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男装メガネっ子元帥、お楽しみの真っ最中を覗いてダメージを受ける
「さては君、私のぱんつ姿を見たな?」
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ノックもせずにチェシーが顔を覗かせる。
「謝りに来た。さっきは悪かっ」
ぱんつ越しに眼が合った。
チェシーはドアノブに手を掛けたままの状態で動かなくなった。視線が、床に転がって足をバタつかせている謎の巾着袋へと向けられる。
ニコルは、おそるおそる、声をかけた。
「……あ、あの、何か重大な誤解をなさっているのではないかと」
返事がない。汗がたらたら流れ出した。
「ええとですね、これにはその、いろいろと訳があって」
「ニコル」
チェシーは押し殺した声をあげた。
「は、はい」
何を言われるかと、身を固くするニコルの目の前で。
「お楽しみの真っ最中に邪魔して悪かった」
チェシーは、いきなりドアをばたんと閉めた。
「ちょっと、チェシーさん! 変な誤解しないでください!」
ニコルは悲鳴にちかい叫びをあげて、閉まりゆくドアにすがりついた。
チェシーがドア越しにくっくっと笑っている。
「パンツ被る趣味があったとはな。もう、ホーラダイン中将に教えるしかないな」
「うえっ」
絶句する。
「彼の秘密メモは相当ヤバイぞ。間違いなく全面ぶち抜きで号外を配られるな。『ニコル師団長、近習を逆さ巾着に! 変態趣味発覚か?』」
「な、な、何……」
ふらふらとよろめく。
あの男ならやるかもしれない。いいや、絶対やる。それこそ鬼の首を取ったような勢いでゴシップ怪文書をばらまいて歩くに違いない。
「うあああああ……」
これは悪夢だ。
悪夢に違いない。
悪夢であって欲しい……!
「それが嫌なら、先ほどのあれを取り消せ」
「何を!」
「私を嘘つき扱いしたことだ」
わずかにドアが開く。隙間から、チェシーの目だけがニヤニヤと凶悪に光っていた。
「さもなくばホーラダインにバラす」
ニコルは喉の奥で変なうめき声をあげた。
「あなたって人は……騎士ともあろうものが司法取引など卑怯だと思わないんですか!」
「何とでも言え、ぱんつマニア」
「マニアじゃないもん!」
「じゃあもっと言ってやる。ぱんつ仮面。ぱんつメガネ」
「あうっ」
言葉がぐさぐさと耳に突き刺さる。
「チョビヒゲぱんつ。ぱんつ覗き魔。ぱんつ金魚」
「うぐうっ」
「私の金色ぱんつも被ってみるか?」
「誰が金色ですか! 赤っ」
「ほほう?」
喜色満面、まさに悪魔の笑みだった。
「さては君、私のぱんつ姿を見たな?」
「違あああああう見てませんってば!」
ニコルは頭の中の映像を必死で上書きしようとして、ぶんぶん髪の毛を振り回した。
「この野郎、フェリシアのぱんつより私のぱんつがそんなに気になるか。第一面差し替えだな。『ニコル師団長、男のぱんつに興味津々疑惑!』 だが私にだけは惚れるなよ。ホーラダイン中将が待っている」
「違う違うちがあああああーーーう!」
かくてニコルの悲痛な叫びは、魔王のごときチェシーの高笑いと幾重にも重なり合い響きあって、「またかよ……」という兵士たちの嘆息を引き起こしつつ、城砦じゅうにいつまでも、いつまでも切にこだましていくのであった。
対チェシー戦。本日も惨敗なり。
【第二話 終】
「謝りに来た。さっきは悪かっ」
ぱんつ越しに眼が合った。
チェシーはドアノブに手を掛けたままの状態で動かなくなった。視線が、床に転がって足をバタつかせている謎の巾着袋へと向けられる。
ニコルは、おそるおそる、声をかけた。
「……あ、あの、何か重大な誤解をなさっているのではないかと」
返事がない。汗がたらたら流れ出した。
「ええとですね、これにはその、いろいろと訳があって」
「ニコル」
チェシーは押し殺した声をあげた。
「は、はい」
何を言われるかと、身を固くするニコルの目の前で。
「お楽しみの真っ最中に邪魔して悪かった」
チェシーは、いきなりドアをばたんと閉めた。
「ちょっと、チェシーさん! 変な誤解しないでください!」
ニコルは悲鳴にちかい叫びをあげて、閉まりゆくドアにすがりついた。
チェシーがドア越しにくっくっと笑っている。
「パンツ被る趣味があったとはな。もう、ホーラダイン中将に教えるしかないな」
「うえっ」
絶句する。
「彼の秘密メモは相当ヤバイぞ。間違いなく全面ぶち抜きで号外を配られるな。『ニコル師団長、近習を逆さ巾着に! 変態趣味発覚か?』」
「な、な、何……」
ふらふらとよろめく。
あの男ならやるかもしれない。いいや、絶対やる。それこそ鬼の首を取ったような勢いでゴシップ怪文書をばらまいて歩くに違いない。
「うあああああ……」
これは悪夢だ。
悪夢に違いない。
悪夢であって欲しい……!
「それが嫌なら、先ほどのあれを取り消せ」
「何を!」
「私を嘘つき扱いしたことだ」
わずかにドアが開く。隙間から、チェシーの目だけがニヤニヤと凶悪に光っていた。
「さもなくばホーラダインにバラす」
ニコルは喉の奥で変なうめき声をあげた。
「あなたって人は……騎士ともあろうものが司法取引など卑怯だと思わないんですか!」
「何とでも言え、ぱんつマニア」
「マニアじゃないもん!」
「じゃあもっと言ってやる。ぱんつ仮面。ぱんつメガネ」
「あうっ」
言葉がぐさぐさと耳に突き刺さる。
「チョビヒゲぱんつ。ぱんつ覗き魔。ぱんつ金魚」
「うぐうっ」
「私の金色ぱんつも被ってみるか?」
「誰が金色ですか! 赤っ」
「ほほう?」
喜色満面、まさに悪魔の笑みだった。
「さては君、私のぱんつ姿を見たな?」
「違あああああう見てませんってば!」
ニコルは頭の中の映像を必死で上書きしようとして、ぶんぶん髪の毛を振り回した。
「この野郎、フェリシアのぱんつより私のぱんつがそんなに気になるか。第一面差し替えだな。『ニコル師団長、男のぱんつに興味津々疑惑!』 だが私にだけは惚れるなよ。ホーラダイン中将が待っている」
「違う違うちがあああああーーーう!」
かくてニコルの悲痛な叫びは、魔王のごときチェシーの高笑いと幾重にも重なり合い響きあって、「またかよ……」という兵士たちの嘆息を引き起こしつつ、城砦じゅうにいつまでも、いつまでも切にこだましていくのであった。
対チェシー戦。本日も惨敗なり。
【第二話 終】
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