傷だらけの令嬢 〜逃げ出したら優しい人に助けられ、騎士様に守られています〜

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『グレッグ様、お待たせしてすみません』

私はグレッグ様に軽く頭を下げる。

「いや。待ってない。大丈夫だ。気に入ったものは見つかったか?」

グレッグ様は、そう言って立ち上がると、私へと近づいて来た。


『はい。』

私は笑顔で答えた。

「そうか。それは良かった」


グレッグ様も軽く微笑んでいた。

「では次は…スイーツ系の店だったか。決めた店があるのか?」

『いえ、特にどのお店とは決めてなくて。
あの辺りを見てから考えてもいいですか?』

私は気になる方向を手で示した。

「あぁ。では行こうか」

私達は一緒に歩き出した。

「荷物を」

『いえ。これは、大丈夫です。
ありがとうございます。』

「…」

グレッグ様は私の荷物を持とうとしてくれ
たのだけど、これは、自分で持っていたくて…お断りしてしまった。



スイーツ系のお店が立ち並ぶ通りは、人も多くて賑わっていた。順番待ちで並んでいる人も多かった。 

『甘い匂いがしますね。これだけあると、悩みますね』

「そうだな」   

『あまり人が並んでない所はないでしょうか』

「人が多いお店の方が人気があるのではないか?」

『えぇ。そうなのでしょうけど…』

私は言い淀んでしまった。
グレッグ様を付き合わせて、長時間並ばせるのが申し訳ない。 

「ソフィア…?」


『グレッグ様は…
お時間大丈夫ですか?』

私は正直にお尋ねした。

「ハハ。ソフィア、もしかして私を気遣ってくれたのか? 
前にも言ったと思うが、今日は休みだ。それに、ソフィアに付き合うと言ったのは私の方だ。」

グレッグ様は、そう言って私の手を取り歩き出す。私は驚いて、自分の手とグレッグ様の顔を交互に見る。

「では、この店に並ぼう。」

『こ、ここですか?』

「あぁ。」

グレッグ様は私にしか聞こえないように、耳元に近づいてきた。

「この店は、並んでいる人数が3番目に多い。この辺りには6軒店があるようだから、ちょうど真ん中だ。
 
ソフィアは、私を並ばせたくないようだし、私は別に構わないと思っている。だからお互いの意見を尊重した結果だ。」


私は耳がくすぐったくて、赤面しながら手で押さえる。

『えっ?か、数えたのですか?』

「あぁ。」

グレッグ様はなんでもないことのように言った。

『そ、そうですか…
ありがとうございます。』

いったいいつの間に、この人数を?と疑問が湧いたけど、それ以上何も言えずに、お言葉に甘えることにした。

私達は、お互いにどんな食べ物が好きか、とか他愛もない話をしていた。グレッグ様は甘いものもお好きらしい。
話していたので、待ち時間はあまり長く感じなかった。


私達が並んだお店は、チーズケーキ専門店だった。様々なチーズ系のケーキが並んでいた。

私はルイーザさん達へのお土産に買いたかったので、自分の分も含めて、3つ購入することにした。
グレッグ様も何か購入されていた。

「ソフィア、喉が渇いてないか?飲み物を買ってくる。少しあそこのベンチで待っていてくれ。」

『私が買ってきます』

「いや、私が行く方が早い。ソフィアは休んでいてくれ。」

『あの…。分かりました。よろしくお願いします』


私はグレッグ様を見送り、ベンチへと向かった。











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