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第8章 探索編
79話 未来を壊した少年
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※投稿後、一部改訂しました。
********************************************
ルークが目を覚ましたのは、それから数時間後のことだった。
目を開けた時、最初に飛び込んできたのは見慣れない天井だった。薄汚れた布と鉄の枠組みで作られた天井が広がっている。時折、布が風で閃いて、隙間から夜空が覗いていた。
「ここは、どこだ?」
「天幕でござるよ」
無意識に呟いた言葉を拾う声が聞こえた。
声の方に視線を向ければ、そこにはアスティ・ゴルトベルクとその部下達が勢ぞろいしていた。どうやら、ルークの目が覚めるのを待っていたらしい。
「君は、気絶していたでござる」
「それを我らが運んだのだ」
「まったく……人間相手に、なぜ我らが侍従の真似事などを……」
「仕方あるまいよ。一応、客人扱いなのだからな」
アスティに続くように、彼女の部下が代わる代わる状況を説明してくれた。どうやら、魔族たちはルークを客人として――かなり不本意だったみたいだが――丁重に扱ってくれたらしい。ルークは、ふと自分に被せられていた毛布に目を落とす。色、質、触った感じ、どれをとっても、野営に使う毛布にしては一級品だ。
……このことから察するに、かなりの賓客扱いを受けているらしい。
ルークは自分が賓客扱いを受けていると知り、なんだか気持ちが落ち込んだ。
「どうして?」
ルークは毛布を握りしめながら、小さな声で尋ねてみた。
「どうしてとは、なんでござるか?」
アスティは、きょとんっとした表情で聞き返してくる。
ルークは暗い表情のまま、言葉を選びながら抱いた疑問を話した。
「だって、おかしいだろ?
僕は、その……君たちの魔王代行を殺したも同然なんだから……」
最後の方の言葉が、小さく消えていく。
アスティを含め、魔族たちの顔から表情が消えた。
「僕が彼女に関わらなかったら、シャルロッテちゃんは……」
ルークがシャルロッテに近づいた理由は2つあった。
1つ目は、お気に入りの攻略キャラだから。
もう1つは、魔王退治に利用するためだった。
どちらにしろ、現実のシャルロッテを見ての行動ではなく、ゲームを攻略するための行動だった。
ルークはシャルロッテと親しくなり好感度を上げたところで、シャルロッテと退魔師を遭遇させた。優秀な退魔師は瞬時にシャルロッテがまぞくだと見抜き、攻撃に転ずる。こうして、ルークはシャルロッテの護衛を殲滅させることに成功し、攻略キャラのイベントを発生させた。
すべては、魔王復活を阻止、もしくは魔王を倒すためである。
……でも、あの展開は、本当に必要なことだったのだろうか?
あの時は考えもつかなかったことだが、もしあのとき――シャルロッテと親しくなって、そのまま別れていたら――彼女の部下は死なずにすんだかもしれない。
デルフォイの街で、大量の退魔師が死ぬことはなかったかもしれない。
クルミもレベッカも、死なないですんだかもしれない。
そもそも、ルークがシャルロッテに近づかないという選択肢もあったのではないだろうか。
バルサックとビストール連合軍がミューズで大敗を期した後、ルークは活性化した魔族の対策も講じずにデルフォイへ遊びに行ってしまった。そのことに対して、部下からの苦情が届いた。冷静に考えれば、その部下たちが正しいのに、貴重な意見を完全無視して遊びに出かけた。
だって、デルフォイへ行かないという選択肢はゲームに存在しないから。
デルフォイに行かないと、ゲームのシナリオが進まないから。
ルークの心は、どんよりと更に暗く沈む。
セレスティーナが負けた時点で「ゲームとは違う展開になっている」ことに気づくべきだったのだ。ここは、「ゲームの世界」ではなく「現実」なのだと認識するべきだったのだ。
いや、本当ならもっと前――リク・バルサックを見捨てたあの日から――。
「シャルロッテちゃんの未来を……みんなの未来を、僕は壊したんだよ!!」
「未来、でござるか?」
ルークの叫びに、アスティは困惑したような声を出した。
「壊したもなにも……別に、未来なんて最初から分からないでござるよ?」
アスティは、当然のように口にする。
ルークは首を横に振った。アスティに「ゲーム云々」の話をしたところで、信じないだろうし、理解できないだろう。だから、ルークは「もし」の話をする。
「でも、もしかしたら!!
もし、僕がシャルロッテちゃんと出会っていなかったら!!」
「仮定の話なんて、意味のないことでござる。だって、絶対にありえないことなのでござるから」
アスティは、言葉を続けた。
「シャルロッテが君と仲良くしていたことは事実でござるし、彼女がいないのも事実でござる。なら、その事実をふまえて、今を進んでいくだけでござる」
「いまを……進んでいく?」
「そのために来たのでござろう、ルーク殿?」
アスティは複雑な表情を浮かべていた。
それは敵に向けるような表情であり、または友人に向けるような表情でもあり、はたまた無知な子どもに向けるような表情にも見えた。
「それに、過去はどうであれ、いまの君は武器を捨て、魔王軍に会談を求めて来た人間にすぎんでござる。
客人を無下に扱うことは、魔王軍の名が廃るでござるよ」
さぁ、目的を話してごらん。
アスティは、静かに促してきた。
「いまを、進んでいく……か」
ルークは苦笑いを浮かべた。
そうだ、その通りだ。シャルロッテだけではない。リクの人生を間接的に壊し、そのせいで、セレスティーナやクルミたちの命を奪った。でも、それは過去のことだ。その罪を償うために、いまを進んでいる。だから、自分は王都を追放されても取り乱すことなく、旅に出たのではなかったか。
「僕は……」
そう思うと、ルークの心を覆っていた重たい鎖が崩れた気がした。
「僕は、シャルロッテに交渉しに来たんだ」
ルークは少しずつ、旅の目的を話し始めた。
「なんとかして、姫様を生きたまま返してもらえるよう交渉したい。
それから……これは、僕個人的な用事なんだけど、リク姉に……もう一度、謝りたいんだ」
「リク殿に?」
ぴくんっとアスティの眉が動いた。
「言いにくいのだが、話し合いにならないと思うでござるよ?」
「かまわない」
ルークは、リクに殺される覚悟だった。
リク・バルサックがルークのことを殺しても足りないくらい憎んでいる。きっと、ルークの言葉は彼女に通じない。どれだけ真摯に謝っても、まず赦してもらえないだろう。その事実は、もう身をもって十分経験していた。
でも、彼女に謝罪したい。
彼女を救っていれば、みんなの未来は壊れずにすんだかもしれない。
たとえ、「今を進んでいく」と決めたとしても、「リクを見捨てた」という全ての元凶から目を逸らしてはいけないし、この罪は最優先で償わなければならないと心に決めていた。
「彼女に殺されても構わない。それで、彼女の怒りが収まるなら……僕は、死んで罪を償う」
だが、その前にやることがあった。
「だけど、その前に姫様だけは助け出したいんだ。僕に任せられた仕事を、今度こそ完遂したいんだ」
正直、ゲームの攻略キャラとしてではなく、現実に生きる人間として王女を見た時、「絶対に妻にしたい」と願う気持ちは薄くなっていた。
しかし、これは王様に任された仕事である。今までのルークは、「ゲームのイベント」と軽い気持ちで仕事に取り組んでいた。あまり考えず、攻略通りに仕事をこなした結果、だいたい散々な結果で終わっている。
だから、今度こそ仕事を完遂させたい。
ルークは、今度こそ受け持った仕事に責任を持って取り組みたかった。
「……自分にまかせられた仕事を、でござるか」
アスティは、あごに軽く手を添えて考え込み始めた。
そして……やがて、疲れたように長い息を吐いた。
「すまないが、王女の件については私が軽々しく決められるものではないでござる。
これから会議にかける故……そうだな、とりあえず、ルーク殿は会議が終わるまで待ってもらってもかまわないでござるか?」
「ああ、かまわない。必要なら、僕を縄で拘束しても構わないよ」
「いや、だからルーク殿は客人故、そのようなことは……そうだ!」
アスティは、妙案だ!と言わんばかりに手を叩いた。その表情は先程までとは打って変わり、子どもらしい無邪気な色を浮かべていた。
「会議の審議が終わるまで、かなり時間がかかるのでござるよ。しかし、ここで暇を持て余しているというのもつまらないでござろう。
どうでござるか?ルーク殿はデルフォイの祭りに参加して、審議の待ち時間を潰すというのは?」
※
「……って、良かったんですか?」
ルーク・バルサックをデルフォイの街に送り出した後、アスティの部下が口を開いた。
「人間を人間の街に野放しにするなんて、危険すぎますよ? 逃げられたら――」
「監視はつけてあるから問題ないでござるよ」
アスティは、なんでもないように言葉を返した。
事実、アスティもこの後すぐにルークの監視に参加する予定だった。
「それに、ルーク・バルサックはケイティ・フォスターを捕らえるための餌に過ぎないでござるよ」
「餌、でございますか?」
部下は首をかしげる。アスティは、どこか満足げに自分の策戦を説明し始めた。
「ケイティのことだから、ルーク・バルサックとシャルロッテが懇意の仲だったことは知っておろう。
彼女のことだ、なにかしらの方法でルーク・バルサックと接触を図ろうとする可能性が高いでござる」
ケイティがルーク・バルサックを「自分の主君を死に追いやった宿敵」として認識しているのか、それとも「主君のことを大切に想う同志」として認識しているのか分からない。
いずれにしろ、ケイティが街でルークを見かけた場合、何かしらの方法で接触してくるに違いない。
「餌に魚がかかったところを狙えば、探す手間も省けるでござる」
「なるほど、さすがゴルトベルク様のお孫様だ!!」
部下の褒め言葉に、アスティは有頂天になった。鼻をこすりながら、えへんっと胸を張る。
だが、このとき……彼女は大きな穴を見落としていた。
そう、餌で魚を釣る。
餌に釣られる可能性のある魚が、もう一匹……かなり近くの場所にいるという事実を。
********************************************
ルークが目を覚ましたのは、それから数時間後のことだった。
目を開けた時、最初に飛び込んできたのは見慣れない天井だった。薄汚れた布と鉄の枠組みで作られた天井が広がっている。時折、布が風で閃いて、隙間から夜空が覗いていた。
「ここは、どこだ?」
「天幕でござるよ」
無意識に呟いた言葉を拾う声が聞こえた。
声の方に視線を向ければ、そこにはアスティ・ゴルトベルクとその部下達が勢ぞろいしていた。どうやら、ルークの目が覚めるのを待っていたらしい。
「君は、気絶していたでござる」
「それを我らが運んだのだ」
「まったく……人間相手に、なぜ我らが侍従の真似事などを……」
「仕方あるまいよ。一応、客人扱いなのだからな」
アスティに続くように、彼女の部下が代わる代わる状況を説明してくれた。どうやら、魔族たちはルークを客人として――かなり不本意だったみたいだが――丁重に扱ってくれたらしい。ルークは、ふと自分に被せられていた毛布に目を落とす。色、質、触った感じ、どれをとっても、野営に使う毛布にしては一級品だ。
……このことから察するに、かなりの賓客扱いを受けているらしい。
ルークは自分が賓客扱いを受けていると知り、なんだか気持ちが落ち込んだ。
「どうして?」
ルークは毛布を握りしめながら、小さな声で尋ねてみた。
「どうしてとは、なんでござるか?」
アスティは、きょとんっとした表情で聞き返してくる。
ルークは暗い表情のまま、言葉を選びながら抱いた疑問を話した。
「だって、おかしいだろ?
僕は、その……君たちの魔王代行を殺したも同然なんだから……」
最後の方の言葉が、小さく消えていく。
アスティを含め、魔族たちの顔から表情が消えた。
「僕が彼女に関わらなかったら、シャルロッテちゃんは……」
ルークがシャルロッテに近づいた理由は2つあった。
1つ目は、お気に入りの攻略キャラだから。
もう1つは、魔王退治に利用するためだった。
どちらにしろ、現実のシャルロッテを見ての行動ではなく、ゲームを攻略するための行動だった。
ルークはシャルロッテと親しくなり好感度を上げたところで、シャルロッテと退魔師を遭遇させた。優秀な退魔師は瞬時にシャルロッテがまぞくだと見抜き、攻撃に転ずる。こうして、ルークはシャルロッテの護衛を殲滅させることに成功し、攻略キャラのイベントを発生させた。
すべては、魔王復活を阻止、もしくは魔王を倒すためである。
……でも、あの展開は、本当に必要なことだったのだろうか?
あの時は考えもつかなかったことだが、もしあのとき――シャルロッテと親しくなって、そのまま別れていたら――彼女の部下は死なずにすんだかもしれない。
デルフォイの街で、大量の退魔師が死ぬことはなかったかもしれない。
クルミもレベッカも、死なないですんだかもしれない。
そもそも、ルークがシャルロッテに近づかないという選択肢もあったのではないだろうか。
バルサックとビストール連合軍がミューズで大敗を期した後、ルークは活性化した魔族の対策も講じずにデルフォイへ遊びに行ってしまった。そのことに対して、部下からの苦情が届いた。冷静に考えれば、その部下たちが正しいのに、貴重な意見を完全無視して遊びに出かけた。
だって、デルフォイへ行かないという選択肢はゲームに存在しないから。
デルフォイに行かないと、ゲームのシナリオが進まないから。
ルークの心は、どんよりと更に暗く沈む。
セレスティーナが負けた時点で「ゲームとは違う展開になっている」ことに気づくべきだったのだ。ここは、「ゲームの世界」ではなく「現実」なのだと認識するべきだったのだ。
いや、本当ならもっと前――リク・バルサックを見捨てたあの日から――。
「シャルロッテちゃんの未来を……みんなの未来を、僕は壊したんだよ!!」
「未来、でござるか?」
ルークの叫びに、アスティは困惑したような声を出した。
「壊したもなにも……別に、未来なんて最初から分からないでござるよ?」
アスティは、当然のように口にする。
ルークは首を横に振った。アスティに「ゲーム云々」の話をしたところで、信じないだろうし、理解できないだろう。だから、ルークは「もし」の話をする。
「でも、もしかしたら!!
もし、僕がシャルロッテちゃんと出会っていなかったら!!」
「仮定の話なんて、意味のないことでござる。だって、絶対にありえないことなのでござるから」
アスティは、言葉を続けた。
「シャルロッテが君と仲良くしていたことは事実でござるし、彼女がいないのも事実でござる。なら、その事実をふまえて、今を進んでいくだけでござる」
「いまを……進んでいく?」
「そのために来たのでござろう、ルーク殿?」
アスティは複雑な表情を浮かべていた。
それは敵に向けるような表情であり、または友人に向けるような表情でもあり、はたまた無知な子どもに向けるような表情にも見えた。
「それに、過去はどうであれ、いまの君は武器を捨て、魔王軍に会談を求めて来た人間にすぎんでござる。
客人を無下に扱うことは、魔王軍の名が廃るでござるよ」
さぁ、目的を話してごらん。
アスティは、静かに促してきた。
「いまを、進んでいく……か」
ルークは苦笑いを浮かべた。
そうだ、その通りだ。シャルロッテだけではない。リクの人生を間接的に壊し、そのせいで、セレスティーナやクルミたちの命を奪った。でも、それは過去のことだ。その罪を償うために、いまを進んでいる。だから、自分は王都を追放されても取り乱すことなく、旅に出たのではなかったか。
「僕は……」
そう思うと、ルークの心を覆っていた重たい鎖が崩れた気がした。
「僕は、シャルロッテに交渉しに来たんだ」
ルークは少しずつ、旅の目的を話し始めた。
「なんとかして、姫様を生きたまま返してもらえるよう交渉したい。
それから……これは、僕個人的な用事なんだけど、リク姉に……もう一度、謝りたいんだ」
「リク殿に?」
ぴくんっとアスティの眉が動いた。
「言いにくいのだが、話し合いにならないと思うでござるよ?」
「かまわない」
ルークは、リクに殺される覚悟だった。
リク・バルサックがルークのことを殺しても足りないくらい憎んでいる。きっと、ルークの言葉は彼女に通じない。どれだけ真摯に謝っても、まず赦してもらえないだろう。その事実は、もう身をもって十分経験していた。
でも、彼女に謝罪したい。
彼女を救っていれば、みんなの未来は壊れずにすんだかもしれない。
たとえ、「今を進んでいく」と決めたとしても、「リクを見捨てた」という全ての元凶から目を逸らしてはいけないし、この罪は最優先で償わなければならないと心に決めていた。
「彼女に殺されても構わない。それで、彼女の怒りが収まるなら……僕は、死んで罪を償う」
だが、その前にやることがあった。
「だけど、その前に姫様だけは助け出したいんだ。僕に任せられた仕事を、今度こそ完遂したいんだ」
正直、ゲームの攻略キャラとしてではなく、現実に生きる人間として王女を見た時、「絶対に妻にしたい」と願う気持ちは薄くなっていた。
しかし、これは王様に任された仕事である。今までのルークは、「ゲームのイベント」と軽い気持ちで仕事に取り組んでいた。あまり考えず、攻略通りに仕事をこなした結果、だいたい散々な結果で終わっている。
だから、今度こそ仕事を完遂させたい。
ルークは、今度こそ受け持った仕事に責任を持って取り組みたかった。
「……自分にまかせられた仕事を、でござるか」
アスティは、あごに軽く手を添えて考え込み始めた。
そして……やがて、疲れたように長い息を吐いた。
「すまないが、王女の件については私が軽々しく決められるものではないでござる。
これから会議にかける故……そうだな、とりあえず、ルーク殿は会議が終わるまで待ってもらってもかまわないでござるか?」
「ああ、かまわない。必要なら、僕を縄で拘束しても構わないよ」
「いや、だからルーク殿は客人故、そのようなことは……そうだ!」
アスティは、妙案だ!と言わんばかりに手を叩いた。その表情は先程までとは打って変わり、子どもらしい無邪気な色を浮かべていた。
「会議の審議が終わるまで、かなり時間がかかるのでござるよ。しかし、ここで暇を持て余しているというのもつまらないでござろう。
どうでござるか?ルーク殿はデルフォイの祭りに参加して、審議の待ち時間を潰すというのは?」
※
「……って、良かったんですか?」
ルーク・バルサックをデルフォイの街に送り出した後、アスティの部下が口を開いた。
「人間を人間の街に野放しにするなんて、危険すぎますよ? 逃げられたら――」
「監視はつけてあるから問題ないでござるよ」
アスティは、なんでもないように言葉を返した。
事実、アスティもこの後すぐにルークの監視に参加する予定だった。
「それに、ルーク・バルサックはケイティ・フォスターを捕らえるための餌に過ぎないでござるよ」
「餌、でございますか?」
部下は首をかしげる。アスティは、どこか満足げに自分の策戦を説明し始めた。
「ケイティのことだから、ルーク・バルサックとシャルロッテが懇意の仲だったことは知っておろう。
彼女のことだ、なにかしらの方法でルーク・バルサックと接触を図ろうとする可能性が高いでござる」
ケイティがルーク・バルサックを「自分の主君を死に追いやった宿敵」として認識しているのか、それとも「主君のことを大切に想う同志」として認識しているのか分からない。
いずれにしろ、ケイティが街でルークを見かけた場合、何かしらの方法で接触してくるに違いない。
「餌に魚がかかったところを狙えば、探す手間も省けるでござる」
「なるほど、さすがゴルトベルク様のお孫様だ!!」
部下の褒め言葉に、アスティは有頂天になった。鼻をこすりながら、えへんっと胸を張る。
だが、このとき……彼女は大きな穴を見落としていた。
そう、餌で魚を釣る。
餌に釣られる可能性のある魚が、もう一匹……かなり近くの場所にいるという事実を。
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