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12アーサー視点

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「はぁ⁉︎ どういう事だ‼︎ 神殿だと?」


「はい。どうやらそのようです。」

補佐官のビルは淡々と応える。

「護衛もつけずにマリーベルに何かあったらどうするのだ‼︎  なぜマーティン侯爵は許可したのだ。

何も聞いていないぞ! 

まずい!

神殿には若い男性も勤めているときく。


女性免疫のない者がマリーベルを見たら、虜になり自分のものにしたいと思う者が出てくるかもしれない。
本当にあの侯爵が許可をしたのか?」

なんということだ!
マリーベルと会ったのはつい先日のこと。

私に何の相談もなく神殿へ行っただと?

その報せを受けたのは、つい先程のことだ。

マリーベルの様子は逐一報告するように伝えてある。
万が一天使のようなマリーベルに何かあったら大変だからな。

間違ってもではない。
あくまでも本人に気づかれないように、見守っているのだ。安全対策だ。

なのに事後報告とは、どういうことなんだ⁉︎

「私もマリーベルさまの身に何かあっては一大事と思い、神殿へ護衛騎士の滞在の申し出をしたのですが…」


ビルに目をつけたのは学園の時だ。

状況を分析し、問題解決する能力に長けている。



友人でもあり、こうして今は補佐官として己の能力を発揮してくれている。

必要と判断した時は、私への相談なく独断で動く許可を特別に与えている。
そのビルの歯切れが悪いな。

「許可はとれたのだな?」

「いえ。神殿は権力が及ばない特殊な領域ですので、あっさりと断られました」

「はっ? 断られただと⁉︎

交渉もせずに、おめおめと帰ってきたのか?
ビル! 私がお前を補佐官にした時になんと言ったか覚えているだろうな。答えろ‼︎」

八つ当たりだとは分かっていたが、気持ちが収まらずにビルを怒鳴り続ける。

「自分の口から言うことは憚られますが、
「優秀だからだ」と、そのように伺ったと記憶しております」

どんな時も表情に出さないないビルは、私に怒鳴られようが眉ひとつ動かさずに答える。
 
「そうだな。その優秀なお前に任せていた結果がこれか?」

「申し訳ございません‼︎ 何度も交渉したのですが、神殿で騒動が起こったことは今ままでないから大丈夫だからと。
 
 マリーベルさまは、自己修練を積まれるためにお一人で滞在されます。
護衛含めてお付きの者を許可することはできないと…」

「なるほど、神殿か…
少し厄介ではあるが。
今まで平和だったからといって、これからもそうとは限らない。
世の中何があるか分からないからな。
お前もそう思うだろう?

ビル! 腕の立つ口の堅い者を数名集めろ。すぐにだ‼︎」

「アーサーさま、まさか⁉︎ 」

「あぁ、そのまさかだ。神殿を襲撃する!
平和ボケした者達に、世の中の厳しさを教える良い機会だ。」

「アーサーさま、流石にそれはまずいかと」

あまり感情的にならないビルが、必死に止めてくる。

「なに、本当に襲う訳ではない。ちょっと忍びこんで軽い騒ぎを起こすだけだ。ちょっとした、イタズラさ。
さすがに侵入者が現れたら、考えも変わるだろ。
選別はお前に任せる」

「はぁ……承知致しました。」

もうどうなっても知りませんよ、とビルは諦めの境地だ。

「そういえば犬と━━」

神殿付近に、我々の存在に気づき追い払う女性がいましたが━━まぁ、彼女のことは、問題ないでしょう。

私のことを犬と呼ぶとは、心外だ。
このことは、貸しにしておきましょう。



「何か言ったか? ビル」

「いいえ、なんでもありません。失礼致します」



「待っていろ。マリーベル。」






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