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周囲の好奇の眼差しに耐えながら、騎士団の本舎まで連れて行かれた。
医務室のベッドの上に降ろされた後、診察を受けた。
診察してくれたのは女性の医師で、その間騎士様は席を外していた。
「失礼する。終わったか?」
ノックの音がしたあとに騎士が入室してくる
「グレッグ様。はい。傷口は消毒して手当てを致しました。お顔の怪我なので傷痕が心配ですね。それと気になることが…」
何やら小声で会話を交わした後、先生は退室した。
騎士は近づいてくるとベッドの側にある椅子にゆっくりと腰掛けた。
「少し話を聞きたいが、気分は大丈夫か?」
『は、はい。先程はありがとうございました』
私はお礼を伝える。
「私は治安部隊のグレッグだ。
ちょうど巡回中で通りがかって良かった。怪我をする前に駆けつけられなくてすまない。」
『騎士様に謝られるようなことではございません、本当に助かりました』
「あのご令嬢は、たしか…ノーマン伯爵のアンジェリカ嬢ではないか?」
私は黙ってうなずいた。
「やはりそうか。あまりいい噂を聞かないからな。君はあの家に勤めているのか?」
私は首を左右に振る
予想に反する答えだったのか騎士様は少し言い淀む
「そうか。違うのか。その…
不躾なことを聞くようだが、先程の診察の時に、腕の痣が見えたと…もしかして、日常的に誰かに暴力を振るわれているのではないか?」
袖が少し捲れていて腕の痣が見えていた。私は慌てて袖を整えて痣を隠し、はっとして騎士様を見つめる。
真摯な眼差しを向けられて瞳が揺れる
『これは…あの…』
過去のことを知られたくなくて、本当のことが言えなかった
視線を逸らしてぎゅっと手をにぎりしめる。無意識にベッドのシーツを掴んでいた
「実は、あの家で理不尽な扱いを受けたという声が多数届いているんだ。今までも、暴力を受けた少年や、逃げ出した者などを保護したことがある。それで━━」
気になる言葉が聞こえて、思わず騎士様を遮るように尋ねていた
『あの、その少年のお話は、いつ頃のことでしょうか?』
「少年? 保護した少年のことか。」
『はい。その少年は、もしかして、名前はジャックではありませんか?』
「ジャック…さぁどうだろう。私が入隊する以前のことでな。」
『そうですか…』
もしかしてジャックは無事に逃げることができたのではないかと、淡い期待が膨らんだ
「気になるのなら調べておこう。」
『ありがとうございます。よろしくお願いします』
ジャックがどこかで元気にすごしているかもしれないという可能性がでたのが嬉しかった
でも同時に自分が巻きこんで苦しめてしまったという罪悪感ものしかかる
「それで、もし君も助けが必要ならこちらで保護することができるが、どうだろうか。」
『保護?』
「あぁ。こちらの紹介で新たな働き口を紹介したり、何かしら手助けはできる」
『私は今は、働いている所でとても良くしていただいてます。なので、大丈夫です…そろそろ帰らないと』
「失礼だが、働いている所とは?何かを強要されたりしていないか?」
私が今もどこかで暴力をうけていると思われているのかもしれない。
ダンさんやルイーザさんはとても優しいのに。
誤解されていることが無性に腹が立った
『ダンさんにもルイーザさんにもとても親切にしていただいてます!』
思わず強い口調で言い切ってしまった
「ハハハ、いやすまない。怒らせてしまったな。
君は案外芯の強い方なのだな。あの宿屋に勤めているのか。確かにあそこなら安心だ」
興奮して大声を出したことが恥ずかしく赤面する
「送っていこう。」
『いえ、大丈夫です』
「いや、怪我人を一人で帰らせる訳にいかない。それでは行こうか」
そこまで言われると断れないので、お言葉に甘えることにした
医務室のベッドの上に降ろされた後、診察を受けた。
診察してくれたのは女性の医師で、その間騎士様は席を外していた。
「失礼する。終わったか?」
ノックの音がしたあとに騎士が入室してくる
「グレッグ様。はい。傷口は消毒して手当てを致しました。お顔の怪我なので傷痕が心配ですね。それと気になることが…」
何やら小声で会話を交わした後、先生は退室した。
騎士は近づいてくるとベッドの側にある椅子にゆっくりと腰掛けた。
「少し話を聞きたいが、気分は大丈夫か?」
『は、はい。先程はありがとうございました』
私はお礼を伝える。
「私は治安部隊のグレッグだ。
ちょうど巡回中で通りがかって良かった。怪我をする前に駆けつけられなくてすまない。」
『騎士様に謝られるようなことではございません、本当に助かりました』
「あのご令嬢は、たしか…ノーマン伯爵のアンジェリカ嬢ではないか?」
私は黙ってうなずいた。
「やはりそうか。あまりいい噂を聞かないからな。君はあの家に勤めているのか?」
私は首を左右に振る
予想に反する答えだったのか騎士様は少し言い淀む
「そうか。違うのか。その…
不躾なことを聞くようだが、先程の診察の時に、腕の痣が見えたと…もしかして、日常的に誰かに暴力を振るわれているのではないか?」
袖が少し捲れていて腕の痣が見えていた。私は慌てて袖を整えて痣を隠し、はっとして騎士様を見つめる。
真摯な眼差しを向けられて瞳が揺れる
『これは…あの…』
過去のことを知られたくなくて、本当のことが言えなかった
視線を逸らしてぎゅっと手をにぎりしめる。無意識にベッドのシーツを掴んでいた
「実は、あの家で理不尽な扱いを受けたという声が多数届いているんだ。今までも、暴力を受けた少年や、逃げ出した者などを保護したことがある。それで━━」
気になる言葉が聞こえて、思わず騎士様を遮るように尋ねていた
『あの、その少年のお話は、いつ頃のことでしょうか?』
「少年? 保護した少年のことか。」
『はい。その少年は、もしかして、名前はジャックではありませんか?』
「ジャック…さぁどうだろう。私が入隊する以前のことでな。」
『そうですか…』
もしかしてジャックは無事に逃げることができたのではないかと、淡い期待が膨らんだ
「気になるのなら調べておこう。」
『ありがとうございます。よろしくお願いします』
ジャックがどこかで元気にすごしているかもしれないという可能性がでたのが嬉しかった
でも同時に自分が巻きこんで苦しめてしまったという罪悪感ものしかかる
「それで、もし君も助けが必要ならこちらで保護することができるが、どうだろうか。」
『保護?』
「あぁ。こちらの紹介で新たな働き口を紹介したり、何かしら手助けはできる」
『私は今は、働いている所でとても良くしていただいてます。なので、大丈夫です…そろそろ帰らないと』
「失礼だが、働いている所とは?何かを強要されたりしていないか?」
私が今もどこかで暴力をうけていると思われているのかもしれない。
ダンさんやルイーザさんはとても優しいのに。
誤解されていることが無性に腹が立った
『ダンさんにもルイーザさんにもとても親切にしていただいてます!』
思わず強い口調で言い切ってしまった
「ハハハ、いやすまない。怒らせてしまったな。
君は案外芯の強い方なのだな。あの宿屋に勤めているのか。確かにあそこなら安心だ」
興奮して大声を出したことが恥ずかしく赤面する
「送っていこう。」
『いえ、大丈夫です』
「いや、怪我人を一人で帰らせる訳にいかない。それでは行こうか」
そこまで言われると断れないので、お言葉に甘えることにした
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