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「サヤカ、すまない」
笑いのツボに入ったお姉さんを残し、私達は早々に邸をでた。
とりあえず生活に必要な服など、街でルイ様に選んでもらうことになった。
お城からいただいたお小遣いはあるけれど、生活用品を購入するには心許ない。
いずれ働いて返しますと約束をして、ルイ様に購入していただいた
ルイ様は返す必要はない、と言ってくれたのだけど。
何から何までお世話になるのは気が引ける。
この国で働いていけるのかな。
聖女様が帰ってこられるまでは、どこかで働き口を探さないといけない。
買い物を終えて、ルイ様と過ごした家へと転移で移動する。
魔法って便利だ。
本当に一瞬で別の場所へと移動できる。
ただその際にルイ様と密着することになるのが慣れないけど……
「荷物はとりあえずこの辺りで。少し休もうか?」
ルイ様がお茶を淹れてくれる。
「サヤカ、先程は姉上がすまない。悪い方ではないのだが」
『とても明るいお姉さんですね』
正直、アンナ様とルイ様がうらやましいと思った。
私は一人っ子だし、両親は仕事でいつも留守だった。
まぁ、私もスマホばっか触ってて。
たまに一緒にいても、まともに会話してなかったも。
大学に入ってからは、私もアルバイトを始めて忙しくて……
卒業して一人暮らしを初めてからは、数えるほどしか連絡をとっていない。
お母さん達も、さすがに急にいなくなったら心配してるよね…
連絡とってないから気づかないかな……
「サヤカはご家族は?
つらいことを聞いたな、すまない」
私の顔が曇ったのを、ルイ様は見逃さなかった。
『謝らないでください。
私は姉妹とかはいないです。
ルイ様には素敵なお姉さんがいてうらやましいです』
「姉上は、良くも悪くも強烈な印象を与えるからな。」
文句を言いながらも、アンナ様のことを話すルイ様の表情は明るい。仲の良さが垣間見える。
『仲がいいのですね。
私の両親は、仕事でいつも忙しくて……
子供のころから、あまり家族で会話した記憶がないんです』
「そうか、お忙しい方達なのだな。」
『はい、でも…私が話そうとしなかったのかもしれません。
空気のような存在と思っていたので。
ひどい娘ですよね?
私…スマホばかりしてたし。
あ、スマホというのは友達と連絡とったりすることもできて、ゲームとかするものです。
親と会話するよりも、スマホ見てる方が楽しくて。
傍にいるのが当たり前だと。
ほんとにひどい娘です。私って。
しかもこんな風に突然いなくなって……
きっと、両親は……あれ、私…』
思わず涙が溢れて視界がぼやける。
ルイ様は椅子から立ち上がると、私の傍に近づいてきて優しく頭をなでてくれた。
「気休めになるといいのだが」
こんな風に撫でられると安心する。
自立して大人になったつもりだったのに、精神はまだまだ子供だ。
こんなんじゃダメなのに。
「異世界から来た者が、こちらに定着すると、あちらの世界にいる者の記憶が修正されるらしい」
『修正?』
「あぁ。文献にはそう書かれている。
あちらの世界を覗ける力を持った者がいたのだろうな。」
ルイ様は知っている異世界に関する情報を、ゆっくりと説明してくれる。
『それは、つまり…私も忘れてしまうということですか?
家族のことや日本のことも?』
「いや。忘れることはないが、気持ちが軽くなるようだ。
あちらの世界からサヤカの記憶は消えても、サヤカ自身は覚えている。
だが、会いたいというほどの強い想いは抱かなくなるそうだ。
実際は、どうなのかは分からない。
心に折り合いをつけて、気丈に振る舞っていたのかもしれないが━━そのように聞いている。
サヤカ、酷なことを言うようだが、過去を振り返らず、これからのことを考えてはもらえないだろうか?
私が傍にいる」
『ルイ様?』
笑いのツボに入ったお姉さんを残し、私達は早々に邸をでた。
とりあえず生活に必要な服など、街でルイ様に選んでもらうことになった。
お城からいただいたお小遣いはあるけれど、生活用品を購入するには心許ない。
いずれ働いて返しますと約束をして、ルイ様に購入していただいた
ルイ様は返す必要はない、と言ってくれたのだけど。
何から何までお世話になるのは気が引ける。
この国で働いていけるのかな。
聖女様が帰ってこられるまでは、どこかで働き口を探さないといけない。
買い物を終えて、ルイ様と過ごした家へと転移で移動する。
魔法って便利だ。
本当に一瞬で別の場所へと移動できる。
ただその際にルイ様と密着することになるのが慣れないけど……
「荷物はとりあえずこの辺りで。少し休もうか?」
ルイ様がお茶を淹れてくれる。
「サヤカ、先程は姉上がすまない。悪い方ではないのだが」
『とても明るいお姉さんですね』
正直、アンナ様とルイ様がうらやましいと思った。
私は一人っ子だし、両親は仕事でいつも留守だった。
まぁ、私もスマホばっか触ってて。
たまに一緒にいても、まともに会話してなかったも。
大学に入ってからは、私もアルバイトを始めて忙しくて……
卒業して一人暮らしを初めてからは、数えるほどしか連絡をとっていない。
お母さん達も、さすがに急にいなくなったら心配してるよね…
連絡とってないから気づかないかな……
「サヤカはご家族は?
つらいことを聞いたな、すまない」
私の顔が曇ったのを、ルイ様は見逃さなかった。
『謝らないでください。
私は姉妹とかはいないです。
ルイ様には素敵なお姉さんがいてうらやましいです』
「姉上は、良くも悪くも強烈な印象を与えるからな。」
文句を言いながらも、アンナ様のことを話すルイ様の表情は明るい。仲の良さが垣間見える。
『仲がいいのですね。
私の両親は、仕事でいつも忙しくて……
子供のころから、あまり家族で会話した記憶がないんです』
「そうか、お忙しい方達なのだな。」
『はい、でも…私が話そうとしなかったのかもしれません。
空気のような存在と思っていたので。
ひどい娘ですよね?
私…スマホばかりしてたし。
あ、スマホというのは友達と連絡とったりすることもできて、ゲームとかするものです。
親と会話するよりも、スマホ見てる方が楽しくて。
傍にいるのが当たり前だと。
ほんとにひどい娘です。私って。
しかもこんな風に突然いなくなって……
きっと、両親は……あれ、私…』
思わず涙が溢れて視界がぼやける。
ルイ様は椅子から立ち上がると、私の傍に近づいてきて優しく頭をなでてくれた。
「気休めになるといいのだが」
こんな風に撫でられると安心する。
自立して大人になったつもりだったのに、精神はまだまだ子供だ。
こんなんじゃダメなのに。
「異世界から来た者が、こちらに定着すると、あちらの世界にいる者の記憶が修正されるらしい」
『修正?』
「あぁ。文献にはそう書かれている。
あちらの世界を覗ける力を持った者がいたのだろうな。」
ルイ様は知っている異世界に関する情報を、ゆっくりと説明してくれる。
『それは、つまり…私も忘れてしまうということですか?
家族のことや日本のことも?』
「いや。忘れることはないが、気持ちが軽くなるようだ。
あちらの世界からサヤカの記憶は消えても、サヤカ自身は覚えている。
だが、会いたいというほどの強い想いは抱かなくなるそうだ。
実際は、どうなのかは分からない。
心に折り合いをつけて、気丈に振る舞っていたのかもしれないが━━そのように聞いている。
サヤカ、酷なことを言うようだが、過去を振り返らず、これからのことを考えてはもらえないだろうか?
私が傍にいる」
『ルイ様?』
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