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路地に逃げ込んだのが失敗だった。
行き止まりだ
引き返そうと方向転換したところ、義姉と鉢合わせをした。
「ソフィア!」
義姉と対峙する。
「やっぱりあなたね。まさかこんな所で会うなんて。あの時はよくも恥をかかせてくれたわね」
肩を強く押されて義姉から突き飛ばされた。
私は思わず義姉を睨む
「なによその顔は。随分と生意気になったわね」
義姉は私を見下ろしながら嫌な笑みを浮かべる。
「あの後捜したのよ。なぜかお父様は放っておけとおっしゃるし。逃げ出すなんて許される訳ないでしょ、ねぇ、そうでしょ?」
身体中に染みついた数々の痛みや恐怖がフラッシュバックしてくる。
早く逃げ出したいのに、手足が鉛のように重く動かなかった。
義姉は地面から何かを拾いあげて私に向かって放り投げた。
『痛っ』
鈍い音が頭に響く。
小石が地面に転がるのが見えた
こめかみから血がつたってくるのを感じる。
またこうやって義姉の癇癪の捌け口にされるのか
幾度となく繰り返される暴力、これでもかと浴びせられつづける罵声。
逃げても逃げても見つかってしまうなんて。
既視感しか覚えないこの状況から抜け出すことはやっぱり私にはできないのかな……
束の間の幸せだった
三日月亭で過ごした穏やかな日々。
ダンさん、ルイーザさんとまるで本当の家族になれたように思っていた。
でも大きな勘違いをしていた
あんなに優しい二人の家族になんてなれる訳ないのに
こんな私が……
ちょっと幸せな夢を見ただけなんだ
手に掴もうと近づいたら蜃気楼のように消えてしまう幻影と同じ
分布相応な夢
あの二人のことを義姉に決して知られてはいけない
とにかくどうにか立ち上がりたいのに足に力が入らない
結局なされるがまま動けなかった
義姉が手を振り上げるのが視界に入り、これはまた叩かれると思い咄嗟に目を瞑った。
『…』
襲ってくるはずの痛みが来ないのを不思議に思いおそるおそる目を開けた。すると騎士服を纏った若い男性が義姉の手を掴んでいた。
「何をしている?」
「ちょっと放して!」
「言い分があるなら本舎で聞こうか」
義姉は強引に手を振り解くと男性を睨みつけた
「は? 私を誰だと思ってるの。それは家のものよ。家のものをどうしようとあなたには関係ないでしょ」
「それとは?あなたは、人をまるで物のように言うのだな」
「なんですって!」
「お嬢様!お捜ししました、さぁお嬢様、戻りましょう。
失礼致します。騎士さま」
侍女が勢いよく駆けつけてきた
義姉を探し回っていたのだろう。
息も切れ切れの状態だった。
慌てた様子で男性に深々と頭を下げると、義姉を強引に連れ帰っていった。
義姉がいなくなりほっと胸を撫で下ろした
「これを」
放心状態で蹲る私に、男性は膝を折りそっとハンカチで血を拭ってくれた。
私の手にそのハンカチを持たせると「ちょっと失礼する」とぐっと近づいてくる
『えぇっ?あの』
驚いてぎゅっと目を閉じると抱き上げられていた
男性に密着した状態とねり、羞恥心から両手で顔を覆い隠す
鍛えられた胸板の感触が伝わる
「手当てが必要だ」
騎士様は悶える私を気にも止めずに、そのまま歩きだした。
『あの、歩けます。お、降ろしてください』
私は必死に懇願する。
「この方が早い。」
断言されてそれ以上抵抗することもできなかった。
男性との距離が近すぎて恥ずかしくて鼓動が早くなる
心臓の音が聞こえてしまうのではないかと心配になるくらいだった
行き止まりだ
引き返そうと方向転換したところ、義姉と鉢合わせをした。
「ソフィア!」
義姉と対峙する。
「やっぱりあなたね。まさかこんな所で会うなんて。あの時はよくも恥をかかせてくれたわね」
肩を強く押されて義姉から突き飛ばされた。
私は思わず義姉を睨む
「なによその顔は。随分と生意気になったわね」
義姉は私を見下ろしながら嫌な笑みを浮かべる。
「あの後捜したのよ。なぜかお父様は放っておけとおっしゃるし。逃げ出すなんて許される訳ないでしょ、ねぇ、そうでしょ?」
身体中に染みついた数々の痛みや恐怖がフラッシュバックしてくる。
早く逃げ出したいのに、手足が鉛のように重く動かなかった。
義姉は地面から何かを拾いあげて私に向かって放り投げた。
『痛っ』
鈍い音が頭に響く。
小石が地面に転がるのが見えた
こめかみから血がつたってくるのを感じる。
またこうやって義姉の癇癪の捌け口にされるのか
幾度となく繰り返される暴力、これでもかと浴びせられつづける罵声。
逃げても逃げても見つかってしまうなんて。
既視感しか覚えないこの状況から抜け出すことはやっぱり私にはできないのかな……
束の間の幸せだった
三日月亭で過ごした穏やかな日々。
ダンさん、ルイーザさんとまるで本当の家族になれたように思っていた。
でも大きな勘違いをしていた
あんなに優しい二人の家族になんてなれる訳ないのに
こんな私が……
ちょっと幸せな夢を見ただけなんだ
手に掴もうと近づいたら蜃気楼のように消えてしまう幻影と同じ
分布相応な夢
あの二人のことを義姉に決して知られてはいけない
とにかくどうにか立ち上がりたいのに足に力が入らない
結局なされるがまま動けなかった
義姉が手を振り上げるのが視界に入り、これはまた叩かれると思い咄嗟に目を瞑った。
『…』
襲ってくるはずの痛みが来ないのを不思議に思いおそるおそる目を開けた。すると騎士服を纏った若い男性が義姉の手を掴んでいた。
「何をしている?」
「ちょっと放して!」
「言い分があるなら本舎で聞こうか」
義姉は強引に手を振り解くと男性を睨みつけた
「は? 私を誰だと思ってるの。それは家のものよ。家のものをどうしようとあなたには関係ないでしょ」
「それとは?あなたは、人をまるで物のように言うのだな」
「なんですって!」
「お嬢様!お捜ししました、さぁお嬢様、戻りましょう。
失礼致します。騎士さま」
侍女が勢いよく駆けつけてきた
義姉を探し回っていたのだろう。
息も切れ切れの状態だった。
慌てた様子で男性に深々と頭を下げると、義姉を強引に連れ帰っていった。
義姉がいなくなりほっと胸を撫で下ろした
「これを」
放心状態で蹲る私に、男性は膝を折りそっとハンカチで血を拭ってくれた。
私の手にそのハンカチを持たせると「ちょっと失礼する」とぐっと近づいてくる
『えぇっ?あの』
驚いてぎゅっと目を閉じると抱き上げられていた
男性に密着した状態とねり、羞恥心から両手で顔を覆い隠す
鍛えられた胸板の感触が伝わる
「手当てが必要だ」
騎士様は悶える私を気にも止めずに、そのまま歩きだした。
『あの、歩けます。お、降ろしてください』
私は必死に懇願する。
「この方が早い。」
断言されてそれ以上抵抗することもできなかった。
男性との距離が近すぎて恥ずかしくて鼓動が早くなる
心臓の音が聞こえてしまうのではないかと心配になるくらいだった
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