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ステージ3-2 シロクロ連邦国家
第64話 白銀の警備員
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「はーい、荷物検査します。はーい」
「こうで良いですか?」
「はーいどうぞー」
僕は被っていたフードを取り、審査官に目を合わせる。一瞬、審査官は驚くような顔を見せたが不自然に落ち着きを取り戻し、身体検査をすぐに終わらせた。
「……どうぞー」
「……簡単に入れましたね、天汰さん」
「これもイコのお陰か? よく分からねえが流石だな!」
シェンは期限良さげにイコさんの肩を軽く叩いた。やはり僕以外にはイコさんの正体はバレてないんだな。
そうして僕達三人は正規ルートで入国し、残りの二人がやって来るのを広場で待つことになった。
近くにあった長椅子に座り、イコさんとシェンに挟まれ窮屈しているとシェンが唐突にあっと声にし、僕とイコさんの方を向いて何か思い出したように話し始めた。
「いや、オレとイコがこっち側であの二人に役割任せて良かったんかなって今更思っちまってよ」
「何言ってんすか、僕達三人にしか出来ないことを今からやるんですよ?」
「そうですよ! 私達も頑張るんですから、シェンさん」
そう、僕達には目標がある。
それは、僕とシェンとイコさんは最初に国に潜入して、クローピエンスに遭遇せずに元の世界に戻る手がかりを探すことだ。
そのためにはイコさんの相手の認知を変える特殊能力は欠かせないし、万が一の時のために自己治療出来る僕とシェンが最適だった。
一方でヘラルとニーダは違う。二人は僕達と別行動を取って、クローピエンスについて探ってもらうことになった。
ヘラルはともかく、ニーダも隠れる事は得意だと豪語していたのでこういう組み合わせになったのだが……。
「……おっ、ニーダから連絡来たわ。『誰にもバレずに入国出来たわよ』って」
「よし! じゃあ観光でもしましょうか!」
イコさんはお待ちかねといった感じでウキウキと立ち上がり、僕達の手を引いて街へと足を踏み出した。
「へえ~この国はユートピアと違って現地の人が多いですね」
「天汰は知らねえと思うが、ここが世界で一番安全だからな。そんだけ謎も多く抱えてるだろうけど」
「お二人とも、今は楽しみましょうよ! 今しか自由時間無いんですから!」
たしかに、情報集めのついでに買い物をすればいいしね。だけどこの流れ、どの国に行ってもあるな……どうしてだろう。
「それもそうだな! おい天汰、何か食いに行こうぜ」
「ぐわっ!」
僕は身体をシェンに持ち上げられたまま近くの飲食街に運ばれてしまった。
ケイさんはシェンを嫌がっていたけど、僕は根っこの部分は案外近しいと思う。
「これがカレーってやつか? こっちだと珍しい食べ物だから気になってたんだよ」
「子供っぽいね」
「うるせえ」
そう言いながらシェンはカレーを口いっぱいに頬張った。見た目に反して子供っぽいのはギャップ的な奴でこっちだとモテるのだろうか?
「天汰さん! ラーメンってどう美味しいですか!? 私、人生でこういった食べ物を見たことがないので……!!」
「え……はい、麺料理なんで食べやすいと思いますよ。箸に慣れたらですけど」
しっかし二人ともよく食うなあ……ラグナロクで1ヶ月過ごすの辛かったんだな。
イコさんは噛み切らないで麺を口に詰めたせいで死にかけてるし、シェンは辛いの食べて水を何杯も流し込んでいるし。
お陰で僕達もう十分に目立っちゃってるよ。
「だ、大丈夫かい……?」
優しい店員さんが僕達に声を掛けてくれたが、二人は無邪気な笑顔で、
「あいゔぉーゔダァ!」
「おいひーです!」
と、返してしまったものだから変人だと思われ、店員さんは何処かに消えていってしまった。
「フードコートとは思えないくらい目立っちゃってる……」
「気にする必要はねえぜ、今はとにかく腹に入れとかねえとだからな。ほら、オムライス食べとけよ自分で頼んでんだから」
くっそ~~! 二人に流されて好きな食べ物頼まなきゃ良かった……。
でも、こんなに綺麗なオムライス見たら食べたくなっちゃう。僕はスプーンを使ってオムライスを食す。
二人よりも食べ慣れているので、味わいながらも先に食べ終わった。
「……二人とも、食べ終わったらお城見に行きましょうよ」
「シロガネジョウか? いいねえ、でもあっちにはクローピエンス警戒しような」
「……天汰さん、耳貸してください」
「ああ……はい」
そっとイコさんに耳を差し出すと、小声で彼女は呟いた。
「一般人相手ならさっきみたいに一瞬で認知改変しますから……安心してくださいねっ」
「ああ……ははっ、分かりました」
イコさんはあの日以来、すっかり能力を隠そうとしなくなってきたな。
僕も術中に掛かっていたけど、この能力はもしかしたらフェンリルの中でも最強なんじゃないか?
「──待て待てーッ逃げルナァー!」
「……何だ?」
僕達は声のする方向を向くと、警察官のような格好の変な人が中年男を追いかけていた。
「さっきから何なんだ! 俺は何もしてねえ!」
「さっキからゴチャゴチャ……うるせェナァ!」
「ゲヘッ!?」
そいつは急激に加速し、中年男を雷のように突っ込んだ。変人の被っていた帽子が落ち、白銀の髪が露わになった。
「逮捕ダ! 罪状は……えー痴漢罪! 仲間を待ってロ!」
「俺は……してねえ……」
押さえつけられている男の様子が明らかに変だ。周りの客もザワザワとし始めたぞ。
止めた方が良さそうだけど……あんまり目立ちたくないなあ──
「──何してんだ、銀髪!」
「シェ……」
「シーッ」
シェンは銀髪を指差して立ち上がる。
僕は咄嗟にシェンさんの名前を口に出しかけたイコさんの口を手で塞いだ。
シェンには悪いが、他人のフリをしようか。
「おいお前ら、アイツを押さえんぞ」
「え、僕ら……?」
「当たり前だろ! おい銀髪何してんだ」
ああ……もうどうにでもなれ!
僕とイコさんもシェンに続いて立ち上がり、銀髪と中年に歩み寄った。
「ン? 何だオマエラ?」
「助けてくれぇ! 冤罪なんだ!」
「……近づいてみたはいいもの、どうするんですか?」
「まずはシロガネジョウの案内でもしてもらおうぜ」
……え、このおじさんは!?
「こうで良いですか?」
「はーいどうぞー」
僕は被っていたフードを取り、審査官に目を合わせる。一瞬、審査官は驚くような顔を見せたが不自然に落ち着きを取り戻し、身体検査をすぐに終わらせた。
「……どうぞー」
「……簡単に入れましたね、天汰さん」
「これもイコのお陰か? よく分からねえが流石だな!」
シェンは期限良さげにイコさんの肩を軽く叩いた。やはり僕以外にはイコさんの正体はバレてないんだな。
そうして僕達三人は正規ルートで入国し、残りの二人がやって来るのを広場で待つことになった。
近くにあった長椅子に座り、イコさんとシェンに挟まれ窮屈しているとシェンが唐突にあっと声にし、僕とイコさんの方を向いて何か思い出したように話し始めた。
「いや、オレとイコがこっち側であの二人に役割任せて良かったんかなって今更思っちまってよ」
「何言ってんすか、僕達三人にしか出来ないことを今からやるんですよ?」
「そうですよ! 私達も頑張るんですから、シェンさん」
そう、僕達には目標がある。
それは、僕とシェンとイコさんは最初に国に潜入して、クローピエンスに遭遇せずに元の世界に戻る手がかりを探すことだ。
そのためにはイコさんの相手の認知を変える特殊能力は欠かせないし、万が一の時のために自己治療出来る僕とシェンが最適だった。
一方でヘラルとニーダは違う。二人は僕達と別行動を取って、クローピエンスについて探ってもらうことになった。
ヘラルはともかく、ニーダも隠れる事は得意だと豪語していたのでこういう組み合わせになったのだが……。
「……おっ、ニーダから連絡来たわ。『誰にもバレずに入国出来たわよ』って」
「よし! じゃあ観光でもしましょうか!」
イコさんはお待ちかねといった感じでウキウキと立ち上がり、僕達の手を引いて街へと足を踏み出した。
「へえ~この国はユートピアと違って現地の人が多いですね」
「天汰は知らねえと思うが、ここが世界で一番安全だからな。そんだけ謎も多く抱えてるだろうけど」
「お二人とも、今は楽しみましょうよ! 今しか自由時間無いんですから!」
たしかに、情報集めのついでに買い物をすればいいしね。だけどこの流れ、どの国に行ってもあるな……どうしてだろう。
「それもそうだな! おい天汰、何か食いに行こうぜ」
「ぐわっ!」
僕は身体をシェンに持ち上げられたまま近くの飲食街に運ばれてしまった。
ケイさんはシェンを嫌がっていたけど、僕は根っこの部分は案外近しいと思う。
「これがカレーってやつか? こっちだと珍しい食べ物だから気になってたんだよ」
「子供っぽいね」
「うるせえ」
そう言いながらシェンはカレーを口いっぱいに頬張った。見た目に反して子供っぽいのはギャップ的な奴でこっちだとモテるのだろうか?
「天汰さん! ラーメンってどう美味しいですか!? 私、人生でこういった食べ物を見たことがないので……!!」
「え……はい、麺料理なんで食べやすいと思いますよ。箸に慣れたらですけど」
しっかし二人ともよく食うなあ……ラグナロクで1ヶ月過ごすの辛かったんだな。
イコさんは噛み切らないで麺を口に詰めたせいで死にかけてるし、シェンは辛いの食べて水を何杯も流し込んでいるし。
お陰で僕達もう十分に目立っちゃってるよ。
「だ、大丈夫かい……?」
優しい店員さんが僕達に声を掛けてくれたが、二人は無邪気な笑顔で、
「あいゔぉーゔダァ!」
「おいひーです!」
と、返してしまったものだから変人だと思われ、店員さんは何処かに消えていってしまった。
「フードコートとは思えないくらい目立っちゃってる……」
「気にする必要はねえぜ、今はとにかく腹に入れとかねえとだからな。ほら、オムライス食べとけよ自分で頼んでんだから」
くっそ~~! 二人に流されて好きな食べ物頼まなきゃ良かった……。
でも、こんなに綺麗なオムライス見たら食べたくなっちゃう。僕はスプーンを使ってオムライスを食す。
二人よりも食べ慣れているので、味わいながらも先に食べ終わった。
「……二人とも、食べ終わったらお城見に行きましょうよ」
「シロガネジョウか? いいねえ、でもあっちにはクローピエンス警戒しような」
「……天汰さん、耳貸してください」
「ああ……はい」
そっとイコさんに耳を差し出すと、小声で彼女は呟いた。
「一般人相手ならさっきみたいに一瞬で認知改変しますから……安心してくださいねっ」
「ああ……ははっ、分かりました」
イコさんはあの日以来、すっかり能力を隠そうとしなくなってきたな。
僕も術中に掛かっていたけど、この能力はもしかしたらフェンリルの中でも最強なんじゃないか?
「──待て待てーッ逃げルナァー!」
「……何だ?」
僕達は声のする方向を向くと、警察官のような格好の変な人が中年男を追いかけていた。
「さっきから何なんだ! 俺は何もしてねえ!」
「さっキからゴチャゴチャ……うるせェナァ!」
「ゲヘッ!?」
そいつは急激に加速し、中年男を雷のように突っ込んだ。変人の被っていた帽子が落ち、白銀の髪が露わになった。
「逮捕ダ! 罪状は……えー痴漢罪! 仲間を待ってロ!」
「俺は……してねえ……」
押さえつけられている男の様子が明らかに変だ。周りの客もザワザワとし始めたぞ。
止めた方が良さそうだけど……あんまり目立ちたくないなあ──
「──何してんだ、銀髪!」
「シェ……」
「シーッ」
シェンは銀髪を指差して立ち上がる。
僕は咄嗟にシェンさんの名前を口に出しかけたイコさんの口を手で塞いだ。
シェンには悪いが、他人のフリをしようか。
「おいお前ら、アイツを押さえんぞ」
「え、僕ら……?」
「当たり前だろ! おい銀髪何してんだ」
ああ……もうどうにでもなれ!
僕とイコさんもシェンに続いて立ち上がり、銀髪と中年に歩み寄った。
「ン? 何だオマエラ?」
「助けてくれぇ! 冤罪なんだ!」
「……近づいてみたはいいもの、どうするんですか?」
「まずはシロガネジョウの案内でもしてもらおうぜ」
……え、このおじさんは!?
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