39 / 70
第2部
2
しおりを挟む
「いらっしゃいませ。三日月亭へようこそ。お食事のみのご利用でしたら、あちらの空いてるお席へどうぞ。」
「こんちにちは、ソフィアちゃん。
ランチ3つ頼むよ」
「はい、ランチ3つですね。今日のランチはルイーザさん特製のポトフです。」
三日月亭のお昼時は、混雑解消のためにメニューは日替わりランチのみの提供となっている。
ルイーザさんの作るポトフは、季節の食材をコトコト煮込んだ人気メニューだ。
ルイーザさんにレシピを教わって、最近やっと私も再現できるようになったところだ。
と言っても、まだお客様に提供する自信がなくて…
ルイーザさんからは大丈夫だとは言われているのだけど。
練習も兼ねて、時々自分用に煮こんでいる。
今日も朝煮込んだので、お昼と夜と、明日の朝食べる分まであるかなと思う。
お給金までいただいているし、何から何までお世話になるのは申し訳ないので、少しづつ自立しようと心がけている。
その一環として食事は別に摂らせてもらうことにした。
部屋代も受け取ってもらえなくて…
もう逃げる必要もなくなったので、そろそろ自分で部屋を借りようかなと考えている。
ダンさんとルイーザさんには本当にお世話になっている。二人への恩返しができていないので、できればここでのお仕事は続けていきたい。
「いらっしゃいませ……グレッグ様?」
グレッグは入口の扉を開けると、すぐにソフィアの元へと向かう。騎士服姿のグレッグが通るだけで、周囲はちらちらと視線を送る。
「ソフィア、変わりはないか?」
「ふふふ、グレッグ様、毎日お会いしてるじゃないですか」
グレッグは、仕事帰りにいつも三日月邸へと顔を出すようになっていた。
ソフィアの元気な姿を確認しないと落ち着かないのだ。
時間の遅くなった時は、こっそり2階のソフィアの部屋の窓から覗くほどに…
「…まぁそうだが、一緒にいない時にソフィアの身に何か起こっていないか、心配なんだ。私が常に傍にいられるといいのだが」
「大丈夫です。でも……うれしいです」
ソフィアは、頬を染めて恥ずかしそうに答える。
その様子を目にしたグレッグは「かわいい」と言いながら、ソフィアの髪を少し指に絡めとり口づけを落とす。
「グ、グ、グレッグ様…他の人が見てます」
「問題ない。ソフィアの照れた顔を他のやからに見せたくはないが」
「あ、あの、でも、お仕事の途中なのでは…後ろの方が…」
「ん?」
ソフィアとの貴重な癒しの時間を邪魔する奴は誰だと思いつつ振り向く。
「ど、どーもっす。先輩…」
「キース、死にたいんだな」
「は⁉︎いや、いや、いや、俺は隊長に言われたんすよ。先輩がちゃんと手紙を届けるか見てこいって。
なのに先輩が、いきなりいちゃつきだすから、声かけるタイミングがなくて…
先輩の恋人ですか?美人さんですね
、あっ!もしかして、この間先輩と抱き合っていた…」
「えっ」
ソフィアはキースの言葉に動揺して焦りだし、グレッグに助けを求める。
「キース、私の言ったことをもう忘れたのか? 視界に入れるなと言ったはずだが」
「ちょっ、先輩、目の前にいるのに無理っすよ」
「表へ出ろ」
グレッグはキースの襟首を掴むと、引っ張って外へと連れて行こうとする
「グレッグ様、私なら大丈夫ですから」
「先輩、暴力はいけないっす、横暴です」
「暴力ではない。これは後輩への指導だ」
「揉め事は困りますよ、グレッグ様」
騒ぎを聞きつけたルイーザさんが、奥から顔を出す。
「ルイーザさん」
「ソフィア、少し落ち着いたから休憩へお入り。ここだと騒がしいからね。ソフィアの部屋でゆっくりしておいで。」
「ルイーザさん、すみません。ありがとうございます。では、グレッグ様と…お連れの方もどうぞこちらです」
ソフィアはルイーザに断りを入れると、二人を自身の部屋へと案内することにした。
「こんちにちは、ソフィアちゃん。
ランチ3つ頼むよ」
「はい、ランチ3つですね。今日のランチはルイーザさん特製のポトフです。」
三日月亭のお昼時は、混雑解消のためにメニューは日替わりランチのみの提供となっている。
ルイーザさんの作るポトフは、季節の食材をコトコト煮込んだ人気メニューだ。
ルイーザさんにレシピを教わって、最近やっと私も再現できるようになったところだ。
と言っても、まだお客様に提供する自信がなくて…
ルイーザさんからは大丈夫だとは言われているのだけど。
練習も兼ねて、時々自分用に煮こんでいる。
今日も朝煮込んだので、お昼と夜と、明日の朝食べる分まであるかなと思う。
お給金までいただいているし、何から何までお世話になるのは申し訳ないので、少しづつ自立しようと心がけている。
その一環として食事は別に摂らせてもらうことにした。
部屋代も受け取ってもらえなくて…
もう逃げる必要もなくなったので、そろそろ自分で部屋を借りようかなと考えている。
ダンさんとルイーザさんには本当にお世話になっている。二人への恩返しができていないので、できればここでのお仕事は続けていきたい。
「いらっしゃいませ……グレッグ様?」
グレッグは入口の扉を開けると、すぐにソフィアの元へと向かう。騎士服姿のグレッグが通るだけで、周囲はちらちらと視線を送る。
「ソフィア、変わりはないか?」
「ふふふ、グレッグ様、毎日お会いしてるじゃないですか」
グレッグは、仕事帰りにいつも三日月邸へと顔を出すようになっていた。
ソフィアの元気な姿を確認しないと落ち着かないのだ。
時間の遅くなった時は、こっそり2階のソフィアの部屋の窓から覗くほどに…
「…まぁそうだが、一緒にいない時にソフィアの身に何か起こっていないか、心配なんだ。私が常に傍にいられるといいのだが」
「大丈夫です。でも……うれしいです」
ソフィアは、頬を染めて恥ずかしそうに答える。
その様子を目にしたグレッグは「かわいい」と言いながら、ソフィアの髪を少し指に絡めとり口づけを落とす。
「グ、グ、グレッグ様…他の人が見てます」
「問題ない。ソフィアの照れた顔を他のやからに見せたくはないが」
「あ、あの、でも、お仕事の途中なのでは…後ろの方が…」
「ん?」
ソフィアとの貴重な癒しの時間を邪魔する奴は誰だと思いつつ振り向く。
「ど、どーもっす。先輩…」
「キース、死にたいんだな」
「は⁉︎いや、いや、いや、俺は隊長に言われたんすよ。先輩がちゃんと手紙を届けるか見てこいって。
なのに先輩が、いきなりいちゃつきだすから、声かけるタイミングがなくて…
先輩の恋人ですか?美人さんですね
、あっ!もしかして、この間先輩と抱き合っていた…」
「えっ」
ソフィアはキースの言葉に動揺して焦りだし、グレッグに助けを求める。
「キース、私の言ったことをもう忘れたのか? 視界に入れるなと言ったはずだが」
「ちょっ、先輩、目の前にいるのに無理っすよ」
「表へ出ろ」
グレッグはキースの襟首を掴むと、引っ張って外へと連れて行こうとする
「グレッグ様、私なら大丈夫ですから」
「先輩、暴力はいけないっす、横暴です」
「暴力ではない。これは後輩への指導だ」
「揉め事は困りますよ、グレッグ様」
騒ぎを聞きつけたルイーザさんが、奥から顔を出す。
「ルイーザさん」
「ソフィア、少し落ち着いたから休憩へお入り。ここだと騒がしいからね。ソフィアの部屋でゆっくりしておいで。」
「ルイーザさん、すみません。ありがとうございます。では、グレッグ様と…お連れの方もどうぞこちらです」
ソフィアはルイーザに断りを入れると、二人を自身の部屋へと案内することにした。
32
お気に入りに追加
354
あなたにおすすめの小説
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)
miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます)
ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。
ここは、どうやら転生後の人生。
私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。
有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。
でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。
“前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。
そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。
ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。
高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。
大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。
という、少々…長いお話です。
鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…?
※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。
※ストーリーの進度は遅めかと思われます。
※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。
公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。
※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、142話辺りまで手直し作業中)
※章の区切りを変更致しました。(11/21更新)

不遇の花嫁は偽りの聖女を暴く──運命を切り開く契約結婚
evening
恋愛
辺境の小国で育ち、王女でありながら冷遇され続けてきたセレスティア。
ある日、彼女は父王の命令で、圧倒的な軍事力と権威を誇る隣国・シュヴァルツ公国の公子ラウルとの政略結婚を余儀なくされる。周囲は「愛など得られない」と揶揄するばかり。それでも彼女は国のために渋々嫁ぐ道を選んだ。
ところが、ラウルは初対面で「愛を誓う気はない」と冷たく言い放ち、その傍らには“奇跡の力”を持つと噂される美貌の聖女・フィオナが仕えていた。彼女は誰はばかることなく高慢な態度を取り、「ラウルを支えるのは聖女である私」と言い放つ。まるでセレスティアが入り込む隙などないかのように──。
だが、この“奇跡”を振りかざす聖女には大きな秘密があった。実はフィオナこそが聖女を偽る“偽りの存在”だったのだ。政略結婚という不遇の境遇にありながらも、セレスティアは自分の誇りと優しさを武器に、宮廷での地位を切り拓こうと奮闘する。いつしかラウルの心も、彼女のひたむきさに揺れ動き始めるが、フィオナの陰謀や、公国の権力争いがふたりを大きな危機へと導いてしまう。
「あなたが偽物だって、私が証明してみせる。私の運命は、私自身が切り開く──!」
高慢なる“偽りの聖女”に対峙するとき、セレスティアの内なる力が目覚める。愛と陰謀が渦巻く華麗なる宮廷で、彼女が掴む未来とは? 運命を変える壮大な恋物語が、いま幕を開ける。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる