべた。


「ランキング1位のパーティーでもこの程度なのね……」

「くっ……どうして効いてねえんだ……」


 僕はそっと近くに落ちている刃の部分が無いテレイオスの剣を拾い、魔法を唱える。


「【火炎刃】……おい悪魔、僕を見ろ。シェンだけに突っかかるなよ」

「……やっぱり私の目は間違っていなかったわ。あなた達二人を生かして正解だったみたい。凄く今、楽しいわ」

「ヘラヘラしやがって……天汰、行くぞッ!」

「あら……あなた達は周りが見えていないの?」


 そこで僕とシェンは足を止める。気配を察知しようと辺りを見渡すと小屋のある方角から大量の人影が見えた。


「――おーおーひっさしぶりだなぁ。俺のこと覚えてっか?」

「ああ、僕に負けたリーダーだろ?」

「天汰、あいつ誰だ? 見覚えが全く無いんだが」


 そう言えばシェンはあの時居なかったか。なら改めてシェンに説明した方が良さそうだな。

 僕はグラスティンと会話しながら分かりやすくシェンに伝えようと試みる。


「アイツはグラスティン、自称クローピエンスのリーダーだ。その後ろの奴らが部下か?」

「……ああ、こいつらか。リーダーってのは、先陣を切るもんだろう? こうしないと示しがつかねェ」

「ざっと10人か……まあいいや。まずはテメエだ。オレはテメエをぶっ飛ばすまで戦ってやるよ」

「私は戦わないわよ? 時間の無駄だから」


 そう言って悪魔はグラスティンの後ろに転移し、仁王立ちで構えた。

 ……そこで僕はあることに気が付く。グラスティンの後ろに並んでいる兵士達にエレーナの姿が見えない。

 と言ってもはっきりとした姿はそもそもグラスティン以外見えないが。


「前回は完敗した俺だが、あの時よりも相当強くなってんだぜ? 現にユートピアランドで戦った時よりも俺の魔力量は増えている。逆にお前は魔力のコントロール、下手になったんじゃねェか?」

「……全部この空気のせいだ」


 何だ、この違和感は……いくら何でもおかしい。

 グラスティンの後ろに居るのは誰だ? あんなに数いるのに、誰からも魔力を感じられないぞ。

 ……まさか、アイツらは……!


「シェン、横――ッ!」
発勁はっけい!!」

「誰だ――グッ……!」

「チッ、バレたか……! エレーナ、次行くぞ」

「はい、先輩!」


 僕の予想通り、クローピエンス達は吹雪の中横から奇襲攻撃を仕掛けてきた。

 シェンに襲い掛かってきた目隠れの少年は誰だが知らないが僕に殴りかかってきた女には見覚えがある。
 加えて、彼女は以前戦った時よりも格段にパワーアップしているのが分かった。

 むしろ成長率だけならグラスティンを凌駕しているんじゃないか。

 それに、正面にいるクローピエンスの群れは作り物、グラスティンが灰を使って作った人形だったのか。

 想像以上に二人が強くなっていることを知り少し焦ったが僕だって前より強くなっているんだ、諦めるなよ。


「私、変わったんです。中途半端でいるのは誰のためにもならないんだって。だから今回はクローピエンスの一員として、本気であなたと戦いますから!」
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