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ステージ3 フェンリル編
第61話 万事解決なのかもしれない
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「て、天汰さん! やりましたね! 勝ちましたよ!」
「うん。ちょっと……起こしてくれない?」
僕はイコさんの肩を借りて立ち上がり下の皆の様子をうかがう。
幸いにも怪我人はおらず、エレーナもべアティチュードによって抱きかかえられていた。
「他人を巻き込むのは卑怯ではないか?」
「う、すみませんべアティチュードさん」
べアティチュード団長は少し怒っていたが、エレーナに関しては一部の顔が隠されていても分かるほど絶望している。
とりあえず鞭は解いてあげるか。
「……うそ……グラスティン……さんが……負けた?」
「……であなたはどうするの? 敵に囲まれちゃってるんだけれど」
はは……ニーダがエレーナを追い詰めてる。性格悪いなあ。
それと、エレーナは後回しにするとして解決しないといけないのはモネの方だよな。
「モネ! 戦いは終わったぞ! だから……そう悲観すんなよ!」
「終わりだよ……サーカスもモネのせいでもう公演できない……モネが壊したんだ……全部!!」
べアティチュード団長がギフターであることを明かしてからモネの卑屈な部分が出てきてしまったか。
モネを説得出来るのはべアティチュードくらいしかいないけど、こんな様子だと二人の和解は難しいかもな。
そんな中、意外な人から意外な言葉が飛び出した。
「べアティチュードさんさぁ……エレーナに持病治して貰えば? エレーナならべアティチュードに傷付けず直接心臓狙えるよね?」
「な、何言ってんだよヘラル! それじゃべアティチュードさんが死ぬだろ?」
「私もヘラルさんの言うとおりだと思いますよ!」
「イコさんまで何を言ってるんですか!?」
二人とも、いくら何でもその発言は空気を読んでくれよ! モネもべアティチュードも流石にキレちまう……っ。
僕がヘラルとイコさんを叱っている間、二人の様子をバレないように見ていたが、どうやら二人は怒っていなそうだった。
「……出来るのか? エレーナくんなら……殺せるのか、私を」
「な、何を言ってるんですか!? それよりもグラスティンが……」
「僕はグラスティンを殺せなかったよ。だからまだ生きてる」
何やら会話がすれ違っているように感じるが……べアティチュード?
べアティチュード団長はエレーナの目を一度チラリと覗いて一息零し感情を吐露した。
「さっき話せなかったことを話そう。モネ、聞いてくれるな」
「……」
「持病自体は生まれつきの物だった。少なくともギフターになるまでは生活に支障をきたすことなど一度も無かったくらいだ。ただ……なったからは地獄だったよ」
「……どうでもいいよ」
モネは自暴自棄になりながらも、興味深そうに団長の話だけはしっかり聞こうとこっそり近付いた。
自分でもおかしな事を言ってると冷静になって気付いたのかな。
「この肉体じゃ手術もマトモに受けられず、心臓に手を伸ばすことが出来ない。これを不幸(・・)と言わずに何と言う? 胸の苦しみ以外は全部幸せに変わりないさ、モネ」
べアティチュードはわざとらしく微笑んだが、モネは涙を流して顔を合わせようとはしていなかった。
……色々あったが、僕からしたら大体の謎は解決してしまったな。
モネとべアティチュード団長の関係も修復出来たし、後はエレーナとグラスティンだけか。
とは言っても、ヘラル的にもこの二人にはとどめを刺すべきだが……グラスティンの方なんかは苦労しそうだ。
「エレーナだったっけ? 今のうちに上の奴連れて逃げたら? そうしないとワタシが死ぬほどボコりたくなっちゃうから」
「……ヘラルはそれでいいの?」
「なんか……思ってたよりも弱過ぎたから、今やっても面白くないし」
ヘラルはそこまで戦っていないと思うが……まあたしかにグラスティンの方もあっけなく倒してしまった自覚はあるけどさ。
空を見上げると、半透明の飛空艇がよく見える。シェンもそろそろ帰ってこいとメッセージを送ってるみたいだ。
「……じゃあそういうことで。ニーダ、イコさん帰りましょう」
「えっと……私達が壊してしまった会場って……どうしますか?」
……誤魔化して逃げることは無理か。
イコさんが気付いたなら僕は逃れられない……まずは王様に謝罪して、国民に謝罪を終えた後改修工事を手伝わないといけないだろう。
「そこはモネと私が何とかしよう。修理費用も出せるし工事は……まあ色んな人に手伝ってくれることを期待しようかの」
「……私はグラスティンさんを連れて帰ります。次出会う事があれば必ずあなた達を倒してみせます」
「わらわ達も逃げるとするか。団長はわらわ達の存在を説明しないでくれよ?」
そんなこんなで話はまとまり、僕達はユートピアランドを旅立つことになった。
「ふむ……まあわらわ達に気付かれたとしてあの王様なら許してもらえるだろうがな……」
「ニーダ、怪我してない? 血塗れだけど……?」
「ああ、これか? 心配ないさ、すぐに塞がる」
ラグナロクに戻る最中、目に焼き付けようと振り返ると崩壊した会場の周りに何十人も二人の周りに集まっている光景が見えた。
その中には昨日の公演で見かけた人も何人か混じっていた。
「大丈夫そうだね、案外。余裕が出来たらワタシもう一回見たいなあ~面白かったし」
「事情を知って見れたら、僕も今度こそ楽しめると思うな」
さて、これからどこに行くんだろうか。
それを聞こうとニーダに話しかけようとした直前、イコさんが唐突に耳打ちをしてきた。
「……今夜、私の部屋に来てください」
「──え」
いきなり話しかけられたから僕は思わず変な声が飛び出てしまった。
ヘラルが一度こっちを向いたが、イコさんを見てからか変なため息を吐いてから上を見上げていた。
「……分かりました」
よく考えたらこの中でイコさんだけよく分からないんだよな。
ニーダとシェンは仲良さそうだけど、イコさんは本当によく分からないというか。
そんなことを考えているうちにラグナロクに辿り着き、沢山のメイドのお出迎えとシェンが飛び出してきた。
「ニーダ! また能力乱発したな!? 傷が残っちまうだろうが気を付けろよ? 【治癒】」
「あなたが治してくれるから別にいいじゃない」
「よし! ……今なんか言ったか?」
「ふふ、いいえ別に」
「うん。ちょっと……起こしてくれない?」
僕はイコさんの肩を借りて立ち上がり下の皆の様子をうかがう。
幸いにも怪我人はおらず、エレーナもべアティチュードによって抱きかかえられていた。
「他人を巻き込むのは卑怯ではないか?」
「う、すみませんべアティチュードさん」
べアティチュード団長は少し怒っていたが、エレーナに関しては一部の顔が隠されていても分かるほど絶望している。
とりあえず鞭は解いてあげるか。
「……うそ……グラスティン……さんが……負けた?」
「……であなたはどうするの? 敵に囲まれちゃってるんだけれど」
はは……ニーダがエレーナを追い詰めてる。性格悪いなあ。
それと、エレーナは後回しにするとして解決しないといけないのはモネの方だよな。
「モネ! 戦いは終わったぞ! だから……そう悲観すんなよ!」
「終わりだよ……サーカスもモネのせいでもう公演できない……モネが壊したんだ……全部!!」
べアティチュード団長がギフターであることを明かしてからモネの卑屈な部分が出てきてしまったか。
モネを説得出来るのはべアティチュードくらいしかいないけど、こんな様子だと二人の和解は難しいかもな。
そんな中、意外な人から意外な言葉が飛び出した。
「べアティチュードさんさぁ……エレーナに持病治して貰えば? エレーナならべアティチュードに傷付けず直接心臓狙えるよね?」
「な、何言ってんだよヘラル! それじゃべアティチュードさんが死ぬだろ?」
「私もヘラルさんの言うとおりだと思いますよ!」
「イコさんまで何を言ってるんですか!?」
二人とも、いくら何でもその発言は空気を読んでくれよ! モネもべアティチュードも流石にキレちまう……っ。
僕がヘラルとイコさんを叱っている間、二人の様子をバレないように見ていたが、どうやら二人は怒っていなそうだった。
「……出来るのか? エレーナくんなら……殺せるのか、私を」
「な、何を言ってるんですか!? それよりもグラスティンが……」
「僕はグラスティンを殺せなかったよ。だからまだ生きてる」
何やら会話がすれ違っているように感じるが……べアティチュード?
べアティチュード団長はエレーナの目を一度チラリと覗いて一息零し感情を吐露した。
「さっき話せなかったことを話そう。モネ、聞いてくれるな」
「……」
「持病自体は生まれつきの物だった。少なくともギフターになるまでは生活に支障をきたすことなど一度も無かったくらいだ。ただ……なったからは地獄だったよ」
「……どうでもいいよ」
モネは自暴自棄になりながらも、興味深そうに団長の話だけはしっかり聞こうとこっそり近付いた。
自分でもおかしな事を言ってると冷静になって気付いたのかな。
「この肉体じゃ手術もマトモに受けられず、心臓に手を伸ばすことが出来ない。これを不幸(・・)と言わずに何と言う? 胸の苦しみ以外は全部幸せに変わりないさ、モネ」
べアティチュードはわざとらしく微笑んだが、モネは涙を流して顔を合わせようとはしていなかった。
……色々あったが、僕からしたら大体の謎は解決してしまったな。
モネとべアティチュード団長の関係も修復出来たし、後はエレーナとグラスティンだけか。
とは言っても、ヘラル的にもこの二人にはとどめを刺すべきだが……グラスティンの方なんかは苦労しそうだ。
「エレーナだったっけ? 今のうちに上の奴連れて逃げたら? そうしないとワタシが死ぬほどボコりたくなっちゃうから」
「……ヘラルはそれでいいの?」
「なんか……思ってたよりも弱過ぎたから、今やっても面白くないし」
ヘラルはそこまで戦っていないと思うが……まあたしかにグラスティンの方もあっけなく倒してしまった自覚はあるけどさ。
空を見上げると、半透明の飛空艇がよく見える。シェンもそろそろ帰ってこいとメッセージを送ってるみたいだ。
「……じゃあそういうことで。ニーダ、イコさん帰りましょう」
「えっと……私達が壊してしまった会場って……どうしますか?」
……誤魔化して逃げることは無理か。
イコさんが気付いたなら僕は逃れられない……まずは王様に謝罪して、国民に謝罪を終えた後改修工事を手伝わないといけないだろう。
「そこはモネと私が何とかしよう。修理費用も出せるし工事は……まあ色んな人に手伝ってくれることを期待しようかの」
「……私はグラスティンさんを連れて帰ります。次出会う事があれば必ずあなた達を倒してみせます」
「わらわ達も逃げるとするか。団長はわらわ達の存在を説明しないでくれよ?」
そんなこんなで話はまとまり、僕達はユートピアランドを旅立つことになった。
「ふむ……まあわらわ達に気付かれたとしてあの王様なら許してもらえるだろうがな……」
「ニーダ、怪我してない? 血塗れだけど……?」
「ああ、これか? 心配ないさ、すぐに塞がる」
ラグナロクに戻る最中、目に焼き付けようと振り返ると崩壊した会場の周りに何十人も二人の周りに集まっている光景が見えた。
その中には昨日の公演で見かけた人も何人か混じっていた。
「大丈夫そうだね、案外。余裕が出来たらワタシもう一回見たいなあ~面白かったし」
「事情を知って見れたら、僕も今度こそ楽しめると思うな」
さて、これからどこに行くんだろうか。
それを聞こうとニーダに話しかけようとした直前、イコさんが唐突に耳打ちをしてきた。
「……今夜、私の部屋に来てください」
「──え」
いきなり話しかけられたから僕は思わず変な声が飛び出てしまった。
ヘラルが一度こっちを向いたが、イコさんを見てからか変なため息を吐いてから上を見上げていた。
「……分かりました」
よく考えたらこの中でイコさんだけよく分からないんだよな。
ニーダとシェンは仲良さそうだけど、イコさんは本当によく分からないというか。
そんなことを考えているうちにラグナロクに辿り着き、沢山のメイドのお出迎えとシェンが飛び出してきた。
「ニーダ! また能力乱発したな!? 傷が残っちまうだろうが気を付けろよ? 【治癒】」
「あなたが治してくれるから別にいいじゃない」
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