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第1章 初恋
第2話 逢瀬
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旦那様の監視は日を追うごとに厳しくなっている。
最近の華子がそれを苦痛に感じているのは、清子もよく知っていた。
(どうかこの半刻だけでも、華子様が幸せな時間を過ごされますように…)
華子は心を躍らせながら庭へ入った。目には輝きが戻っている。
高松家の庭はとても広く、美しい。
そこには庭を整える愛しい人の姿が。
「どのお花も素敵ね」
「…華姫様!」
「会いたかったわ」
(本当に、会いたかった…)
「私も、お会いしとうございました。」
彼はそう言って、華子をそっと抱きしめた。
「…ふふっ。それは良かった。随分と長い間来ないから、私のことをもう好いていないのかと不安に思っていたのよ?」
華子が冗談混じりに言う。
「申し訳ございません。中々お屋敷に呼ばれず、遅くなってしまいました。庭師の身分を悔やむばかりです。」
「あら、それを言うなら私も同じよ。高松家の娘という身分が恨めしい。」
二人とも分かっていたのだ。良家の娘と庭師が結ばれることなどない、と。
それでも、想いは募るばかり。
長い間、そのまま抱きしめ合った。
「黄色い秋桜、あなたが贈ってくれたのでしょう?とても気に入ったわ。ありがとう。」
「喜んでいただけて嬉しいです。花言葉は、」
「知ってる。『自然美』でしょう?」
「…!ご存知だったのですか。」
「ええ。数年前に、あなたが『秋桜が好き』って言ってたでしょう?それで気になって調べたのよ。」
「自然の中に輝く黄色い秋桜と、華姫様のお美しさが重なって見えたので…」
頬を赤らめる彼を、華子は愛おしそうにじっと見つめた。
そっと口づけを交わす。もう、戻らなければならないのだ。
「ねぇ、今度いつ会える?」
「半月のうちには参ります。今日のように、お花をお贈りしますね。」
「分かった、待ってるわ。」
「はい。華姫様…愛しています。心から。」
「…私もよ。愛してる。」
名残惜しそうに、もう一度口づけを交わし、華子は部屋に戻った。
先に戻っていた清子が出迎える。
「お帰りなさいませ、華子様。」
「ただいま。清子、秋桜を生けて頂戴。」
「そう仰ると思って、既にご用意しております。」
清子は、微笑みながらそう言った。
「…ふふっ。流石、清子ね。」
(清子が居てくれて良かった…)
別れの悲しみによって輝きを失っていた華子の目は、清子のおかげで少し輝きを取り戻した。
最近の華子がそれを苦痛に感じているのは、清子もよく知っていた。
(どうかこの半刻だけでも、華子様が幸せな時間を過ごされますように…)
華子は心を躍らせながら庭へ入った。目には輝きが戻っている。
高松家の庭はとても広く、美しい。
そこには庭を整える愛しい人の姿が。
「どのお花も素敵ね」
「…華姫様!」
「会いたかったわ」
(本当に、会いたかった…)
「私も、お会いしとうございました。」
彼はそう言って、華子をそっと抱きしめた。
「…ふふっ。それは良かった。随分と長い間来ないから、私のことをもう好いていないのかと不安に思っていたのよ?」
華子が冗談混じりに言う。
「申し訳ございません。中々お屋敷に呼ばれず、遅くなってしまいました。庭師の身分を悔やむばかりです。」
「あら、それを言うなら私も同じよ。高松家の娘という身分が恨めしい。」
二人とも分かっていたのだ。良家の娘と庭師が結ばれることなどない、と。
それでも、想いは募るばかり。
長い間、そのまま抱きしめ合った。
「黄色い秋桜、あなたが贈ってくれたのでしょう?とても気に入ったわ。ありがとう。」
「喜んでいただけて嬉しいです。花言葉は、」
「知ってる。『自然美』でしょう?」
「…!ご存知だったのですか。」
「ええ。数年前に、あなたが『秋桜が好き』って言ってたでしょう?それで気になって調べたのよ。」
「自然の中に輝く黄色い秋桜と、華姫様のお美しさが重なって見えたので…」
頬を赤らめる彼を、華子は愛おしそうにじっと見つめた。
そっと口づけを交わす。もう、戻らなければならないのだ。
「ねぇ、今度いつ会える?」
「半月のうちには参ります。今日のように、お花をお贈りしますね。」
「分かった、待ってるわ。」
「はい。華姫様…愛しています。心から。」
「…私もよ。愛してる。」
名残惜しそうに、もう一度口づけを交わし、華子は部屋に戻った。
先に戻っていた清子が出迎える。
「お帰りなさいませ、華子様。」
「ただいま。清子、秋桜を生けて頂戴。」
「そう仰ると思って、既にご用意しております。」
清子は、微笑みながらそう言った。
「…ふふっ。流石、清子ね。」
(清子が居てくれて良かった…)
別れの悲しみによって輝きを失っていた華子の目は、清子のおかげで少し輝きを取り戻した。
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