上 下
17 / 44

しおりを挟む
私達の姿を見ると、ソファーへ座るように促した。

「ニコライ、至急の用件とは?
マリーベル嬢までお連れして、何事だ」

神官長に問われて、ニコライ様が口を開く。

「神官長、今朝、神殿内で幾つかのトラブルが発生しました。」

「トラブル? どんなことだ」

「簡潔にまとめますと、神官達の外履き用下足靴から片方だけ靴が紛失、調理場では砂糖と塩が入れ替えられる、時計の時間が遅れているなど…」

「なんだ、そのくだらないいたずらは⁉︎

ハハッ、神官達も弛んでいるようだな。
ニコライ、お前の監督不行きなのではないか?

こんないたずらのことを、マリーベル嬢にまでお聞かせするとは。」

「いえ、それだけではありせん。」

「まだ他に何かあるのか?」

「はい、女神像が…」

「女神像に何かあったのか?」

神官長は先程までとはうってかわり、ひどく動揺した様子で、ニコライの言葉を待つ

「はい、女神像の、イヤリングと、宝石の花束が紛失しており、周囲の花も刈り取られておりました。ですが━━」


「なんだと!それは本当か⁉︎
わしのコレクションが‼︎
何ということだ‼︎
ニコライ! 至急犯人を見つけるのだ!
なんとしても取り戻さなければ!」

神官長は怒りのあまりソファーから立ち上がると、部屋の中を右往左往していた。

「わしのコレクションが! おのれ」

「神官長さま、どうか落ち着かれてくださいませ」

苛立ちを隠せない神官長へ、マリーベルは優しく声をかける。
けれど、そんなマリーベルの声は耳に入っていないようだった。

「神官長、宝石は確保しました。」

「なんだと? でかした‼︎  ニコライ、犯人も捉えたのか?」

「いいえ、宝石は講堂の女神像に飾られていました。寄付箱も破壊されておりましたが、盗られた形跡はありませんでした。」

「この神殿に盗賊が?」


「神殿内を見回った所、マリーベルさまの部屋の前には花が山積みにされておりました。

おそらく女神像の周囲の刈られた花かと思われます。

いたずらとして片付けるには、無理があるかと。

マリーベルさまを狙った者かもしれず、心配でしたのでこうしてお連れしました。」

ええっ⁉︎ 

あの花は、侵入者によって置かれたものだったの? 
私に対しての悪意……?

「ニコライさま、私が……狙われたのですか?」
 
「断言はできませんが、個人の部屋の前に異変があったのはマリーベル様だけのようですし。

騎士団へ報告するつもりです。

マリーベル様の安全も考えて、至急帰られた方がよろしいかと」

「ふむ……マリーベル嬢の安全を考えたら帰すのがよいだろうな。
だが……わしのコレクションの件が…。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。

彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。 目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。

聖人な婚約者は、困っている女性達を側室にするようです。人助けは結構ですが、私は嫌なので婚約破棄してください

香木あかり
恋愛
私の婚約者であるフィリップ・シルゲンは、聖人と称されるほど優しく親切で慈悲深いお方です。 ある日、フィリップは五人の女性を引き連れてこう言いました。 「彼女達は、様々な理由で自分の家で暮らせなくなった娘達でね。落ち着くまで僕の家で居候しているんだ」 「でも、もうすぐ僕は君と結婚するだろう?だから、彼女達を正式に側室として迎え入れようと思うんだ。君にも伝えておこうと思ってね」 いくら聖人のように優しいからって、困っている女性を側室に置きまくるのは……どう考えてもおかしいでしょう? え?おかしいって思っているのは、私だけなのですか? 周囲の人が彼の行動を絶賛しても、私には受け入れられません。 何としても逃げ出さなくては。 入籍まであと一ヶ月。それまでに婚約破棄してみせましょう! ※ゆる設定、コメディ色強めです ※複数サイトで掲載中

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

安らかにお眠りください

くびのほきょう
恋愛
父母兄を馬車の事故で亡くし6歳で天涯孤独になった侯爵令嬢と、その婚約者で、母を愛しているために側室を娶らない自分の父に憧れて自分も父王のように誠実に生きたいと思っていた王子の話。 ※突然残酷な描写が入ります。 ※視点がコロコロ変わり分かりづらい構成です。 ※小説家になろう様へも投稿しています。

悪役令嬢ってこれでよかったかしら?

砂山一座
恋愛
第二王子の婚約者、テレジアは、悪役令嬢役を任されたようだ。 場に合わせるのが得意な令嬢は、婚約者の王子に、場の流れに、ヒロインの要求に、流されまくっていく。 全11部 完結しました。 サクッと読める悪役令嬢(役)。

城内別居中の国王夫妻の話

小野
恋愛
タイトル通りです。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

処理中です...