33 / 76
1 お月様にお願い!
第33話 水と月影
しおりを挟む
「……って、そんなあっさり! ぁ、あっ……ゃあっ……ほ、ほんとに、それ以上下ろさないでくださ……ぁ、あっ、落っこちちゃう……!」
「だからしっかりしがみついてろって言っただろ」
落ちないように、何とかしがみつきはするものの。
ルロイは笑って、わざと身体を揺らそうとしてくる。
「ゆ、揺らさないで……やんっ……ぁっ……ぁうんっ……下ろしちゃだめ……いじわる! やあんっ……入っ……もう……む、むりです……待って」
「この状態で、待てのできる狼がいるとでも」
「やっ……ぁあっ……あっ……どうしましょ……ま、ま、待て、待って……って」
シェリーは、一瞬、口ごもった。
「……あ……」
「どうした?」
シェリーは無言で頬を真っ赤に染めた。
「分かった、じゃあ始める」
「ちっ、違いま……ぁっ、あんっ! 待って、おねがい、揺らさないで……落ちちゃいます……ぁっ、あっ……!」
「手を離すなよ。落ちるぞ」
「ぁっ、ぁんっ……ばかっ……!」
「耳元で罵られるのって、たまんねえな。俺、ちょっと癖になりそう」
「ぁんっ……!」
肌と、肌を、完全に密着させて。
赤ん坊のように抱かれている。
それこそ手を離せば泉に背中から落ちてしまう。そう思うと、すがりつくほかはなかった。
「やっ……あ、あんっ……ルロイ、さんの……ばか……あっ……! そんな心配してくれるぐらいなら下ろして……こんな恰好は、いやです……ぁ、あっ、あんっ……見えちゃう……はずかしいです……ううん……あっ……!」
「誰も見てねえって」
首筋を舐められ、耳朶を噛まれて。
愛をささやかれるたびに、腰が、知らず知らずのうちに甘く悶え、ゆらめく。
喘ぎ声がもれる。
吐息が、かすれる。
「でも、シェリーがこんなに積極的に抱きついてくれるなら、ずっとこのままでいようかなあ……?」
「だめですってば……ぁっ……ぁっ、止めて……わたし、もう、なっちゃう、うぅん……!」
「だから、しばらくは止まらないって言ってんだろ」
ルロイは、すがりつくシェリーにほおずりした。
いじわるなキスをして。それから、ゆらゆら腰を揺らし、耳元にさえずる甘い喘ぎ声を楽しんでいる。
「ゃ、あっ、ああ……落っこちちゃう……やだ……」
「大丈夫、落とさないって。ていうかそんなもったいないことできるわけないだろ。ただでさえ可愛くってたまらねえのに、その上、そんな声で泣かれてたら、もっと……もっと、きゅんきゅん言わせたいって思うのが心情ってもんだろ」
「ぁぁんっ、ばかっ……やぁっ、あっ……もう、お月様……お願いっ……こんなルロイさん、はやく何とかしてくださ……ぁっ、あっ、あんっ……!」
水面に映った月影が、寝乱れたベッドシーツのようにくしゃくしゃに跳ね、飛沫を散らして激しく波打つ。
「そんなに?」
「ちっ……ちが……そうじゃなくって」
シェリーは真っ赤な顔をルロイの胸にうずめ、悶えた。
「ぁんっ、あふっ、あっ、あ、あ、ううんっ……お月様の、ばかあっ……はやく、このルロイさんを、元のルロイさんに戻して……ぁんっ、あっ、……!」
「無理だね。たぶん、俺、一生、シェリーに発情しっぱなしだと思う」
「ゃあん……っ!」
ルロイは、シェリーを抱きしめたまま、しばらく動かなかった。
「俺はずっと、このままがいいな。シェリーとつがいになって、ずっと一緒に生きていたい」
優しく笑いかけてくる。
シェリーは顔を赤らめた。もじもじと身じろぎして、ルロイの視線から逃れようと試みる。
「わ……わたしも……」
「も?」
シェリーは、耐えきれず、真っ赤になった顔をルロイの胸にうずめた。
「はい……」
恥ずかしくて。
嬉しくて。
顔も、上げられなかった。
優しいルロイの声が、いざなう。何度も、キスされる。ぎゅっ、と、暖かい腕で全身を抱きしめられる。
ルロイは、にやりと笑った。
「よし、じゃ、続きしようか」
「えっ……ええーーっ!?」
結局、どんなにお願いしても、その日は朝までぜんっぜん、眠らせてもらえなかったとか何とか――
その日から、シェリーの日課は決まった。
どうかルロイさんが、いつまでも――やさしいルロイさんでいてくれますように。
お月様にお願い。
「だからしっかりしがみついてろって言っただろ」
落ちないように、何とかしがみつきはするものの。
ルロイは笑って、わざと身体を揺らそうとしてくる。
「ゆ、揺らさないで……やんっ……ぁっ……ぁうんっ……下ろしちゃだめ……いじわる! やあんっ……入っ……もう……む、むりです……待って」
「この状態で、待てのできる狼がいるとでも」
「やっ……ぁあっ……あっ……どうしましょ……ま、ま、待て、待って……って」
シェリーは、一瞬、口ごもった。
「……あ……」
「どうした?」
シェリーは無言で頬を真っ赤に染めた。
「分かった、じゃあ始める」
「ちっ、違いま……ぁっ、あんっ! 待って、おねがい、揺らさないで……落ちちゃいます……ぁっ、あっ……!」
「手を離すなよ。落ちるぞ」
「ぁっ、ぁんっ……ばかっ……!」
「耳元で罵られるのって、たまんねえな。俺、ちょっと癖になりそう」
「ぁんっ……!」
肌と、肌を、完全に密着させて。
赤ん坊のように抱かれている。
それこそ手を離せば泉に背中から落ちてしまう。そう思うと、すがりつくほかはなかった。
「やっ……あ、あんっ……ルロイ、さんの……ばか……あっ……! そんな心配してくれるぐらいなら下ろして……こんな恰好は、いやです……ぁ、あっ、あんっ……見えちゃう……はずかしいです……ううん……あっ……!」
「誰も見てねえって」
首筋を舐められ、耳朶を噛まれて。
愛をささやかれるたびに、腰が、知らず知らずのうちに甘く悶え、ゆらめく。
喘ぎ声がもれる。
吐息が、かすれる。
「でも、シェリーがこんなに積極的に抱きついてくれるなら、ずっとこのままでいようかなあ……?」
「だめですってば……ぁっ……ぁっ、止めて……わたし、もう、なっちゃう、うぅん……!」
「だから、しばらくは止まらないって言ってんだろ」
ルロイは、すがりつくシェリーにほおずりした。
いじわるなキスをして。それから、ゆらゆら腰を揺らし、耳元にさえずる甘い喘ぎ声を楽しんでいる。
「ゃ、あっ、ああ……落っこちちゃう……やだ……」
「大丈夫、落とさないって。ていうかそんなもったいないことできるわけないだろ。ただでさえ可愛くってたまらねえのに、その上、そんな声で泣かれてたら、もっと……もっと、きゅんきゅん言わせたいって思うのが心情ってもんだろ」
「ぁぁんっ、ばかっ……やぁっ、あっ……もう、お月様……お願いっ……こんなルロイさん、はやく何とかしてくださ……ぁっ、あっ、あんっ……!」
水面に映った月影が、寝乱れたベッドシーツのようにくしゃくしゃに跳ね、飛沫を散らして激しく波打つ。
「そんなに?」
「ちっ……ちが……そうじゃなくって」
シェリーは真っ赤な顔をルロイの胸にうずめ、悶えた。
「ぁんっ、あふっ、あっ、あ、あ、ううんっ……お月様の、ばかあっ……はやく、このルロイさんを、元のルロイさんに戻して……ぁんっ、あっ、……!」
「無理だね。たぶん、俺、一生、シェリーに発情しっぱなしだと思う」
「ゃあん……っ!」
ルロイは、シェリーを抱きしめたまま、しばらく動かなかった。
「俺はずっと、このままがいいな。シェリーとつがいになって、ずっと一緒に生きていたい」
優しく笑いかけてくる。
シェリーは顔を赤らめた。もじもじと身じろぎして、ルロイの視線から逃れようと試みる。
「わ……わたしも……」
「も?」
シェリーは、耐えきれず、真っ赤になった顔をルロイの胸にうずめた。
「はい……」
恥ずかしくて。
嬉しくて。
顔も、上げられなかった。
優しいルロイの声が、いざなう。何度も、キスされる。ぎゅっ、と、暖かい腕で全身を抱きしめられる。
ルロイは、にやりと笑った。
「よし、じゃ、続きしようか」
「えっ……ええーーっ!?」
結局、どんなにお願いしても、その日は朝までぜんっぜん、眠らせてもらえなかったとか何とか――
その日から、シェリーの日課は決まった。
どうかルロイさんが、いつまでも――やさしいルロイさんでいてくれますように。
お月様にお願い。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
陛下から一年以内に世継ぎが生まれなければ王子と離縁するように言い渡されました
夢見 歩
恋愛
「そなたが1年以内に懐妊しない場合、
そなたとサミュエルは離縁をし
サミュエルは新しい妃を迎えて
世継ぎを作ることとする。」
陛下が夫に出すという条件を
事前に聞かされた事により
わたくしの心は粉々に砕けました。
わたくしを愛していないあなたに対して
わたくしが出来ることは〇〇だけです…
夫が「愛していると言ってくれ」とうるさいのですが、残念ながら結婚した記憶がございません
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
【完結しました】
王立騎士団団長を務めるランスロットと事務官であるシャーリーの結婚式。
しかしその結婚式で、ランスロットに恨みを持つ賊が襲い掛かり、彼を庇ったシャーリーは階段から落ちて気を失ってしまった。
「君は俺と結婚したんだ」
「『愛している』と、言ってくれないだろうか……」
目を覚ましたシャーリーには、目の前の男と結婚した記憶が無かった。
どうやら、今から二年前までの記憶を失ってしまったらしい――。
王太子殿下の想い人が騎士団長だと知った私は、張り切って王太子殿下と婚約することにしました!
奏音 美都
恋愛
ソリティア男爵令嬢である私、イリアは舞踏会場を離れてバルコニーで涼んでいると、そこに王太子殿下の逢引き現場を目撃してしまいました。
そのお相手は……ロワール騎士団長様でした。
あぁ、なんてことでしょう……
こんな、こんなのって……尊すぎますわ!!
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる